下着を買いに行こう1
私は、夢を見ました。
私は軍人さんで、戦争の真っ只中にいました。
いつでもどこでも人が死んでいく地獄のような毎日です。めっちゃ怖いです。
でも軍人さんの私は、そんな状況に慣れっこなようで、いろんな場所を転々としながら殺し合いを続けていました。
でも私は、ある日ソビカ軍の兵隊さんに捕まってしまいます。
もちろん仲間も一緒です。そして私達は、ひどい拷問を受けます。
あまりにも残虐なシーンが続くので、私のグロ耐性がキャパオーバーしてしまい、色々と覚えていないのですが……。
拷問官の怖いソビカ軍人さんの、真っ白な顔と真っ赤な目と、私の友人の事だけはハッキリと覚えています。
軍人の私は憎しみを込めてソビカ軍人さんを睨みます。拷問官の彼は言います。
「チンケな戦争で死ぬなんてバカらしいだろwww
だから、俺がお前達をバズりに変えてやってんだよww
バズって動画がぶちアガればさぁ?
お前らの人間クセェ魂だって報われるってもんだろぉ??」
ソビカ軍人の拷問官の人は、真っ白の頭に真っ赤な血を被り、目も真っ赤に光り、サイコパスみMAXでヤバ過ぎでした。
そして、軍人の私の友人は私の隣でうごめいていました。
彼の身体は色んな拷問で原型を留めていませんでしたが、彼は、なんとか喋ります。
「もうすぐ……この戦争は終わる……俺達は負ける。俺自身も死ぬ。
だが、お前は死ぬな……お前には、ヒノモトと……そして、俺の妹の未来を……守って欲しいんだ」
――――
「タケコちゃん!タケコちゃん!!」
私は、おとなしそうな女の子に揺さぶられ、目を覚ましました。
彼女は、必死で私を起こそうとしています。
しかし、私は「ムニャり」ながら、隣の席の彼女に言います。
「…ヤチヨちゃん……。ダサい本名で……私を呼ばないで下さい……」
しかし、彼女の声を追って、先生の怒声が飛んできます。
「万錠タケコさん!! 起きなさい!!」
私は、飛び起きます。みんな私を本名で呼ばないで欲しいです。ダサいので…。
ともかく、びっくりした私は思わず叫びます。
「うわ!!びっくりした!!!
…マツダイラ先生……?
……いらしたのですね?」
アイドル物理学のマツダイラ先生は、言います。
「いらしたも何も……もう昼休みは終りましたよ?
轟女子学攻の淑女が、ヨダレを垂らしながら机に突っ伏して寝てるなんて……嘆かわしい…」
と彼女は、どこで売ってるのか分らないぐらい三角形なメガネを触りながら、嘆かれました。
「ば、爆睡はしてましたが!ヨダレは垂らしていません!!
顔中に服の跡が付いた程度です!
アイドルはヨダレなんて出ませんから!!」
と私が、訳の分からない抗議をした事で、マツダイラ先生の堪忍袋の緒がブチッと切れました。
そのため私は、放課後にマツダイラ先生の呼び出しをうけ……
「普段の成績」とか「アイドルとしての実績」をネタに、豚骨ラーメンのスープぐらい、コッテリ絞られてしまいました。
気分はブルーです。まあ、9割ぐらい自分が悪いんですが……。
ブルーな気分の私は、脈絡も無くプロデューサーさんの事を考えます。
ところで、皆さんは私に対して――
「アイドルなら、真っ先に自分のプロデューサーの見舞いにいけよ」
――って思われているかもしれませんが……。
まあ……私も、そう思います。
いまだに、まだ一度もプロデューサーさんのお見舞いに行ってない私は、「人情無し冷血アイドル」として痛仏のアカウントが炎上しても、仕方が無いと思います。
でも、言い訳をしますが……
私はプロデューサーさんと顔を合わせるのが怖くなっていたんです。
その原因は、たぶん、お姉ちゃんのせいです。
お姉ちゃんのプロデューサーさんに対する想いを聞いてから、私はなぜか、プロデューサーさんと顔を合わせるのが、怖くなってしまったんです。
その理由は…………… 何故なんでしょうね?
この事に関して、絶賛悩み中ですが、答えは出ません。
確かなのは……この事を考えると、唐突に胸が締め付けられて苦しくなる事です。
動悸でしょうか?息切れでしょうか?
そうやって私が、「お姉ちゃん……プロデューサーさん……」と呟きながら、とぼとぼと帰っていると……
キラキラの水色のショートヘアで、くりくりの紫の瞳のSSRキャラ!――織姫ココロちゃんが、歩いているではありませんか!!
実は私――月影シノブは、可愛い女の子が大好きです。
もちろん、清く正しくキャッキャウフフする対象としてです。変な意味では無いです。
ですので私は、学攻の中でも1、2を争う程に可愛らしい織姫ココロちゃんを見つける事で、「ブルー」だった気持ちが一気に「ピンク」になりました。
要するに「アゲアゲ」です。
「あ!! ココにゃんだ!!」
と私は叫び、織姫ココロちゃんに走り寄り、後ろから抱きしめました。
彼女の癖毛で水色の髪からは、フローラルな良い香りがしましたので、私はさらにアゲアゲになり、気分が「ピンク」から「パッションピンク」になりました。
「はわわわわわ!! シ、シノブちゃん!?」
と織姫ココロちゃんは驚き、顔を真っ赤にして、紫色のおっきな瞳を白黒させ、いつもどおり「はわり」ます。
ね?可愛いでしょ?
