沖磯から流された男。やっぱり俺は釣りバカだった
友人の体験談。ほぼそのまま。人名は変えてあります。
紺碧の境界線 ——それでもグレを狙う——
波の音だけが、世界のすべてだった。さっきまで足元にあった沖磯のゴツゴツとした黒い岩肌は、もうどこにもない。
ターゲットであるグレの力強い引きに意識が向いた、一瞬の油断だった。予期せぬ一発の大波が磯を洗い流した。
身体が宙に浮き、次の瞬間には冷たい海流の中にいた。
「おい、嘘だろ!?」
引き波の力は凄まじく、あっという間に俺を沖へと連れ去る。
パニックになりかけたその時、上空からドボンと激しい水しぶきが上がった。
「高木!!」
上がってきたのは、一緒に釣りに来ていた親友のマサの顔だった。
あいつ、俺が流されたのを見て、パニックになってそのまま海に飛び込みやがったのだ。
「バカ野郎! なんで飛び込んでんだよ!」
「助けなきゃと思って! でも、流れが速すぎて戻れねえ!」
二人とも、股紐までしっかり締めたライフジャケットを着ていたおかげで、沈む心配だけはなかった。
だが、携帯電話は水没。ジリジリと遠ざかる磯。360度、見渡す限りの紺碧の水平線。
「誰も気づいてなかったら、俺たち終わりか?」
マサがガタガタと震えながら呟く。
しかし、俺には確信があった。あそこは一級の沖磯だ。朝、渡船には俺たちの他に10人ほどの釣り人が乗っていた。
同じ磯に乗った同船者たちが、俺たちの異変に気づかないはずがない。
「大丈夫だ、誰かが絶対に気づいて通報してくれてる。浮いて待つぞ」
お互いの視線を合わせ、励まし合う。もし一人だったら恐怖で心が折れていただろう。どれほどの時間が経っただろうか。
体温が奪われ始めた頃、遠くから「ボボボボボ」という泥臭いエンジン音が聞こえた。
地元の漁船だった。やはり磯の仲間がすぐに通報し、近くの船が急行してくれたのだ。
船から投げられた救命浮環(浮き輪)にすがりつき、引き揚げられた。
船長が「アホ垂れが! 生きててよかったわ!」と怒鳴りながら、熱いお茶をくれた。
その温かさに、二人でガタガタと震えながら涙を流した。港に戻り、近くの公衆浴場の暖簾をくぐる。
湯船に飛び込んだ瞬間、凍りついていた身体の芯がじんわりと解けていくのが分かった。生き返る、とはまさにこのことだった。
「マサ、ありがとう。飛び込んだのは大馬鹿だけどさ」
「うるせえ。お前が心細いかと思ってよ」
真っ赤な顔で湯船に浸かりながら、二人でハハハと力なく笑った。
普通なら、ここで「海はもう凝りごりだ、家に帰ろう」となるはずだった。だが、風呂から上がって着替えたマサが、真顔でこう言った。
「おい高木。夕まずめ、まだ間に合うな」
「は?」
俺はアホかと思った。さっきまで死にかけて漂流していた男のセリフではない。
だが、その狂った熱量に、俺の釣り人としての血も完全に火がついてしまった。
俺たちはそのまま地元の釣具店へ直行した。海に流されて失ったリール、お気に入りのウキ、ハリス、ハリ。俗に言う「フカセ仕掛け」の一式を、濡れた一万円札を財布から引っ張り出して、その場でもう一度買い直す。
決して安くない出費だが、二人とも迷いはなかった。
そして数時間後。太陽が西に傾きかけたその日のうちに、俺たちは再び、あの元の沖磯に立っていた。
もちろん、ライフジャケットの紐は、前よりもさらにキツく締め直してある。
「よう高木、次は流されるなよ?」
マサが、たった今買い直したばかりのピカピカの竿を握りながら、ニヤニヤと笑いかけてくる。
「お前こそ、絶対に飛び込んでくるなよ。次は置いていくからな」
目の前に広がる海は、昼間と変わらず深く、青い。
命の危険を味わってもなお、あのウキが小気味よく消し込む瞬間と、グレの強烈な引きが忘れられない。
俺たち釣り人という生き物は、つくづく救いようのないアホなんだと思う。
執筆は AI におまかせ。
編集と修正にかなり時間かかってます。
沖磯から流された場合、生存率は33%
ライフジャケットをマニュアル通りつけていない。発見できない。
本人軽く話していたが後から調べてびっくり。
沖磯へ渡る時は本当に気をつけて。




