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え?ギルド内で唯一【コック】を極めてる俺をクビですか?  作者: 浅見朝志


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第80話 いざ甲鋏竜討伐へ!

竜骸平野へと出た俺たちが向かうのは北西、王都方面。

速度を意識した討伐依頼ということで、ダボゼとオウエルには宿で待機をしてもらっている。

なにせ、リデーから出てしばらくすれば、俺たちを出迎えるのは熱い陽射しと巨大な竜たちの化石が立ち並ぶ広大な平野。ここを素早く移動して目的のモンスターを探すにはそれなりの体力が必要だ。

だから、当初はシナモンにも待機してもらう予定でいたのだが、



「ふぃ~、熱いですね~。みなさん、水分補給はこまめに、なのですよ~」



竜骸平野に出てから二時間。

帰りに荷物を運んでもらうための馬を一頭連れて、俺たちはそこそこペースを上げて、およそ十五キロくらいは休まずに歩いたはずだった。

しかし、シナモンの声には余裕すら感じられる。



「すごいな。本当に疲れないのか?」


「はいっ! ムギさんたちのおかげで、カリー充填率は八十%を超えているので、まだまだ余裕があるのですよ~!」



なんでも、シナモンは食べたカレーによって蓄えたエネルギーをどこかに蓄えることができる機能があるのだそうだ。

それがある限りはいつまででも体力が続くとのだとか。



「ピザ窯ゴーレムといい、シナモンといい、ゴーレム文明ってのは理解が及ばないくらいすごいな」


「えへへっ、なんだか照れますのですよ」



シナモンは元気ハツラツといった様子で俺たちの先頭を駆け、そして、



「あっ、さっきの人たちです!」



ビシッと指をさした先、そこにあったのはヘラクレスギルドの青髪パーティー一行の背中だった。



「おいおい、嘘だろう? まさか追いつかれるとはね」



こちらを振り返って目を丸くするのは聖職者の長髪男、プレイボ。



「俺たちは君たちと別れたその足でリデーを出たっていうのに……この灼熱の環境下を走ってでもきたのか、君たちは」


「いいえ、早歩きなのですよ」


「なんて体力の美少女だ……素晴らしいね。逸材だ。紳士たるもの放ってはおけないな。どうだい、今度いっしょに食事でも」


「食事はカリーでしょうか? カリーではありませんでしょうか?」


「カリー? それってカレーのこと? ちょっとデートでカレーっていうのは、風情がないというか、なんというか──イテッ!」



唐突にナンパをし始めたプレイボの頭上へと、ゴンッ! と。

ツンスの手に持つこげ茶色の太い魔術杖の先端がぶつけられる。



「死ね。アンタね、有望そうな冒険者の女の子に手当たりしだい声をかけてんじゃないわよ。アタシたちのパーティーの風評が悪くなるんだから。死ね」


「二回も死ねって言わないで……」


「うるさい、死ね」



ツンスはフンと鼻を鳴らすと、



「悪かったわね、ウチのナンパ馬鹿が迷惑をかけて」


「……? いえ、全然大丈夫なのですよ~」



おそらくシナモンは、ナンパされた自覚すらないと思う。

そんなコントが繰り広げられているうちに、俺やウサチ、マチメもシナモンたちに追いついた。



「やあ、さっきぶり」


「うにゃあ、ホントに速いんだニャ、あなたたち!」



先頭を歩いていたニャコが後ろ歩きで俺たちの横へと並ぶ。



「メシウマってここ半年くらいでできたギルドだよねぇ? それなのにいっぱい実績も積んでて、ホントにすごいニャ」


「ありがとう。褒められて悪い気はしないな」


「そのリーダーのムギ・ウォークマン……気になるニャ~?」



ニャコは指で作った丸の輪をモノクルのようにのぞき込んで俺のことを見る。



「一人だけ年齢も上、ここ数年では名前も聞いたことがないニャ。いったいどういう経歴の持ち主なんだニャ?」


