潜入捜査2
俺は再び、サイバーダイブチェアに腰を下ろしていた。電脳空間に五感を転送させる為だ。
というかこの椅子の本来の目的は、義腕のインストールが目的じゃない。
その名のとおり、”サイバーダイブ”が目的なんだ。
そして俺のまわりにはいつもの如く、美女×2と美少女×1が居た。
最初に30デニールの万錠ウメコが、俺の横に立つ。
ちなみに今の俺は、サイバーダイブの為に仰向けに寝た姿勢になっている。だから俺の頭は、床から80cmぐらいの位置にあった。
そのため俺の視線は必然的に、万錠ウメコのタイツから透けた太腿に固定される。
その——スラッとした”30デニールの太腿“が、説明を始める。
「ナユタ君の”ウサウサチャンネル”のプレミアム会員登録は終わらせておいたわ」
俺の後ろに立つ月影シノブが発言する。当然、振りむいた俺の視線はシノブの絶対領域と合う。
ハリの良い“絶対領域”は、言う。
「”ウサウサチャンネル”とは、兎魅アナちゃんの”腰痛部(R18版)”におけるチャンネル名です」
俺はツッコむ。
「説明は助かるが……。
でも、さすがの俺でもそれは理解しているぞ?」
黄泉川タマキが俺の頭の上で発言する。
俺が視線を上げると、そこには巨乳しか見えなかった。
圧倒的な“巨乳”は、言う。
「私がさきほど兎魅アナちゃんのアーカイブ配信を見たところ、”腰痛部(R18版)”上では、”良い事”——つまりVFの具体的な案内は無いようです」
俺は”巨乳“に質問する。
「それなら……視聴者はどうやって兎魅アナのVFに参加するんだ?」
「SABIちゃんが腰痛部のハッキングで”抜いて”きた情報によると……VF参加者には兎魅アナちゃんからDMが届くようです」
「兎魅アナから直接、誘いが来るのか。
VFに参加するプレミアム会員の選出方法は?抽選か?」
「いえ。
配信中に兎魅アナちゃんの目に止まったリスナーの中で、プレミアム会員の中から10名ほどに”VFのお誘い”が、来るようです」
「プレミアム会員の中から10名か……。
いや……ちょっと、待て。
兎魅アナの同時接続数って……?」
”絶対領域“が、なぜか自慢気に答える。
「兎魅アナちゃんの同接数の平均は2000万人です!!
ちなみに登録者数は1億5千万人で、私の15倍です!!」
それを聞いた俺は、少し考える。
「それなら……
兎魅アナから”VFのお誘い”が来るのは、200万分の1になるな……
”年末ジャンボなんとか”ぐらいの確率じゃないか?」
ここで急に、ホログラムのSABIちゃんが登場して言う。
「”年末ジャンボなんとか”は、2000万分の1ぐらいの確率よ。
だから兎魅アナと”ヤれる”のは、それよりも10倍ぐらい確率が高いわね」
俺はSABIちゃんのセリフを聞いて、「奉行所のAIが”ヤれる”とか言うもんじゃないぞ。もうちょっとオブラートに包んでくれ」とツッコんだ。
しかしSABIちゃんは、意に介さず続ける。
「兎魅アナの放送が始まった時点で、アタシがハッキングで腰痛部を改竄するから、あんたの発言は兎魅アナの目に止まりやすくなるわ。
それにそもそも、選出されるのはプレミアム会員だけだから、あんたが兎魅アナと”ヤれる”確率は、もっと高い筈よ」
“30デニールの太腿”が話をまとめる。
「ともかく……。
兎魅アナの配信が始まったら、たくさんコメントして目立ってちょうだい。
投げ銭もある程度までなら許可するわ。
もちろん公費よ。
つまり、お膳立ては全て完璧よ……」
万錠ウメコは笑って、続ける。
「……だから後はナユタ君次第ね」
俺は”不服申し立て”をする。
「所員に過度のプレッシャーを与えるのが”所長様“の仕事なのか?」
万錠ウメコが『ブラック肉食系 女神スマイル』を浮かべる。
「緊張感があって楽しいでしょ?」
シノブが真剣な顔で握りこぶしを作りながら俺を励ます。
「プロデューサーさんなら大丈夫です!!
可愛い女の子に『ハァハァ』することは、得意分野じゃないですか?
いつもどおりの行動をして頂ければ、結果はおのずと付いて来ると思います!!」
「”1ドット”も褒められてる気がしないんだが……」
SABIちゃんが俺に確認をする。
「VRケーブルは、ちゃんと接続した?
固定されていなかったら、VF中にあんたの電脳がバグるわよ」
俺は自分の右耳の後ろの、”USB type-丙”ポートを右手で確認する。
VRケーブルはしっかりと固定されており、抜けるような事は無さそうだ。
俺の網膜ディスプレイ上にもエラーは表示されていない。
「大丈夫だ。問題ない」
万錠ウメコが言う。
「じゃあ、よろしくお願いするわね。
私達もここで、兎魅アナの”ウサウサチャンネル“を見ているからね」
黄泉川タマキが言う。
「ナユタさんのご無事をお祈りしています。
”ヤッて”らっしゃい」
シノブが言う。
「年齢制限の関係で私は見れませんが、陰ながら応援しています。
それと……、
兎魅アナちゃんに……あまり夢中にならないで下さいね?
も、もちろん!!
