聖女として召喚されたのに全くモテません!
異世界に聖女として召喚された。
但し、2人一緒にだ。
よく聞く巻き込まれ召喚ではない。
2人それぞれ役割がある というか出来たらしい。
というのも今まで一人しか召喚されていなかったのだが、それでは世界が不安定になるということでいわばお互いの予備として召喚されている。
一緒に召喚されたものの、もう一人の聖女 『蘭』の方が私よりもはやく召喚されて1か月で目覚めたそうだ。
そして、私『千花』は2か月たってから目覚めたのだ。
何故違いがあるのかというと、生前の身体のダメージの違いらしい。
二人とも病気で長く入院していて、死んでしまった時に召喚されたのだが、私は生まれて17年間ほぼ入院してずっと闘病していた。
病院内にある学校にいってたことがあるくらい。
一方『蘭』は闘病歴は7歳からと長いのだが徐々に悪くなっていく病気で中学くらいまでは学校にも毎日行ってたらしい。
その後は通信制の学校に入り、大学院まで卒業、入院して寝たきりになっていたのは最後の数年くらいだったらしい。
聖女の身体というのは徐々に修復されるのでその期間が私は2か月、『蘭』は1か月だったのだそうだ。
ちなみに死ぬ寸前まで元気だった人は、召喚されたすぐ後から意識があるそうだ。
でも私達の回からは高度医療を行う病院が召喚範囲内に3つもあるので、病気で思うような人生を送れず、別の世界で願いを叶えたいと思っている人のみを召喚できるようになったそうだ。
聖女の仕事というのは、異世界に転移したさいに与えられた魔力を水晶球に送り、その魔力が水晶球を通して世界へと注がれるというものである。
但しその役目はさきに目覚めた蘭が既に行ってしまったので、私がやるのはこの国の結界魔法陣強化のための魔力供給らしい。
そして、その魔力を供給できるようになるには、まず手術が必要なのだそうだ。
日本では両親がサインしていた物凄く長い訳のわからない難しい言葉でかかれた手術同意書を読み上げられた。
正直内容はよくわからない。
ただ魔力を放出すると身体に負担がかかるので、もう1〜2か月間は意識不明で寝込むことになるらしい。
サインした後、手術着に着替え、各種測定機器が身体中につけられた。
麻酔の代わりに眠りの魔法がかけられた。
こういう手順も日本と一緒だな。
そう思ったところで魔法が効いて、意識が闇の中に沈んだ。
目が覚めたら、身体中を何かが暴れ回る感触がした。
これが魔力か。
すでに各種の測定機器は取り外されていた。
それが終わると、まだぼーっとしていたが、周りのみんなが『おめでとうございます』といって、衣装や化粧や髪を整え、アクセサリーをつけてくれる。
ゲームの聖女のコスプレみたいな格好になったところで、舞台のような場所に案内された。
観客もいるようだ
そこにあった沢山の水晶球、大小、形も様々なものに力を注ぐように言われた。
試しに一つ手に取り、手のひらから魔力を注ぐとあっという間に虹色に染まった。
観客から歓声があがる。
そして、そこにある全ての水晶に力を注いでもまだ身体の中で魔力は暴れ回っている。
どうしたらよいのか迷っていると
「まだ魔力があるから、ここの水晶を一つにまとめた水晶球を作りましょう」
傍にいた魔法使いのカイラームがそう言った。
まとめて一つの水晶球にするのね。
そう念じながら手のひらから全部の水晶に力を送る。
少しずつ水晶がお互いに引き寄せられ、形を変えていく。
まだまだ魔力はある。
まとめて、まとめて…………。
身体の中の魔力がなくなった気がすると思った途端、私はその場に倒れ込んだ。
そして、床の上に10センチ大の虹色の水晶球ひとつだけが残されていた。
「こんなに小さく………
流石にまとめすぎですよ」
魔法使いが呟いた。
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私はその捧魔式のあと、2か月たってから目が覚めた。
守護の館には3人の守護者、王子様のシャーシーク殿下、魔法使いのカイラー厶、護衛騎士のメルッシャーと蘭、管理人の男ヤーシャとお部屋係の女リーシャがいた。
ここにいる男は全員イケメンだった。
流石、異世界だ。
ここは流行りのゲームの世界でその攻略対象者かな?と一瞬思った。
でもそこには攻略対象者はいなかった。
ゲームで言えばメイン攻略対象者の立ち位置の、金髪のシャーシーク王子はすでに蘭と恋人同士になってなっていた。
第2の攻略対象者、赤い髪の護衛騎士、メルッシャーともちょっと話してみたが、超美人の婚約者がいる上に、聖女と恋仲になるとお家騒動が勃発するからと最初から予防線を張られた。
第3の攻略対象者、魔法使いのカイラームにいたっては超美人の婚約者がいる上に、さらにもっと愛する男の恋人もいるそうなのだ。
なんだよ、その乱れた関係は!
管理人のヤーシャはイケオジで隠れ攻略対象者かな?と一瞬思ったが、既にお世話係のリーシャと夫婦だった。
この館の中にはすでにカップルと売約済みの男だけで、私と恋愛してくれそうな人はどこにもいないのだ。
大体、来た途端早々に聖女の役目を果たしてしまっている。
今はもうすでにゲームの後日談モードなのだ。
私を邪険にするとかは全くなくて、みんな親切で、妹のように溺愛して可愛がってくれる。
それには別に文句はない。
とにかく、出会いがないのだ。
そういうわけでお世話係のリーシャからしばらく文字の勉強をしたあと、学校に行ってみたらと勧められた。
リーシャから文字を教えてもらい、大体読めるようになった後に学力試験を受けた。
私と同じ17歳の子たちがいるクラスがちょうどいいだろうということで体験入学してみた。
そこには小学校低学年としか思えない子どもたちがいた。
えーと……どういうことでしょうか?
