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オオエドパンツァー  作者: えいとら
1章 パンツァー
7/125

シノブの実況配信2

 織姫ココロと別れ、

俺達は西奉行所アイドル事務所に戻ってきた。


 そして俺は今、地下の格納庫に居る。


格納庫の空きスペースは広く、パーテーションで区切れば簡単な撮影ブースが作れる。


意外な事に、レフ板や撮影用のライトもある。

ここの格納庫は何故か装備だけは、かなり充実している。


俺は、一通りの作業を終え、カメラを手に持ち月影シノブを待っていた。


 彼女は、今日の配信に自信がありそうだったが、一体何をするつもりなんだろうか……。


「お待たせしました!」


 そう言って事務所から降りてきた月影シノブは、いつものアイドル衣装に着替えていた。


 月影シノブのアイドル衣装について、説明していなかったから改めて説明するが、まずセーラー服を思い描いて欲しい。それをピンク基調にしてフリフリな感じにしたのが、彼女のアイドル衣装だ。

もちろん俺が大好きな絶対領域も備えている。


 しかし、あえて言うなら「よくあるアイドル衣装」だ。

俺個人としては好きな感じの衣装だが、オオエドシティーのアイドル達の尖った個性と比べると「普通」と言えるかもしれない。


 俺は彼女に質問する。


「それで、ここで何をするんだ?」


「作業配信です!」


「作業配信? それって何をするんだ?」


「私のお気に入り武器の、電脳苦無サイバークナイを研ぎます!」


「え?苦無を研ぐ? 配信で? どこに需要があるんだ? ニッチ過ぎないか?」


 月影シノブはワザとらしく肩をすくめ、ため息をつく。「プロデューサーさんって素人さんですか?」とでも言いたいのか?


 彼女は説明を始める。


「もちろん。電脳苦無サイバークナイを研ぐだけでは、面白くも何ともありません。 むしろ『刃物研ぎガチ勢』に怒られるまであります。」


「じゃあ、どうするんだ?」


「私は詳しく知りませんが、なんか流行ってるアニメのキャラ……『機密の刃のネルコ』のコスプレをして苦無を研ぎます!」


「ああ。なるほど。 織姫ココロの配信をパクって――って言ってたな」


「パ、パクりじゃありません!!インスパイアです!! 『コスプレ苦無研ぎ』の配信なんて見た事がありますか!? 全く新しいアプローチです!!」


「確かに、それは見た事が無いが…… でも、需要はあるのか?」


「需要は『探す』物ではありません! 『作る』物です!」


「ベンチャーザイバツの社長の名言みたいだな」


「バズると思いませんか? 『コスプレ苦無研ぎ配信』!」


「何ともいえないが、シノブがやる気なら試してみても良いかもしれないな。 しかし、一点疑問がある。 コスプレ衣装はどこにあるんだ?」


 彼女は自分のアイドル衣装のスカートの裾を、手でヒラヒラしながら言う。


「この『ナノマシーン衣装』を使います」


 俺は怪訝な顔で聞く。


「ナノマシーン衣装?」


「ええ。『ナノマシーン衣装』です。 兎に角、今から着替えますので見ててください」


「え!?見てて大丈夫なのか!?」

 