『仕事をおろそかにしないで下さい』って意味ですよ??」
そして俺は全員に、「それじゃあ、行ってくる」と言ってサイバーダイブチェアの上で目を閉じた。
同時に椅子のアクチュエーターが起動し、俺が最も楽な姿勢に固定される。
そして網膜ディスプレイ上に警告が表示される。
【サイバーダイブ起動:
!!!! ロード中です。中断しないで下さい。電脳がショートします。 !!!!】
その警告がフェードアウトすると同時に、俺の視界が歪みに包まれていく……。
そして俺の全ての感覚は、”二進数”に置き換えられて…………。
俺の精神は、電脳空間に転移していった…………。
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【5分前 兎魅アナ視点】
BASARAと協力して、キチク芸能社の追跡から逃れたあちきは、アッパーヒルにある自分の家に帰って来てた。
あちき達は周囲の安全を確認しながら、ガラス製の超クールな玄関ドアを開ける。
そんなあちきに、BASARAが警告をする。
「アナちゃん!!何度も言っただろ??
配信は絶対に辞めた方が良い。
あのパンツァーってプログラムはヤバ過ぎる!!」
あちきは反論する。
「でもBASARA、言ってたじゃん?
『強い意志や殺意を持ってヤらなければ発動はしない』って」
「ああ、たしかに俺様はそう言った。
しかしだからって、『ドウセツ中に絶対にパンツァーが発動しない』って意味じゃない」
「もうここまで来て諦めるのはヤだよ。
だって、あちきの大好きな可愛い可愛いリスナーちゃん達が待ってるんだよ(使命)??
アナは花魁アイドルだから、みんなに愛をあげなくちゃいけないの(ドヤ)!!」
「(ドヤ)じゃねぇよ。
もうどうなっても、俺様は知らねぇからな?」
あちきは網膜ディスプレイ上のBASARAと話しながら、超クールなガラス張りの廊下を抜け、配信用の部屋に向かう。
あちきは会話を続ける。
「でも知ってるよ?
そう言っていてもBASARAは、あちきの事を心配しているんでしょ?
あちき、可愛いからね(悦)」
BASARAがツッコむ。
「アナちゃんが可愛いからじゃねぇよ。俺様がAIだからだよ。
AI検証の2条で決まってんだよ。『AIは使用者の意志に絶対服従すること』ってな?」
「それでも、あちきは感じるの。BASARAの愛を。
BASARAがAIだったとしても、あちきはずーーっと”ガチ恋”してるんだからね(兎)?」
BASARAがやれやれ顔で言う。
「まったくAIの俺様には理解できないぜ……。
人間も……愛も……
なにより、アナちゃんがな……」
配信用の部屋に入ったあちきは、サイバーダイブチェアの前でBASARAと向き合う。
「じゃあ、BASARA。アナをナノマシーン衣装に着替えさせて?」
「命令とあっちゃ仕方ねぇ……。
分かったよ。アナちゃん……。
ナノマシーン衣装を適用する」
BASARAがそう言ったと同時にあちきの身体がグリーンに眩しく光る。
すぐにあちきの服は、ウサ耳とミニ丈の着物に変化した。
もちろん、メイクもヘアセットもバキバキだ。
「やっぱ、この衣装を着るとアガるよね?
見てBASARA?
あちき、可愛い?」
「毎度おなじ質問を、俺様にするんじゃねぇよ。
可愛いに決まってんだろ?
俺様のご主人様は、電脳世界を含めて世界一の花魁アイドルだよ」
そう言ったBASARAは、なんかどうでも良さそうだったけど……
でも逆に、BASARAのその態度がいつもよりもっと”俺様系”っぽかったので、あちきのテンションはさらにアガった。
「ふふふ。ありがとう。BASARA。
大好きだよ。
じゃあ、行ってくるね?」
そしてあちきは、サイバーダイブチェアに座る。
あちきはVRケーブルを”本物の耳の後ろ”に差し込む。
そしてあちきは大きく深呼吸する。
あちきは考える。
あちきはこの瞬間が何より好きだ。
あちきはこの配信が始まる前の瞬間が何よりも好きだ。
もちろんEDMで踊り狂う事よりも、テキーラを呑む事よりも好きだ。
だって最高だと思わない?
あちきの事が、大好きなみんなと……
そして、
あちきが、大好きなみんなと……
”ドウセツ”して……愛で一杯になれるんだよ?
みんなに貰った愛と、そして、それよりも深いアナの愛でみんなを包んで……
”ドウセツ”出来るんだよ?
あちきがこれまで受けた痛みも、みんなの苦しみも、
アナが、ぜんぶぜんぶぜんぶ飲み込んで……“愛”に変えて。
”ドウセツ”の間だけは、アナもみんなも、つらいこと全てを忘れて……
愛で一杯になれるんだよ?
こんなに最高な事なんて、この世には無いと、あちきは思うな。
殺し合いも無く、貧乏も無く、死も無く、不幸も無く、
痛みも競争も妬みも悲しみも涙も無い……
愛だけが存在する最高の、きもちいい瞬間……。
それを………あちきが産み出す事が出来るんだよ?
みんなはそんな事、出来る?
あちきは、出来る。
だから、あちきは花魁アイドルなんだ。
あちきがそんな事を考えながら目を閉じていると、網膜ディスプレイ上に警告が表示される。
【サイバーダイブ起動:
!!!! ロード中です。中断しないで下さい。電脳がショートします。 !!!!】
そしてあちきの全ての感覚は、”2つの数字”に置き換えられて…………。
あちきの意識は電脳空間に入っていった…………。
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