第71話:実戦訓練
*不定期更新です。基本13時に更新してます。
始まった。
まずやらされたのは持久走だ。これがマジでやばい。最初からやばすぎる。
内容としては、普通の持久走。サンドラさんが「止め」と言うまで続く。
しかしこれが、全く言わない。全然言わない。これっぽっちも言わない。結局何キロ走った?多分15以上は走った。
ヘトヘトだ。一応俺はこれまでずっと寝てたわけだから、体力もないわけで、正直これが終わった瞬間死ぬかと思った。
てか、これは俺だけじゃない。美月を抜いてほとんどの奴が死にかけてた。先輩なんて吐いてた。極道組はリタイアして、こっぴどく扱かれてた。
終わりだよ。もうできっこない。そんな弱音吐いたら殺されるから吐かないけど、実際無理だ。これ以上できない。
しかし、無情にもサンドラさんの指示が出てしまう。
次に行われたのが、銃撃訓練だ。ただの射撃訓練。これはそんなに難しくないはずだったけど、厳しすぎる。
そもそも俺は前々から銃がへたっぴだ。真ん中を10発連続で当てろとか死ぬかと思った。
結局それをクリアできたのは美月と虚だけ。虚は得意だし、美月は化け物だから、まあ驚きもしない。クリアできなかった俺たちは、明日の持久走で走る距離が増えた。終わりだよ、何もかも。
そして地獄の射撃訓練が終われば、次に待っているのは実戦を模した模擬戦。これはシルバー式に則ったルールだ。ただ、今回はペイントガンとかいう武器が追加されている。そして、対戦相手はローテーションで変わる。
裕樹先輩や虚が他の参加者と闘い、勝敗が決まっていく。そしてとうとう俺の番が来た。
俺の相手は日暮だった。
「久しぶりだね。本気で戦うの」
「ああ、そうだな」
日暮に負けて悔しかった日が懐かしい。あの日は夏休みの終わりと、俺の大学生活の終わりの日。
当時は負けて苦い思いをした。しかし今は違う。
「今度は勝たせてもらうぞ、日暮...!」
「岸辺に奇襲された時は恥かいたけど、今回は私も強いってところ見せないとね...!」
お互いに構える。今回は銃もあるから、戦い方の幅が広がるな。
更にステージも違う。この地下施設、隠し扉がまだあるみたいで、その先になんと撃ち合いできるスペースがあるのだ。そこで戦う。
「始め」
瞬間、俺が前に出る。日暮は距離を取るように後ろへ下がった。俺は銃が苦手だし、撃たれたらほぼ確であたっちまう。ここは近接戦闘に持ち込むべきだ。いつもと同じだけど。
「オラッ!!!」
「...!」
ナイフを横に振ると、日暮は無言でそれをかわした。
流石、元祖師匠なだけある。全然攻撃が当たる気がしない。
「そんな単調な攻撃だと、サンドラさんに勝てないぞ!」
突きをかわすと、今度はこちらに銃口を向けてきた。
その瞬間、体が動く。そして、打ち出されたペイントボールを避けることができた。
「なるほど、反応が良くなってるな」
「お陰様だな...!」
そこからペイントガンの撃ち合いに発展した。
遮蔽を使っての撃ち合い。実戦によく似ている。
多分後片付けとかヤバいだろうけど、まあ...気にしないでおこう。今は戦闘に集中だ。
さて、どうしたものか。
このままだと、ジリ貧だ。そもそも、銃が下手くそな俺にとっては、この撃ち合いそのものが不利状況だ。なんとかして近づかねばならない。
...考えてもわからん。
遮蔽を利用して上手く背後を取れるように動くしかない。
視野を広く保っていけ...!
その時、1つの不安要素が頭をよぎった。
日暮からの銃撃が止まった。そんなことないだろ。弾幕をはらなきゃ近づかれる。
では何故止まった?
「...!」
後ろを振り返り、瞬時に撃つ。
「いないっ!?」
背後から来てるものかと思ったが、そこにはいなかった。
瞬間、背後から気配を感じた。
「やば!?」
反応し、横に身を翻すことで背後からの銃弾を避けることはできた。しかし、この避け方は隙が大きい。
「ブラフかよ!?」
「引っかかったね!」
ナイフによる突きが飛んでくる。これは避けられない...!
でもこれで終わってられるか!
俺は身を翻し、ナイフを急所から外した。そしてそのまま、腕を掴んで引き寄せる。
しかし。
「やるね」
その言葉と共に、一発の銃弾が放たれた。
それは俺の心臓をしっかりと撃ち抜いていた。
「勝負ありだな」
サンドラさんはそう言うと、俺たちを別室に通した。
呆気ない。呆気なさすぎる。
それなりに強くなっていたと思ったけど、こんなもんか...。
「ま、私はこれでもサブリーダーだからね。後輩には負けてられんわ」
そうか、そういえばサブリーダーだったな。コードネームもサブだったし。
そこで俺はふと疑問に思った。
「なんで日暮はシルバーに入ったんだ?」
言った瞬間、デリケートな質問だと気づき「答えなくてもいいけど」と慌てて付け加える。
「いや、言うよ。仲間だし、大斗にも協力して欲しいしね」
協力?
「私も例に漏れず孤児だった。聞いた話によると母さんがストレスで死んで、後を追うように父さんも死んで、親戚にも預けられなかった私は、孤児院に預けられた。でも、私は一人じゃなかった。何故なら、大切な家族が...妹がまだ残ってたから」
「聞いた話?」
「記憶障害で忘れたの。ただ、覚えているのは、妹がいたということ。そして、火事が起きた当日に、妹が消えたこと」
孤児院...火事...。
「それって...」
「うん。多分、クロウの仕業だと思う。妹はクロウに連れ去られた可能性がある。私はその後、シルバーに引き取られた。そして、名前も見た目もわからない妹を探すためにここまできてる」
「それが日暮がシルバーにいる理由か」
「そういうことになるね。私も知らないことだから、どうやって見つけるんだって話だけど。もしかしたら、死んでるかもしれないし。でも、私は生きていて欲しいと思ってる。クロウにいても、敵として戦うことになっても、私は生きていて欲しい」
そう言うと、日暮は笑みを浮かべた。
「ま、なーんも知らないけどね。だから、あんたも妹に関することわかったら、私に知らせてよ」
「おう、見つかるといいな」
「そうだね」
やはり、シルバーにいる人は皆、相応の過去と見合った覚悟が備わっている。
日暮のためにも、これからの訓練、しっかり頑張らないとな。
俺は心の中で、そう思った。
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