 焦る俺を他所に、月影シノブは言う。


「へい!WABISABI!! 私のナノマシーン衣装を『機密の刃のネルコ』と同じ見た目にして!」


 と彼女が言ったと同時に、俺達の目前の空間に緑色の美女のホログラムが現れる。


「了解しました。『機密の刃のネルコ』ですね? これよりナノマシーン衣装の外観の変更を適用します」


 その瞬間、月影シノブの衣装が緑色に光り、形状が変化する。


 あっという間に、月影シノブの衣装が、ピンク色のミニ丈の着物に変化した。


その衣装は、アニメキャラ『機密の刃のネルコ』と、ほぼ同じ見た目だった。


 俺は、感嘆する。


「おお。凄いな!これがナノマシーン衣装の機能なのか?」


 俺が感心していると、空中に浮いた美女AIのホログラムが、俺に向かい深々と会釈しながら名乗る。


「初めましてナユタ様。 ワタクシがシノブ様の戦闘AI WABISABIでございます」


 WABISABIは、緑色のショートヘアに緑の肌、澄んだブルーの瞳に、キリっとした眉、ぴったりとしたボディースーツを着こんだ、超絶美女AIだ。


 スタイル抜群な最高の二次元美女を、妄想して欲しい。

それがWABISABIの容姿だ。つまり、俺達の妄想の結晶が彼女だ。


 だから、二次元萌えキャラ大好きな俺は、彼女を見て一瞬で心を奪われた。


あまりの興奮に俺は、腹の底から「くぁwせdrftgyふじこlp ‼︎!」と叫び声を上げそうになった。

しかし、月影シノブから今まで以上に「変態さん」扱いされるのは嫌なので、なんとか堪えた。


 そんな俺の様子を見て、月影シノブは心配そうに言う。


「プロデューサーさん? WABIちゃんが出てきた時、一瞬めっちゃ鼻の下が伸びたように見えましたが大丈夫ですか? 何かの持病ですか?」


 どうやら、表情は誤魔化せなかったようだ。少し、焦りながら俺は聞く。


「し、しかし、WABISABIは、戦闘用AIなんだろ? ナノマシーン衣装を変化させるのは、本来の役割とは違う気がするんだが?」


 WABISABIが、美人に微笑みながら説明する。


「忍様のナノマシーン衣装は植物細胞大のナノマシーンから成る『多目的兵装』でございまして、それらの制御と管理を行うのがワタクシの主な機能でございます。

 もちろん他にも様々な機能がございますのでワタクシにつきましては、『統合戦闘AI』とご理解頂ければ幸いでございます」


 俺はさらに質問をする。


「ナノマシーン衣装は、多目的兵装なんだな……っていうか多目的兵装って何?」


 ピンクのミニ丈着物の月影シノブは、袖を前後に揺らしながら説明する。


「私がコンビニ強盗さん達をボコす動画を、先日、プロデューサーさんに見て貰いましたよね?

 あの時に私は弾丸を弾いたりしてましたが、あれがナノマシーン衣装の機能なんです」


 確かに、彼女が言うとおり、あの時の動画内で、月影シノブは人間離れした戦闘力を示していた。

あれが、ナノマシーン衣装の機能であれば、全てが納得出来る。


 美人なWABISABIが説明する。


「ナノマシーン衣装の機能は、多岐に及んでおりまして、電脳や筋力の活性化、シールドの発生、各種ワザの発動、ケガの治療……等、様々でございます」 


 ミニ丈着物の月影シノブが、それに続く。


「ナノマシーン衣装とWABIちゃんは色んな機能があるのですが、私はまだまだ使いこなせていません。 今の私は、こんな感じのステータスです。」


 月影シノブが、そう言うと同時に、WABISABIが両手を広げる。


 WABISABIの胸の前に、緑色のホログラムで、月影シノブのステータスが表示された。


 「激萌え美女AIのおっぱいの前にステータスが出ると、目が滑るな」と思いながら、俺はそれを見た。



ーYour Idol Statusーーーーーー


/// 月影シノブ ///

lv. 1

バトルスタイル : 忍者

属性:妹 丁寧語 無個性


攻撃 : 30  防御:10 ボーカル :5 ダンス : 50 可愛さ : 30 


【 陽キャ:1 陰キャ:90 パリピ:100 厨二:60 】


スキル : 格闘 lv.3 忍術 lv.1 刃物研ぎ lv.2 神社仏閣巡り lv.3 パンチラlv.1


ーーーーーーーーーーーーーー



 月影シノブのステータスを一通り見た俺は言う。


「何故か、色々と突っ込みたい所が、あるんだが…… 月影シノブって、陰キャでパリピなんだな……」


 月影シノブが赤面して慌てる。


「ひゃああ! こないだ自己分析してた時に見てた隠しステータスが出てます!!」


 それについて、WABISABIが美人に解説する。


「ナユタ様のご指摘のとおり、忍様は世にも珍しい『陰キャでパリピ』タイプです。

 例えるなら、『多数の友達を誘ってお祭りに行く事に抵抗は無いが、帰るときには何故か一人になって、寂しい感じになってしまう』タイプでございます」


 俺は言う。 


「それは……悲しいな。最初から一人より余計に寂しい気がする」


 WABISABIも、悲しげな美人の表情で言う。


「ええ。 陽キャの中でも陰キャの中でも浮いてしまう――立ち位置が繊細なタイプと言えます」


 月影シノブは、慌ててステータスを強制終了し、少し涙を浮かべ真っ赤な顔で言う。


「二人で私の黒歴史をリフレインさせないで下さい!! 夏祭りの帰りに一人寂しく泣いた思い出が生々しく蘇ります!!」


 俺は言う。


「うん。なんか、すまなかった。 ともかく、今後のプロデュースの参考にしようと思う。 月影シノブのステータスは俺でも確認出来るのか?」


 美人に微笑みWABISABIは答える。


「もちろんでございます。 シノブ様のプロデューサーであるナユタ様でしたら、いつでも閲覧可能な情報でございます」


 腕組みし頬を膨らせ、月影シノブが言う。


「でも、あまり見ないで下さいね? 変態認定を上方修正しますからね?」


 これ以上ステータスの話をすると、彼女がまた泣き出しそうなので、俺はカメラを持ち上げ話題を元に戻す。


「それじゃあ、コスプレも終ったし、撮影を開始しないか? やるんだろ?『コスプレ苦無研ぎ配信』」


 彼女は「ハッ!」と言ってから叫ぶ。


「そうでした!! すっかり忘れていました!!」


「忘れないでくれ。 俺達の今の状況を事情を知らない人が見たら、タダのコスプレイヤーとカメコだからな?」


「ローアングラーで変態さんのプロデューサーさんに、ピッタリの役柄じゃないですか?」


「急に鋭利なディスりをするな。身体が付いていかなくて心不全を起こす」


 そして、月影シノブは手を打ちながら言う。


「ともかく、分かりました! それじゃあ私、準備をしますね?」


 と彼女は、ミニ丈ピンク着物の袖を振り回しながら、配信の準備に取り掛かった。

 

 こうして、俺と月影シノブが初めて作る配信が始まった。


 まあ、もちろん順調には行かないんだが……。

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