パンツァー2
月影シノブのパンツを見たことにより、俺の超感覚「パンツァー」が発動し時間が停止した。
しかし、ここからが勝負だ。
止まった時間の中で、効率的に時間を使って、有利な状況を作らなければならない。
”看護師のお姉さん”の、パンツを見たときの時間停止は、体感1秒間だった。
あの時は、時間停止の体験がはじめてだったから、「レースの肌色」を見ているだけで時間が過ぎてしまった。
だが今回は、命がかかっている。
そんなことは許されない。
丸腰の俺にできることは、たかが知れているが、慎重に動かねば……。
俺は、状況を整理する。敵は全員で6人だ。
【※以下、覚えなくても問題ありません。サラッと読んでください】
「前の3人」
武器 : 全員拳銃
距離 : 最も遠い
備考 : 月影シノブのパンツに魅入っていて人質から目を離している
「隣の1人」
武器 : 拳銃
距離 : 最も近い
備考 : コイツも月影シノブのパンツに目を奪われている
「背後の1人」
武器 : 不明
距離 : そこそこ近い
備考 : 俺の後ろに居るので、姿を見ていない
「謎の1人」
武器 : 不明
距離 : 不明
備考 : 最も不安な敵だ。
【0.2秒経過】
俺は行動を開始する。
振りかえり、走る。
未確認の敵が先だ。まず最初に「背後の1人」をねらう。
そいつが、どんな武器を持っているのかは分からない。
だから、一種の賭けになるが、そいつの武器を奪う。
マシンガンとかなら最高だが……。
できれば同時に、「謎の1人」も処理したい。
【0.6秒経過】
しかし、「背後の1人」の武器はバットだった。
なぜバットなんだ!アホか?
軍用ヘリで乗り込んで来たくせに、マシな武器は無かったのかよ?
そして、コイツも月影シノブのパンツに目が釘付けになっている。
お前ら、どれだけパンツが好きなんだ????
【0.8秒経過】
しかし、その――「バット野郎」と同時に、「謎の一人」も確認できた。
思ったより近くにいて良かったが…
「謎の一人」は拳銃を持っていた。
お前らどんな配置してるんだ?
こうなったら、「バット野郎」よりも「謎の一人」のほうが脅威だ!!
しかし、このままでは、時間が足りない。
だが、ここまで来て引き下がる訳にはいかない。
クソ!!!もうヤケクソだ!!!!!
俺は、「謎の一人」がいる通路の奥に向かって走る。
【1.3秒経過】
「謎の一人」から拳銃をうばう。殺す時間なんてない。
俺は急いで、ひきかえす。
しかし… 変だな? 前より時間停止が長くないか?
【1.8秒経過】
拳銃を持って、「バット野郎」の横を通過。
とにかく走る。
いつパンツァーが終わるか分からない。
そして、最初の場所にもどり、月影シノブの横に立つ。
俺は拳銃を構えて、「前の3人」にねらいをつけた。
俺の左偽腕の”照準プログラム”が、敵をロックオンする。
ここで、俺の心臓が「ドクン」と大きな鼓動をする。
どうやら、これがパンツァー終了の合図のようだ。
状況は最悪だが、なんとか準備はできた!!
これでいけるはずだ!!!!
【ジャスト2秒。パンツァー終了】
時間停止が終わり、すべてが動き出す。
闘いのゴング代わりに、月影シノブの絶叫が響きわたる。
「いやぁあああああああ!!私のスカート!!!!!」
俺は「前の3人」を射殺する。
月影シノブが、まくれ上がったスカートを抑える。
俺は驚いている「隣の1人」も射殺する。
月影シノブも、拳銃を持っている俺に驚く。
振り返り、「バット野郎」に発砲。当たらない!?
月影シノブが、死んでいる敵を見て驚く。
「バット野郎」に再び発砲。頭に命中。
月影シノブが、俺を涙目で睨みつける。
丸腰の「謎の一人」が、異変に気付いて走り寄ってくる。
月影シノブが、拳を振りかぶる。
「謎の一人」を射殺。6人全員の死体を確認する。
月影シノブの拳が、俺のアゴを捉える。
そして俺の電脳は、はげしく揺れた。
こうして俺は、病院に乱入した敵を全員射殺し、そのお礼に美少女アイドルのパンチを、アゴに貰うことができた。
月影シノブの「ごめんなさい!顎じゃなく、お腹にすれば良かったですね!」という、謝罪か暴力かよく分からない言葉を聞きながら、俺の意識は遠のいていった。
―――――
――――
―――
俺が気を失っている間に、あらためて俺のことを話そうと思う。
名前はナユタ。29歳の浪人で元軍人だ。
訳あって無職のニートだ。
「ニート」と言っても俺のばあい、軍にいた頃の貯金がそこそこあったので、それで食い繋いで生きている。
まあ……その貯金も、もうすぐ尽きるが 。
それと、「電脳」って何?っていう人がいると思うから、説明する。
ヒノモトって国の人間は、過去に行った遺伝子改良の結果、ほぼ100%の人間が「電脳化」している。
「電脳」とは簡単に言ってしまえば――大昔の「携帯電話」ってやつを脳みそに入れたようなヤツだ。
だから俺たちは、「電脳」っていう遺伝子改良の結果、いつでもどこでも「サイバーネット」に繋がることができる。
それにより、
――検索したり……
――snsに投稿したり……
――VRゲームしたり……
――ホログラムを出したり……
――遠隔で機械を操作したり……
そんな感じのことが、誰だっていつでも、出来るようになっている。
要は、かなり便利な世界になっているわけだ。
しかし、その「電脳」のせいで色々な犯罪が起こっている。
たとえば、ネットを使って電脳をぶっ壊したり、人間の電脳が勝手に売られたり……
俺みたいに電脳をイジられてしまったり……。
つまり、「個人の知識や思考回路。魂までもが売買される社会」が、
このヒノモトって国であり……
くそったれ電脳社会――オオエドシティって訳だ。
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