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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第2章:十一編
73/80

第73話:成長、そして

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 俺たちの修行は続いていた。


「オラッ!」


 蹴りが炸裂する。しかし、対戦相手の裕樹先輩も、負けじと接近戦を挑んできた。


 俺は、放られた拳を避けると、右手に持っていたナイフで鳩尾を刺した。もちろん本当に刺したわけではない。


 その試合の結果としては、俺が勝った。


「はぁ...はぁ...」


「お前...強くなったな...」


 両者とも息が上がっている。疲れた。ただそれ以上に、自分の実力がメキメキと成長しているのがわかっている。


「ホント、強くなったよね」


 タオルを持ってホワイトが近づいてきた。


「想像以上だな。まさか俺が越えられるなんて...」


「本当に強くなる速さが尋常じゃない。伸び代もまだあるし、もしかしたら...」


 意味深な含みに対して「何?」と怪訝な目線を送ると、ホワイトは「何でもない」と言って取り繕った。


 何だ?こいつ最近、俺を見る目線というか、色々おかしくなってないか?


 ま、いいけどさ...なんかやりにくいよね。


「次は私の番だったかな。行ってくるよ」


 そう言って訓練場へ歩みを進めようとした瞬間、ホワイトは思い出したかのように足を止め、裕樹先輩の方を向いた。


「試合終わったら話あるからね」


「話?何の」


「な、い、しょ」


 人差し指を振って今度こそ訓練場へと向かっていった。


「何の話ですかね。もしかしたら告白だったり」


「告白だったら断るわ。あいつと付き合ったらろくなことにならんぞ絶対」


 想像してみる。


 うん、先輩の言う通りだ。振り回されそう。


「前も言ってましたけど、あいつが訓練しても意味あるんですかね」


 疑問を投げると、裕樹先輩は思い返すように上を見上げた。


「わからん。まあなんかあるんだろ、相応な理由ってもんが」


「あいつに足りないのは精神力だ」


 その声と共にいきなり割って入ってきたのはサンドラさんだった。


「精神力、ですか?」


「ああ。あいつの実力は十分にある。私とて、あいつと戦っても勝てないだろうし、私から見れば、あいつの実力は最高点だ。だが、いかんせん精神力が足りない。人一倍仲間想いなんだろう、そのせいで仲間が傷つけられれば怒りが先に出てしまう。そうなれば、あいつの本当の実力が出せなくなっちまう」


 俺たちからしたら、ホワイトは完璧に見える。性格とかはそうでもないが、何でもこなすことができる女子高生ってイメージだ。


 そんなホワイトにも、弱点と言えるものがあった。


 精神力。仲間想いが故に、感情が爆発してしまう、と。


「そうなんですか...」


「精神力の鍛え方は、とにかく体を動かすことだ。まあ、これでどうにかなるとは思わんがな。ただ...これから先は死闘になる。本当に誰かが死ぬかもしれん。その時が万一訪れた時、このままじゃあいつの精神は保たない。だから、気休め程度にはなってくれるといいがな」


 そう言うとサンドラさんは少し悲しい顔をした後、俺たちの頭に手を当てた。


「それよりお前ら。私か美月に認められるまでこの訓練終わらないって言ったよな?いつ認めさせてくれんだ?あ?」


 凄まれてしまい、俺たちの身長が縮んだかのような錯覚を覚える。怖いよ、この人。


 ただ、サンドラさんが言う通りだ。実は何度か戦闘をしているのだが、一向に勝てる気配がない。どころか、認めてもらえる気配すらない。それほどまでの惨敗を繰り返している。


 しかし、諦めるわけにはいかない。俺には強くならなきゃいけない理由がある。俺は...。


「次、やらせてください」


 そう言うと、サンドラさんの表情が心なしか緩んだ気がした。


「そのいきだ。一之瀬のてめえらも、休んでんじゃないぞ!」


 喝を入れると、松村さんを筆頭に肩を跳ね上がらせ、各々怯えた声で返事をした。


 翌日からも、激しい訓練の日々が続いた。


「あともう一周!」


 最初のうちは疲れていた地獄の持久走も、少しずつだが慣れていった。もちろん、地獄なのは変わらないが、極地獄が並地獄に変わるくらいには慣れていった。


「一斉銃撃、始め!」


 銃撃も、前より上手くなった気がする。もちろん、まだまだ下手だけど。


 そして。


「今日こそはあたしに認めさせろ」


「わかりました」


 サンドラさんとの間に重い空気が流れる。何度も繰り返したこのやり取り、もうこの空気感には慣れた。


「行きます」


 一歩踏むと、すかさずに銃撃を仕掛けてくる。俺は遮蔽を利用しながらそれを避け続けた。


 俺の弱点は銃撃が下手くそなことだ。そこそこ腕が立つガンマン相手に距離感を見誤れば、圧倒的に不利になってしまう。


 だから、俺の戦闘スタイルはこうだ。


「ハアアアア!!!」


 飛び蹴りがサンドラさんの顔面目掛けて飛ぶ。サンドラさんはそれをいなすと、ナイフを即座に取り出し斬り合いを始めた。


 正直、前から何も変わってない。ゴリゴリの近接戦闘だ。だが、前と違って銃への未練がない。ここ数週間で銃の腕が全然上がらないことに気づき、逆に吹っ切れた。そのお陰で銃に対しての未練がなくなり、近接戦闘に集中することができている。


 そのため、前よりもパフォーマンスが上がっている...と思う。


「中々やるようになったじゃねえか」


「お陰様です!」


 ナイフを横に薙ぐと同時に、足払いをかける。サンドラさんはそれを避けるために飛んで後退した。そして同時に3発銃弾を入れる。


 前までは被弾していた。だが今は読める。俺の第六感が教えてくれる。


 弾道を、狙いを、全て。


「...!」


 素早く静かに、そして避けつつ銃を撃ちながら近づく。当たらなくていい、ただの牽制射撃だ。


「やはりその力、成長すれば侮れんな!」


「ハアアア!」


 また切り込み合いに発展するかと思いきや、サンドラさんは大きく後退し、近づくことを許さなかった。追従するように追いかける。


 しかし次の瞬間、サンドラさんの動きが止まり、どころかこっちに向けて走ってきた。


「嘘だろ!?」


 嘘じゃ無かった。サンドラさんは俺の腕をがっしりと掴むと、投げの体勢に入る。


 そして俺の体は宙を舞った。


「オラアアアッ!!!」


 しかし、俺は叩きつけられることなく踏ん張り、その力を利用して逆にサンドラさんを投げつけた。


「よし!」


 が。


「よしとはなんだ?」


「え?」


 俺の胸に球が当たった。投げたはずじゃ...。


「甘いわ。お前ができることを、あたしができないとでも?」


「...おっしゃる通りです」


 慢心が過ぎたな。投げたと思ったけど、受け身を取られたかなんかして負けたんだろう。


 最悪だ。


「詰めが甘い。死を確認するまで、油断はするな。まあこの言葉はあたしにも刺さるが...」


 そう言うとサンドラさんは苦い顔を浮かべた。この人でもそういうことあるんだな...。


「ま、今の試合は及第点ってところだ。他の奴らも順当に強化されていっている」


 サンドラさんは訓練場外に足を運んだ。


「そろそろ、あいつらも動き出すだろう。気張れよ」


「はい!」


 そうだ。もうあれから3週間は経った。動き始めても遅くない頃合いだ。


 始まる。また始まってしまう。


 次、俺たちは生き残ることができるか。一之瀬組を救うことができるか。


 俺は不安感を胸に抱えながら、訓練場を後にした。






*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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