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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第2章:十一編
77/80

第77話:黒い予感

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 ゴールデンに戻り、自室で考え事をしていた。


「重蔵さん...」


 新倉重蔵。


 一之瀬組組長の亮吉さんと仲が良く、いつも組に来ては、火花さんと鍛錬を行っていた。


 強さは十二分にわかる。故に、戦っちゃいけないってこともわかる。


 でも、もっと根本的な問題がある。それは、親しい人であるということだ。


 もともと面識があって、それなりに仲が良かった。だからこそ、戦いづらいし、何よりやるせない。


 俺はまだマシな方だ。だが、ホワイトは?火花さんは?亮吉さんは?重蔵さんは、どうなる?どんな気持ちで戦えばいい?


 下手を打てばどちらかが死ぬことだってある。そんな現状に、あの人たちはどう思っているだろうか。


 一番心配なのは火花さんだ。あの人は重蔵さんのことを相当慕っていたし、尊敬していた。


「...くそっ」


 苛立ちを夜の闇に吐き捨てる。


 出来ることはない。もどかしい。


 とにかく、起きたことを対処するしか方法はない。裏で操っているであろう羽のアジトさえわかればいいが、それも至難の業だろう。一応、今必死に裕樹先輩が情報を集めているらしいけど、情報統制が強すぎて難しいと言っていた。


「いつまで後手に回り続けるんだ...」


 悔しさを交えながら、眠りについた。


 翌朝。


 俺たちは早速組の事務所に行って、今日の見回りについて話し合った。


「密偵によると、富岡町のアジトに十文字組はいなかった。ヤサを変えている可能性が高い。ただ、奴らの侵入経路からみるに、恐らくは新古町の東、空絵台(そらえだい)の方にあると考えられる。俺たちは今後、空絵台方面の警備を強くする」


 松村さんはそう言うと、ホワイトボードに班の名前を書き始めた。


「うちは元より小規模組織、精々1班につき3人が限界だ。実力が均等になるように決めたが、そこのところは了承してくれ。では、班と見張り範囲を発表する」


 そうして俺たちの班と行動範囲が決まった。


「祐樹先輩と一緒かぁ」


「あ?文句あんのか?」


「いや、別に良いですけど...」


「おい、その含みはなんだ?いい加減にしないと傷つくぞ」


「あ、はい、すみません」


 俺たちがふざけていると、残りの班員である(やなぎ)さんが苦笑いを浮かべながら振り返った。


「ほら、ふざけていないで、行くぞ」


 その声に返事をし、指定された見周り範囲に向かう。


「今日も来ますかね」


「多分来るんじゃねえか」


「なんでそう思うんです?」


「来ない理由ないだろ。戦力差は向こうに方が上だし、定期的に寄越すことで、徐々に戦力と精神的を削ることができる。ま、それを極力減らすためにこうやって班分けしてるわけだけど」


