「それぞれの道」
焚き火が小さくなる。
夜明けが近い。
エリオットは、ノックスの背中を見る。
「戻ろうとは思わないのか?」
ノックスは首を振る。
「戻る場所じゃない。
僕は、作る側になりたい」
エリオットは立ち上がる。
その横顔は寂しさと幸福で揺れていた。
「……変わったね、ノックス」
ノックスも立つ。
「変わりたいと思ったから」
エリオットは言う。
「努力だけじゃ届かない未来が、君には見えたんだね」
ノックスは静かに答える。
「努力で届かない未来を、努力の形で繋げる。
それが速度だと思う」
エリオットは微笑んだ。
「……ずるいよ。
君は努力を否定したいんじゃなくて、“別の努力”を作ろうとしてる」
ノックスの目が揺れる。
「そうだよ。
努力が報われる世界は壊したくない」
エリオットは手を差し出す。
「よかった。
君は――まだ“努力”を信じてる」
ノックスはその手を、強く握り返す。
「いつか、“速度の努力”を見せる」
エリオットは涙をこらえるように笑う。
「じゃあ――僕は努力で追いかける」
二人は手を離す。
違う道へ進むために。
速度の先へ行くノックス。
努力の未来を信じるエリオット。
どちらも間違いではない。 どちらも正しい。
それが――革命の中心にある“痛み”だった。
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川の音が流れ続ける。
焚き火は消え、世界は少しだけ明るくなる。
誰も知らない場所で。
まだ名前もない魔術が、静かに育っていた。
速度は孤独を作る。
だが――孤独だけでは終わらない。
未来で再び交わる日が来ると信じて、
二人はそれぞれ歩き出した。




