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 7聖女たちの別世界での活躍のひとつ。




 スコールオとネクターシャはユニコーンを駆り、闇の巨人の(みなもと)のひとつを隠した世界へとやって来た。


 大きな川の水辺に建つ石造りの塔の前で、一角獣を降りる。


「この中ね」


 ネクターシャの言葉に、スコールオが頷いた。


 そして「罠かもしれないよ。この前、エネーポンが危なかったんだ」と返す。


「そうね。気をつけて行きましょう」


 2人は入口から、塔の闇中へと進んだ。


 聖女たちの発する優しい光が、周りを照らした。


 複数の獣の声がする。


 さらに、若い女の声も。


「キャー!」


 まず右側で、セーラー服姿の10代半ばの娘が右手に持った剣で、迫ってくるワーウルフの群れを撃退している。


 否、正確に言うならば彼女が握る、魔力を秘めた剣が勝手に斬り伏せているのだ。


 2人目は左側。


 こちらもセーラー服姿で、頭に桃のマークを描いた鉢巻(はちまき)を締めた、先ほどの剣少女よりは少し年上の眼鏡女子が、不釣り合いなほど大きな斧を片手で振り回している。


 ばったばったと獣人を倒す彼女の周りには、犬と猿と(きじ)、そして大きな熊が主人を守るかの如く戦っていた。


 最後に中央には、20代前半の現代パンツルックの娘が、3つ眼の猫(?)をシャツから覗く胸の谷間に入れ、顔だけを出させている。


 迫りくるワーウルフは、猫(?)の3眸が放つフラッシュビームで退治していた。


「スコールオ!」


「任せて!」


 ネクターシャの呼びかけで、スコールオが右側に突進した。


 剣に振り回される娘の周囲の獣人を、銀の斧でなぎ払う。


 ネクターシャも銀の弓を構え、眼にも止まらぬ速射で、まさかり娘の周りの獣人を撃ち倒した。


 左右の敵は突然の新手(あらて)に怯み、闇へと逃げ散った。


 余裕が出た剣の娘とスコールオ、まさかり娘と彼女のペットたち、そしてネクターシャが残った中央の獣人たちに攻め寄せる。


 ワーウルフたちは総崩れとなって、奥へと消えた。


 娘たちが中央に集結する。


「礼を言おう、お嬢さんたち」


 現代パンツルック娘の胸に収まった3つ眼猫(?)が、低いイケボイスで喋った。


「猫に感謝されるのは初めて!」


 スコールオが笑った。


「ね、猫ではない! ニャオスという、立派な名があるのだ」


「ニャオス! アハハ、かわいい!」


 剣の少女が笑うが、ニャオスに3つ眼でギロリとにらまれ「すみません」と謝った。


「わたし、中川恵美(なかがわえみ)です」


 ニャオスを胸に収めた娘が名乗る。


「やっと普通の新幹線に乗れたと思ったら、急にここに居て…」


「この塔の魔力に吸い寄せられたのだ。邪悪な(ちから)だな」


 ニャオスが解説する。


「その猫は、恵美さんのお供ですか?」


 まさかり娘が訊く。


 彼女の後ろには、犬、猿、雉、熊が大人しく控えていた。


「猫でも、お供でもない! ニャオスだ!」


 ニャオスがキレる。


「わたしは桃金綱子(ももかねつなこ)です。鬼退治を家業(かぎょう)にしてます。わたしとお供たちも気付いたら、ここに居ました」


天城仁美(あましろひとみ)です」


 綱子の次に、剣の少女が名乗った。


「受験生なのに、異世界で伝説の剣を抜いてしまって…魔王を倒して元の世界には戻れましたけど、剣もいっしょでパニクってたら、いつの間にかここに…」


 仁美の右手の剣が、誇らしげに光った。


「確かに、かなりの魔力を秘めてるわね」


 ネクターシャが剣を見て、感心する。


 2聖女も自己紹介し、現状を説明した。


「なるほど」


 ニャオスが頷く。


「では、その悪の核を見つけねばな。それを破壊するまで、我々はここから出られない」


「「えー!?」」


 恵美と仁美が、眼を丸くする。


「結界だ。入れるが出られない」


「その通りよ」


 ニャオスの解説に、ネクターシャが頷いた。


「でも、敵はどうして彼女たちを?」


 スコールオが、首を傾げた。


「おそらく、私たちを塔の中に閉じ込める魔力を得る狙いでしょう。他の世界の善の属性の人たちを集めて吸収しようとしたのね」


 ネクターシャが推察する。


「だが我々は敵が思っていたより、手強かったというところか」


 ニャオスが、ニヤッと笑った。


「しかし、ワタシを善属性と見なすとは、おめでたい奴らだ。恵美の属性が善だからか?」


「え!? わたし、善なの!?」


 恵美が驚く。


「自分では、そんなに良い人じゃないと思うけど…」


「いいえ。あなたは善良です」


 ネクターシャが認めた。


「ありがとうございます」


 恵美が頬を赤らめる。


「わたしとお供たちも協力します。早く元の世界に戻って、鬼退治を続けないといけないので」


 綱子が申し出た。


「わたしも!」


 仁美も左手を挙げる。


「ただ、元の世界に戻れても、この剣が消えないのは困っちゃう…」


 彼女が表情を曇らせるとネクターシャが「私が剣を自由に出したり消したり出来る魔法をかけてあげましょう」と、呪文を唱えた。


 すると、仁美の剣が消える。


「わ! やったー! ずっと握ってたから! ネクターシャさん、ありがとうございます!」


「出したい時は念じれば。しまう時も同じです」


 仁美が伝説の剣を出したり消したり試している横で、恵美も「わたしとニャオスも協力します」と2聖女に告げた。


「選択肢がないからな」とニャオス。


 こうして、スコールオ、ネクターシャ、仁美、綱子とお供たち、恵美&ニャオスは、塔の上階を目指した。


 時折、思い出したようにワーウルフたちが小規模な攻撃を仕掛けてきたが、聖女2人が撃退する。


 どれほどの時が過ぎたのか。


「おかしいわ」


 ネクターシャが、眉を寄せた。















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