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「巨人の源の気配はあるのに、最上階に着かない」
「むぅ。幻術か」
ニャオスが3眸を光らせる。
「時間稼ぎ?」と、スコールオ。
「そうね。でも」
ネクターシャが、天井を仰いだ。
ニャオスの3つの眼が、サーチライトの如く頭上を照らす。
石造りのはずの天井は、赤い肉のようなものに覆われ、蠢動していた。
「これは!?」
綱子が、まさかりを構える。
突然、塔全体が激しく揺れた。
「「キャー!」」
仁美と恵美が悲鳴をあげる。
「塔自体が生きている! ここは怪物の腹の中だ!」
ニャオスが看破した。
「ネクターシャ!」
スコールオが呼ぶ。
「ええ!」
ネクターシャが弓に矢を番え、天井を狙った。
「私たちに気付かれないよう、ゆっくりとエネルギーを吸収するつもりだわ! このまま上を目指しても、闇核は見つからない!」
すさまじい早射ちで、矢を続け様に放った。
肉天井に光が炸裂する。
「強引に出る!」
スコールオが、銀の斧を投げた。
回転するバトルアックスが天井に激突し、まるで痛みに苦しむかの如く塔が揺れた。
闇からワーウルフが大量に現れ、襲ってくる。
綱子とお供たち、そして伝説の剣を出した仁美が、それを防いだ。
「こっちは、わたしたちに任せて!」
綱子の声に頷いた2聖女は、肉天井への攻撃を継続する。
「ニャオス!」
恵美に呼ばれ、彼の3眸がカッと開いた。
各々の瞳から発射された緑色の3本の光線が螺旋状に絡み合いつつ、2聖女が攻撃する部分を直撃する。
肉天井が消し飛び、大穴が空いた。
「脱出よ!」
ネクターシャの指示で頷いたニャオスの3つ眼が、再び輝く。
剣に引っ張られて宙に浮いている仁美と雉以外の全員がフワリと浮き、猛スピードで穴の外に飛んだ。
「アハハ! 猫ちゃん、やるわね!」
スコールオが笑う。
「猫ではない!」
ニャオスのサイコキネシスで浮いた皆は、追いついた仁美と雉と共に眼下の、屋上に穴の空いた塔を見た。
穴から湧き出した闇が、塔全体を覆う。
完全に闇と化した塔は弾け、10ほどに分かれた。
それが再び、怪物を形作る。
「ワイバーン!」
ネクターシャが、新たな敵を言い当てた。
凶暴な飛竜たちは一斉に、こちらに向かってくる。
ニャオスの念力は、地上で走るユニコーン2頭の背に各々、2聖女を乗せた。
熊も着地させ、その背に犬と猿を乗せる。
綱子は雉が揃えた両足首を左手で掴み、鳥のお供は彼女を楽々と運び、自在に空を飛んだ。
仁美は剣の力で、相変わらず飛んでいる。
恵美はニャオスのサイコキネシスで飛行した。
ワイバーンたちと、ニャオス&恵美、綱子&雉、仁美&伝説の剣の空中戦が始まる。
そこへ地上から、ネクターシャの銀矢とスコールオの投げた銀斧が援護した。
飛竜の吹く炎を空戦組は巧みにかわし、ニャオスはフラッシュビーム、綱子はまさかり、仁美は伝説の剣で反撃する。
背後にも2聖女の攻撃を受け、半数のワイバーンが落下した。
その、まだ動く怪物たちを熊と犬と猿が倒す。
「ネクターシャ!」
スコールオが、残ったワイバーンたちから抜け出し離れていく1匹を指した。
「あいつの中に、闇の核がある!」
聖女仲間の指摘に頷いたネクターシャは、ユニコーンで追いかけつつ、弓を上空に向けた。
すぐ後ろに、斧を構えたスコールオが乗るユニコーンがついてきている。
他のワイバーンが2人の邪魔をしようと迫るが、それを仁美、綱子、恵美&ニャオスが阻止した。
その隙にネクターシャの矢は放たれ、逃げるワイバーンの背を貫いた。
光が炸裂し、苦悶の声をあげたワイバーンが落下する。
そこへ駆け込んだスコールオの斧撃が、飛竜にとどめを刺した。
ワイバーンの体内に隠された闇球が粉々に砕け散る。
すると残りの飛竜たちもボロボロと崩れ、消失した。
仁美、綱子&雉、恵美&ニャオスが、地に下り立つ。
2聖女のユニコーンと熊、犬、猿も駆けつけた。
「ありがとう」
「お陰で助かったよ」
ネクターシャとスコールオが、協力者たちに感謝を告げる。
3人の娘たちは、ニッコリと微笑んだ。
ニャオスはギラッと、3つ眼を光らせる。
綱子のお供たちも嬉しそうだ。
2聖女以外の皆の、周りの空間がユラユラと歪み始めた。
「あなたたちの世界に帰れるわ」とネクターシャ。
「良かった! そだ、剣を消せる魔法、ありがとうございました! さよなら!」
「たまには鬼退治ならぬ闇退治も良いものですね。また、ご縁があれば!」
「ワンワン!」
「キーキー!」
「ケーン!」
「ガオー!」
「お2人の世界の平和を願ってます! さようなら! ほら、ニャオスも挨拶して!」
「むぅ。異世界の娘たちよ、達者でな」
それぞれの別れの言葉に、ネクターシャとスコールオは笑顔で手を振って応えた。
仁美、綱子とお供たち、恵美&ニャオスの姿が消える。
彼女たちは、各々の世界に帰った。
聖女2人は頷き合い、ユニコーンを走らせる。
ミッドランドの闇巨人との対決が待っているのだ。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます\(^o^)/