「コックだ。この十年近く、基本的には厨房で料理ばかりしていたよ」


「ニャハハッ、コックって、そんにゃあっ!」



ニャコはお腹を押さえて笑いつつ、



「コックでそんなガタイ手に入らないニャ! 噓つきだねぇ、ムギさん!」


「──おい、ニャコ。任務に戻れ。仕事中だぞ」



一人先頭を歩いていたリーダーの青髪が肩越しに振り返っていた。



「ここから西から北にかけての調査では討伐対象を発見できなかった。今日からは北から北北東にかけての調査に移行する。警戒にあたれ」


「え~……もーちょっと話していたかったニャ」


「仕事中だ。お喋りは休憩時間にしろ」


「仕方ないにゃあ……それじゃあね、ムギさん」



ニャコはウインクを残すと身軽な体捌きで先頭へと戻ると、そのまま北北東方面にある龍の化石の上へと一人駆け登っていく。



「……よかったのか?」


「何がだ?」


「西から北にかけて調査済み、って。俺たちのいるところで言ってよかったのか? アンタたちにとって、俺たちは競争相手のはずだろ?」


「問題ない。おまえたちが先に見つけようとも、俺たちのパーティーが狩る速度の方が速い」



大した自信だった。

青髪はそう言うや、ニャコが先行した方面へと向かっていく。

ニャコはいつの間にか化石の上からその中、竜洞へと入っており、腕で大きくバッテンを作っていた。

どうやら、青髪たちは化石の外から中までくまなくモンスターの捜索をする方針らしい。



……そりゃあ、依頼が入ってから一カ月間、そこまで念入りに確認されてしまっていれば、モンスターたちも駆逐されてしまおうというものだ。



「いやあ、ウチのリーダーが相変わらず素っ気なくて申し訳ないね」



そう言いながら歩み寄ってくるのはプレイボ。



「まあでも、あの態度は君たちメシウマへのリスペクトでもあるんだよ。SSS級モンスターを狩るに値する実力の持ち主たちだと、そう判断しているからこその言葉なんだ。じゃなきゃイチイチ張り合ったりもしない」


「物は言いよう、ってだけだけどね。それでも、討伐依頼に見合っていない実力の持ち主に対してだったら『邪魔だ帰れ』って言ってるところなのは確かね」



プレイボとツンスもまた、青髪の後ろを追って歩き始める。



「まあ、お互い最善を尽くそう」


「そうだな。そっちも気をつけて」



そうして俺たちは手を振って青髪たち一行を見送った。



……彼らが北北東までを調査するなら、俺たちは東側か。



なんて、俺はボンヤリとそんな方針を立てていたのだが、



「──むむむっ?」



シナモンが、ダウジングのように両手を前に突き出して向いたのは、北北西。



「なんだか、なんだかスパイスレーダーが反応するのです……!」


「えっ? でもそっちは確か、青髪たちが調査をし終えた方角だって話じゃ……」


「かつてない、巨大な反応なのですよ! 行きましょうっ!」


「ちょっ!?」



シナモンが駆け出していってしまったので、俺たちも慌ててその後を追いかける。

そうしていくつかの龍の化石の間を抜けていった先……そのひと際大きな化石はあった。

それはまるでお腹の下にいるわが子を守るかのように背中を丸めた形のドラゴンの骨組み。

背骨にあばら、その上を覆う翼の原型を留めた骨……完全ではないが、まるで巨大な一つの球だった。



「ここからスパイスの反応がしますっ!」


「周囲や化石の中にモンスターがいる様子はないけど……」


「いえっ、中じゃありません……これは……下ですっ!」



シナモンがそう言って球状の化石の下を指さした、その瞬間だった。



──ズズズズンッ!



低い地響きと揺れ。

その直後、俺たちの左右の地面の下から勢いよく飛び出して迫ってきたのは、巨大な二対の(はさみ)だった。



「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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