そして、私は、鋭角的なターンで彼女の正面に回り込み、両手を繋ぎ、満面の笑みで聞きます。
「どうしたんですか?ココにゃん!? 遅くに下校してるのは珍しいですね!?」
彼女は、いつの間にか乱れたスカートを直しながら言います。
「うん。その…あのね? 今日は…ボク…表彰式の練習をしていたんだ…」
「表彰式?」
「うん。この間の配信でね…?
ボク…同接数が3000万を超えたから…来週、表彰式があるんだ…」
「3000万!!同接が!? 正気ですか!?」
と、私は目を飛び出さんばかりに驚きました。
もしかすると、「学攻が腰痛部の同接数で表彰すんの?変じゃね?」と思われている方がいらっしゃるかもしれないので、念の為説明しますが……。
ヒノモトでトップレベルのアイドル育成実績を誇る、轟女子学攻では、生徒の活動実績に応じて表彰式が行われます。
特に、織姫ココロちゃんは学攻内でも、結構いい感じの実績がありますので、月1レベルで表彰があります。
織姫ココロちゃんは、内股をモジモジしながら言います。
「ボク……配信では緊張しないけど。リアルの場では、その……恥ずかしくて。
練習しないと上手く話せないんだ。
だから、いつも……先生に練習を手伝って貰ってるの…」
私は、陰キャ仲間だと思ってた織姫ココロちゃんの、思わぬ陽キャっぷりにショックを受けます。
「あはは。3000万…。 マジウケる…。 私の40万倍は、ウケ過ぎて…マジヤバみ」
と放心しながら、私は慣れないギャル語っぽいうわ言を、のたまいます。
そんな私を見て、織姫ココロちゃんは心配した様子で言います。
「シ、シノブちゃん? ……だ、大丈夫…?」
しかし私は、うわ言を重ねます。
「マジヤバみで…。ウチ…吐ける…。 はは…」
そんな「えせギャル化」した私の精神状態が心配になったのか、織姫ココロちゃんは私に「ある質問」をします。
「シノブちゃん…。 今日…ひま…?」
私は、織姫ココロちゃんから聞く「私にとって凄く嬉しい質問」に、とても驚きました。
みなさんひょっとしたら、既にご存知かもしれませんが――
私は「陰キャのパリピ」ですので、人様に何かに誘われる経験には乏しいのです。
ですので「お友達からのお誘い」に飢えている私にとって、「今日ひま?」という文句は、言葉通りの殺し文句なのです。
そんな、今世紀最高に嬉しい言葉を聞いた私は、目をギラギラさせ、織姫ココロちゃんの肩を両手でガシっと捉え、物凄い勢いで詰め寄ります。
「今日暇ってどういう意味ですか? お誘いですか? 一緒に遊ぼうって意味ですか? 凄く期待しちゃうんですが、本気に捉えて良いんですか? 私は今日、お仕事も無く暇ですよ?? いや、お仕事があったとしても、いつでもオッケーですよ!!」
常軌を逸した私の圧に、ココロちゃんはビビります。
「は、はわわわわ! シ、シノブちゃん!!
そんなに…ボクの体を…揺すると! 服がズレて! ブラジャーもズレて!
ボクのお胸が!!」
と、一通り織姫ココロちゃんが「はわり」まくったところで、私は正気を取り戻します。
いつの間にか、彼女の服はズレまくって、その小さなお胸が、ブラジャーからハミ出かけてました。
私は彼女に謝ります。
「す、すみません。 あまりの嬉しさに、理性が空の彼方にハジけ飛んで行ってしまいました」
織姫ココロちゃんは、恥ずかしそうに、いそいそと服を直します。
しかし、前から思っていたんですが、彼女の服は「脱げ易い」が過ぎませんか?
ともかく、なんとか服が整ったココロちゃんは言います。
「ぜ、全然良いよ……。シノブちゃんなら……いくらでも……」
そして、私はワクワク顔で、彼女に聞きます。
「それで! 何をしますか? どこに行きますか?」
「あ!それは……。 どうしよっか…?
ご、ごめんね…ボク。誰かをお誘いするの…初めてで、考えて無くて」
織姫ココロちゃんは、行先はあまり考えてなかったようです。
でも、これって逆に嬉しいと思いませんか?
織姫ココロちゃんの思い付きで、お誘いを貰えるって事は……つまり彼女は、私とどこに遊びに行っても楽しいってことなんですよ?
要するに彼女は、私ととにかく遊びたいのです。
目的はなんだって良いんです。
最高じゃ無いですか?
…という感じで私は、彼女からのお誘いの嬉しさに再び大興奮しながら、瞳孔を広げて言います。
「じゃ、じゃあ!! 私が行きたいところをキメても良いんですか!? 私が遊ぶ目的をキメても良いんですか!?」
「…キ、キメる……? なんだか…ちょっと怖いけど…。 でも、良いよ…シノブちゃんとなら……」
織姫ココロちゃんからの許可を貰えた私は、
かねてから一人で行く事を躊躇していた場所を声高々に宣言します。
「それでは発表します!! 私達が、今日一緒に遊ぶ場所は……」
ここでドラムロールが鳴り響きます。もちろん私の脳内で。
そして、私は校内に響くぐらいの声で叫びます。
「私達は!今から二人で! 高級ランジェリーショップに行きます!!!」
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