館に帰り、みんなに聞くと、この世界は時間の流れが日本の倍なのだそうだ。
要するに私が行ったクラスは日本の年齢で言えば小学校3年生のクラスだったのだ。
但し、12歳で入学するので学力的には小学校5年生のクラスなのだそうだ。
その説明を蘭に一度していたので、私にはしてなかったことに気づかなかったらしい。
私は病気で体調が悪いことが多かったので、日本でも小学校5年生くらいまでしかまともに勉強できていなかった。
学力的にはこのクラスがついていけるやっとのクラスではあると思う。
んー、どうしよう。
まともに勉強するなら今のクラスを続けるべきなんだろうが、小学生の中に高校生が一人入るというのはあまりにもきつい。
それに憧れだった恋愛も出来ない。
ちなみに蘭が行っている大学及び大学院には基本的には25歳〜30歳までの人が通っているそうで、日本の年齢で言えば12歳〜15歳の中学生の年齢の子が通うところらしいが、何年か働いた後に学び直しをする人も多く、割りと同年代の人もいるとのことだ。
私の年齢だとこの世界では、普通はもう立派な社会人で仕事にも慣れている年頃らしい。
私、この世界に来た時点で人生詰んでるんじゃないの?
聖女の力って5年間で尽きるらしいし。
年齢の割に勉強できないから就職先もないだろう。
恋愛も結婚もあんまりバカだと難しいだろう。
第一出会いもないし。
『こっちの世界の17歳なら日本で言えば8歳かぁ。
私も昔の8歳の見かけに戻りたい』
心からそう思った。
そうリーシャに愚痴ると、
「聖女だからそう思えば8歳の姿になれるよ。
チカちゃん以外はみんな若返ってるし」
と簡単に言われた。
私は17歳と若かったので知らされてなかったのだが、他の皆はこっちでは「聖女の理」というものでこちらでの年齢の姿、日本で言えば半分の年齢の姿に若返ってるのだそうだ。
蘭は本当は34才なので17歳の姿に、リーシャは57歳なので28歳の姿に若返っているそうなのだ。
しかもリーシャは5年前にこの世界に聖女としてきたのだか、日本では子供が2人、孫が1人いるおばあちゃんだったのだそうだ。
どうりで蘭は雰囲気が年齢不詳な感じだったし、リーシャはお母さんと話してるみたいな感じだったのか!
「いっぺん死んでるからね。
こっちの世界にあわせて楽しく過ごしたほうがいいと思うよ」
そう言われて心が決まった。
それから2か月、守護の館で年齢に応じたこの世界の知識を守護者の3人に習いながら身体が変化するのを待った。
こちらの年齢にあわせた姿、日本で言えば、8歳の姿になった時点で以前体験入学したクラスに転入した。
学校生活はとても楽しく、友達もできた。
授業もわかりやすく、成績も良好。
放課後にはダンスサークルに入って汗を流している。
日本ではできなかった学校生活を楽しんでいる。
但し、私の名前「チカ」はいいにくいようで、「ティーシャ」と呼ばれるようになった。
この世界は何故か「シャ」がつく名前で溢れている。
そして、シャーシーク殿下をそのまま小さくした外見の3学年上のシャーチーク殿下にデートを申し込まれた。
物凄くカッコよくて学校の女の子の憧れの的である完璧な理想の王子様だ。
何度かデートをした後、守護の館にお招きした。
「いらっしゃいませ。シャーチーク殿下」
何故か館のみんなで出迎える。
シャーシーク殿下が近寄り、シャーチーク殿下と握手をする。
「歴代の中でお前が一番早く聖女と出会ったね」
「学校で出会える聖女は今までいなかったですから」
「そりゃそうだな」
「これも運命ですね」
そういってシャーチーク殿下は私の前に跪き、指輪を差し出す。
「ずっと前からあなたを待っていました。
ティーシャ。
一生一緒に過ごしてください」
憧れの王子様のプロポーズだ!
大好きだけど、まだ私8歳だよ!
いや、王子様の婚約って早いし、そんなものかもしれない。
色々考えたけど、もちろん答えは一つだ。
「はい。よろこんで」
私の答えを聞いたシャーチーク殿下は私の指に指輪をはめ、私のほっぺたにキスをした。
「口へのキスは30歳になってからだけどね。これは予約だよ」
私は顔を真っ赤にして頬を押さえた。
それをみたリーシャが呟いた。
「いくら年が若くても聖女の理って必要なのね」
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10年後、私は27歳になり、シャーチーク殿下は30歳になった。
そしてシャーチーク殿下は守護者として、この館にやってくるのだ。
私は聖女の任期を終えた後も、ずっと守護の館から学校に通っており、これからの5年間はここで一緒に過ごすのだ。
楽しみで仕方ない。
あと、今回召喚される聖女に私のシャーチーク殿下が狙われないように、思い切り目の前でいちゃついてあげようと思う。
覚悟してらっしゃい!!
お読みいただきありがとうございます。