「手っ取り早く仕留めにはこないんですね」


「一応俺たちの組織は警察にマークされてるからな。派手に事件でも起こして、道連れにでもなっちまうかもしれない。それを考慮してんじゃねーの」


「なるほど」


「ちょっと2人、あれ」


 その時、前を歩いていた柳さんが前を指差した。


 そこには数人の武装した6人の男たちがいた。柳さんは見覚えがあるようで「十文字だ」と呟いた。


「やっぱり来ますか」


 ナイフを抜き、各々臨戦体制を取る。


「死に晒せ!!!」


 1人が声を上げると同時に、6人が突っ込んでくる。


 大丈夫。動きから察するに、実践経験が浅そうだ。ちゃんと特訓していれば、これぐらいなら無傷で勝てるはず。


「先輩!柳さん!」


「おうよ」


「ああ」




「ふぅ...勝ちましたね」


「ま...まあ?これぐらい余裕だわ」


「汗だくだくじゃないですか。先輩は弱いんですから、無理しないでください」


「2人とも全然大丈夫そうじゃないか。俺なんてヘトヘトだぞ」


「まあその...歳とかありますしね」


 なんか失礼な言い方になってしまった。こういうとき、なんという言葉を言えばいいのかわからないんだが。


「とりあえず、しばらくこいつらを組みに連れ帰ろう」


「はい」


 そうして俺たちは応援を呼び、車を使って6人を連れ帰った。


「よし、良くやった。さて」


 松村さんは6人の顔を覗き込むと、鬼の形相で睨んだ。


「こいつらには情報を吐いてもらおう」


 奴らは青ざめながら何処かへ連れて行かれた。


「吐きますかね」


「さぁ?」


 それから、俺たちは見回りを続けた。1日目も2日目も襲撃はあったが全て返り討ちにし、3日目以降は全体的に襲撃が少なくなった。


 俺の隊も、他の隊も目立った損耗はなし。全て上手くいっていた。


 しかし、1週間経ったある日、1つの凶報が届いた。


 それは、俺たちが見回りをしていた時だ。


「電話だ」


 裕樹先輩はそう言うと、ポケットからスマホを取り出し応答した。


 その瞬間、先輩のスマホを持つ手に力が入った。


「はい...はい...すぐ行きます。では」


「どうした、裕樹」


 柳さんが訊ねると、先輩はスマホをポケットにしまい、冷や汗をかいた顔を上げた。


「重蔵さんが現れたらしい」


「!?」


「場所は...いや、向かった方が早いな。今美月が応戦してる、俺たちも急ぐぞ」


「はい!」


 とうとう来てしまったこの時が。


 緊張感が緩み始めた時期にこれだ、狙ってやってるだろうな。


 重蔵さん...本当に、どうしてこんなことになってしまったのですか?どうして何も言わずに、敵に回ったのですか?


「あそこだ!」


 裕樹先輩が叫ぶと、そこには腕から血を流すホワイトの姿があった。


「ごめん、逃したし...守りきれなかった」


 涙を浮かべながら足元を見るホワイトの目線の先には、3人の死体があった。


「これは...秋田と羽山と弘前だな」


 柳田さんはそう言うと、そっと目を閉じて手を合わせた。


「ホワイト、お前は大丈夫なのか」


「私は全然平気」


「相手は本当に重蔵さんだったのか」


「うん、鬼の仮面付けてたから顔はわからなかったけど、多分重蔵さん。戦い方もそっくりだった。それより...」


 ホワイトは悔しそうに握り拳を握る。


「私が救援に来た頃にはまだ生きてたのに...!クソッ...!」


「ホワイト...」


 その時、サンドラさんが言っていた言葉を思い出した。


 こいつは、仲間想いなんだ。だからこそ、仲間を殺された時、人一倍感情を爆発させてしまう。そして、制御が効かなくなる。


「...戦力がやっぱり足りないね。明日、火花を連れてこようか」


「確かに、それはありかもしれないな。でも、最近連絡来てないんだろ?」


「うん、だけどあの子なら協力してくれると思う。ただ、体の麻痺が残ってるだろうから無理はさせないけどね」


 そう言うとホワイトは「見回りしてくる」と言って去っていった。


「あいつ、大丈夫かな」


「ああ、流石の俺でも心配になってきたな。美月、あいつなんでもできるけど、こういう気持ちの処理とかは苦手なんだよな」


「ああ、でも、美月ちゃんほどではないが俺もキレてるぜ」


 柳さんは立ち上がり迫真の顔を見せた。


「俺らの同胞を殺したんだ。相手にどんな理由があろうと、それは変わらねえ。だから俺は、新倉重蔵が憎い、十文字の連中が憎い!絶対に許さん!」


 そうだ、この人たちは極道。人間なら誰でも仲間を殺されれば、理由があろうとも怒るのは当たり前。それがメンツを大切にして生きている極道なら尚更だ。


 最初の襲撃時も死人が出た。だが、その時は十文字組ではなく、それを裏で操っている羽に対して怒っていた。


 もしかしたら、我慢していたのではないだろうか。どんな理由であれ、殺害を実行に移したのはまごうことなき十文字組。であれば、羽の指示によって実行したにせよ、十文字組に対して怒りに感情が向くのは当たり前の話ではないか?


 十文字組は一之瀬組を狙い、攻撃し続けるが、一之瀬組は十文字組に対して自主的な攻撃を行わない。そんなの極道世界じゃあり合えない話だ。攻撃には報復、そうやって生きてきたのだから。


 それをあの時、彼らは無理くり怒りの矛先を羽だけに絞った。


 だからこそ、今回は爆発したんだ。1度目は封じた怒りだが、2度目となればそう上手くはいかない。


 今、柳さんの怒りの矛先は羽ではなく、十文字組ひいては、新倉重蔵に向かっている。そしてそれは、恐らく他の組員にも伝播する。


 もしかしたら、羽の狙いは最初からこれだったんじゃないか。


 十文字組を配下に入れた真の理由。


 極道の習性を使って十文字組にヘイトを集め、最終的に...。


「自主的に抗争を起こさせるため...」


「どうした」


「い、いえ。それより、車も呼んだことですし、どうしますか?このまま帰るのも」


「いや、見回りしよう。十文字は見つけ次第殺す」


 柳さんは血を流し倒れる3人に追悼をすると、直ぐに見回りを再開した。


 もし、俺の考えがあっているのなら...いや、考えないようにしよう。


*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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