3話
初配信を終え、すぐに眠ってしまったのはまだ我が配信というものに慣れていないのだろう。
我は一人暮らしはしておらず、実家で配信をしている。家には母親と2人で暮らしている。父親は単身赴任で海外にいるためあまり会うことは無いが連絡は結構頻繁に取っている。両親共我が配信者になることは知っており、応援していると言ってくれた。
ニートである我を応援してくれている両親には感謝しかない。早く恩を返せるようにとよりいっそう配信を頑張ろうと思った。
「アリス、ご飯の準備が出来たから食べちゃおうか。」
空腹で目が覚めた後リビングに顔を出すと、ちょうど夕食の準備が出来たようで我を呼びに行こうとしていたところだったようだ。
「アリスったら、配信するなら言ってくれてもいいじゃない。おかげでリアルタイムで見れなかったわ。」
「んぐっ!?もしかして、は、配信みたの?!」
あ、危なかった…ご飯を吹き出すところだった。まさか、母親に見られているとは……
実は母親に初配信の日を黙っていたのにはちょっとした理由がある。それは、配信の時の口調と普段の我の口調が違っているからである。
普段は『我』という一人称ではなく『私』にしている。口調も女性らしいものにしている。やはり『我』という一人称は他の人から見たら少し変わって見えるのだろう。そのため周りに溶け込むために口調を偽ることにしたのだ。
母親には『私』の口調で接しているため素の自分を受け入れてもらえるか不安だった。それに、元魔王だと言う娘をどう思うのか怖かった。
「あ、あの口調はなんというかキャラ付けというか……その…」
言い訳を必死に考えていると……
「隠さなくても大丈夫よ。普段と口調が違うから驚いたわよ。でも、すぐ分かったわ。配信している時のアリスが本当のあなたなのね。アリス、よく聞いてね。あなたが前世の記憶があって例え元魔王だったとしてもアリスが私の自慢の娘であることは間違いないわ。」
それを聞いて、我がいかに馬鹿だったか気付いた。こんなにも自分を愛してくれていた。母親の愛に気づくことが出来ないなんて馬鹿以外の何物でもないだろう。
「……うん。ありがとうお母さん。私…いや、我はもっと人気配信になるぞ!」
「でも、アリスったらすごいじゃない!まだ、1回しか配信していないのにもう登録者数が1000人突破するなんて。」
「…………へ?」
急いでスマホで確認してみる。すると、そこには……
ALICE CH チャンネル登録者数 7086人
な、なぜこんなにふ増えているんだ?!確か、初配信を終えた直後は200人程度だったはず。
我が寝ている間に一体何が起こったのだ?
「この如月アニカって子がアリスのことツイートしているわよ」
自分の携帯とにらめっこしている我に携帯の画面をみせてくる。
【如月アニカ@ブイぶい2期生】
この人エイムもキャラコンもヤバすぎ!!!!
なんとチャンネル登録者数100万人越えのVTuberの人が我についてのツイートをしてくれたらしい。
VTuberとは主に「2Dまたは3Dのアバターを使って活動している配信者」のことを言う。
あまりVTuberについては詳しくは無いがこの人のことは知っている。主にゲーム配信をしており、我が初配信でやってたゲームも高ランク帯にいるのを覚えている。
どおりでチャンネル登録者数が爆増しているわけだ。我は未だに信じ難い今の現状にしばらく呆然としているのであった。