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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第2章:十一編
79/80

第79話:プライド

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 2人対照的な位置に並ぶ。


 向こうもこちらも木刀を構え、お互いにお互いの姿を目に映している。


 最後に戦った日から、強くなったという実感は無い。あまり日にちが経っていないというのもあるが、私には強くなったと思えるほどの自信がないのだ。


 この戦いで美月は、私が持つ大切なものがなんなのかを気づかせてくれると言った。


 この戦いを通して、勇気を持てるようになると言った。


 美月の言うことは、昔から信用できる。外したことなんてない。


 そんな美月がそこまで言うなら、きっとこの試合には意味があるはずだ。


 なら、見つけてみせる。私の大切な、命を賭してでも守りたい何かを。


「行きます...!」


「っ!」


 私の目を見た美月が一瞬だけ、驚きの表情を見せた。


 その隙を、私は逃さない。


「セヤアアアアア!!!」


 木刀同士が当たって、バンと大きな音が鳴る。


 防いでくるのは読めている。なら、防ぎきれなくなるまで手数を稼ぐ...!


「ハアアアアアアア!!!」


 連撃に次ぐ連撃を浴びせ続ける。右へ左へ、時には上下に振り、体の芯をブレさせる。


 しかし、美月はそれを余裕を持ってかわし続けた。超人的な身体能力だ。


 そうだ。こんな攻撃が避けられることなんて。


「わかってる...!」


 美月が強いことも、自分が美月よりも弱いことも、何もかも。慢心なんかしていない。それは前に捨てたものだ。


 私が誰よりも知ってるんだ!美月が強いってことを!隣でずっと見てきた私が、ずっと一歩後ろから歩いていた私が、誰よりも...!


「私は!!!」


 横薙ぎを飛ばす。しかしそれを美月は軽々と避け、私の胸に刺突を決めにかかった。


 ああ。


 終わりだ。


 負けるんだ。


 私は、また。


「...ッ」


 その時、美月の体に師匠の姿が投影された。


 ああ、そうだ。私は結局師匠に勝てなかったんだ。そして美月にもまた負けるんだ。


 何も成長していない。何も変わっていない。


 何が大切で、何を守りたいか、根底に沈んだ私の真意もわからないまま、私はまた。


 負ける。


『お前に足りないものは、勇気だ。自分が傷つく勇気、他人も傷つける勇気。その勇気のなさが踏み込みに出ている。前に進む脚を鈍らせているようじゃ』


 そういえば、以前にも師匠に言われたことがあったな。


 本当に私は昔から、何も変わってないんだな。


 私が守りたかったものなんて、無いんだ。勇気なんて最初から持ち合わせてないんだ。


 目を瞑り、全てを悟る。


 その瞬間、師匠と美月の後ろ姿が不意に瞼の裏に浮かんだ。


 いつも見た光景だ。私の手じゃ、どれだけ伸ばしても届かない。


 そんな...。


「そうだ」


 何かが頭をよぎった瞬間、脚に力が入る。


 何故気づかなかったのか。何故思い出せなかったのか。


「...」


 美月の木刀による突きが飛んでくる。


「!」


 しかし、それが何故だかスローに見える。


 お陰で易々と避けることができた。


 ただ、そのスローは一時で終わってしまい、距離をとった時にはもう切れていた。


「その顔、何か掴めたみたいだね」


「はい、お陰様で」


 そう言うと、2人は再び構えの姿勢をとる。


 そうだ。私が何より大切にしてきた、守りたかったもの。


 みんなを助けたいという想いも間違いじゃない。ただ、そんな綺麗な感情は私の行動の根底にはない。


 私の奥底に眠ってるもの、それはもっと泥臭く醜いものだ。


 でも。


 でも、それで良いんだ。


 私が守りたかったもの、それは。


 それは、美月と師匠の背中。高みに位置するゴールへ至らんという不屈の向上心。


 絶対に負けたままでは終わらせないという、尊大なプライドだ。


 それこそが私の守りたかったもの、私が身を挺してまで戦える理由。


 そして、私の勇気の源だ。


「行きます、美月」


 大上段に構える。その表情を見て、美月の体が一瞬こわばった気がした。


 刹那、何かに背中を押されるような感覚を覚えた。それは不思議と温かく感じ、そして同時に安心感のようなものを感じた。


「早い!?」


 その声が聞こえた頃には、私の体は美月のすぐそばまで来ており、上段に構えられた剣は大きく弧を描いて下に振り下ろされた。


「終わりです...ッ!!!」


 バンと大きな音が鳴り、道場の床に木刀が当たった。そう、当たったのは床だ。美月の木刀にも体にも当たってない。


「あっぶなかった...よっ!」


「うぐっ」


 勝負はあっけないものだ。いつの間にか横に入り込んでいた美月が、私の首元にそっと木刀を置いた。


 負けだ。きっと今のが私の全力だった。それでもなお、私は勝てなかった。


 でも。


「どうだった?美月」


「ありがとうございます。お陰で決心がつきました」


 私はそう言うと、美月の元へよって手を差し伸べた。


「みんなのためにも、師匠のためにも、そして私のためにも、私は戦います」


 美月はそんな私を見て微笑みを浮かべ、手を握った。


「うん、いい表情だ。じゃ、よろしくね、美月」


 そうして私は戦いに参加することとなった。














*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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