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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第0章:プロローグ
7/80

第7話:修行

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 目を覚ますと、そこは見知った天井だった。


「あー」


 呻き声のようなエッジの効いた音が喉から出る。


 やっちまったな。一週間に二度も意識を失うとはね。ま、天井からしてここはあの闇病院ではなく、アジトの方だ。となると、誰かが助けてくれたのか。


「あ、起きたんだね」


 ホワイトだ。食器を並べた盆を持っている。


「これ、食べてね」


「サンキュー。ところで、どんだけ寝てた?」


「私が見つけたのが昨日の夜で、今が12時だから、いつものキミと同じくらいだね」


「自堕落な生活まで知られているのか...」


 まあ、こいつは変な奴だが、今回ばかりは本当に助かった。流石にお礼はしておくか。


「助けてくれてありがとう」


「...」


 なんか下向いてるし...。

 ははーん?さては俺から感謝されると思ってなかったな。


 にやけ面で見つめると、ホワイトは顔を赤くしながらこっちを向いた。


「ほ、本当に世話が焼けるよ、キミには...!」


 平静を装っているつもりだろうが、まだ顔が赤い。


「と、とにかく!キミは弱い!弱すぎる!だから......訓練だ!!!」


 ピーンと人差し指が俺の顔を向く。

 すると、ホワイトの後ろから1人の女が近づいてきた。


「暑いねー。2人の間が熱いよー。クーラー壊れちゃったかなー?」


 茶化しながら歩いてきたのは、日暮だった。

 そんな日暮をホワイトは睨みながら「うっさい」と小声で呟く。


「さ、私が大斗の指南役として色々教えていくから、よろしく」


「ダイトクンノシショウノヒグレサンデーッスパチパチパチ」


 ホワイトはわざとらしく棒読みで言う。仲悪いんか。


 指南...あー、そういえば、昨日先輩が言ってたな。


「訓練って、何を?」


「ま、それは私についてくればわかるよ。そこの思春期jkは待ってな」


「うっさい!痴態メガネ!」


「今はメガネかけてないっての、じゃ、早くご飯食べちゃってね」


「はぁ」


 そんな感じで、終始どこか不機嫌な白井さんと食を共にした後、俺は日暮に連れられ、とあるドアの前まで来た。


「ここって、拠点に通づるドアだよな」


「そうね。ただ、こっちにもドアがあるんだな」


 見ると、ドアらしきものはない。


「無いけど」


「あるんだな」


 そう言って、得意げに拠点の玄関の電子ロックに手をかける。

 ただ、拠点の暗証番号じゃない。これは別のを入れているな?


 日暮が番号を入れ終わると、右側面のコンクリートが音を立てながら上へ上がり、その奥に階段が出現した。


「す、すげええ!!!」


「すごいでしょ?さ、この先よ」


 ロマンだ!この拠点にはロマンが詰まっている!


 興奮しながら階段を降り終えると、真っ暗闇が広がっていた。


「つけるよ」


 明かりがつく。

 眼前にはめちゃくちゃ広い空間が生まれた。


 こ、これは...。


「ひっろぉ」


 すごく広い。並のグラウンドより全然でかい。こんなのが地下空間にあったのか。

 感嘆していると、横から日暮が現れて大きく腕を広げた。


「ここが我が組織の訓練施設!正面にあるのが、射撃訓練場。アメリカとかにある、人型の的当てるやつね。んで、左手にあるのが、総合訓練場。外周のトラックを走ったり、筋トレしたりできるよ。最後が右の道場。んまあ...これはただの道場。近接戦闘の練習に使う感じかな」


「ほ〜」


 すっげえガッチガチの施設だ。

 高校以来めっきり運動してないし、こんなんやったら死にそうだな...。


「ま、そんなこんなで、大斗には戦力になってもらうために、今日からみっちり扱き倒しちゃいます」


「じ、慈悲を」


「さ、行こう!先ずは射撃の腕を確かめるね」


「...無いみたいですね」


 仕方なく着いて行くことにした。


 射撃訓練場。

 テレビの中で見たやつで、実際やるのは初めてだ。銃撃ったことないからそりゃそうなんだけど。


「はい、これ」


 渡されたのは拳銃。種類とかはわからないがとにかく銃だ。まあまあ重い。


「弾入ってるから、慎重に扱ってね」


「は、はい」


「右利きだよね?先ずは右手でグリップを...」


 ち、近い...。


 俺は恥じらいながらも、なんとか言われた通りに形にした。そしてとうとう実射だ。


「はい、じゃあ撃ってみて」


「わかった」


 集中集中。

 ここで俺の才能が発揮されて裏社会で無双するんだ...!その意気込みで...。


「力入れすぎ。肘と膝伸ばしすぎ。もっと柔らかく使って」


 容赦ない指摘ありがとうございます。


 正直、この技術が俺の今後の生き死にに関わる、と思う。

 真面目に真面目に...。


 ここだ!


 ハズレ。


 もいっちょ!


 ハズレ。


 まだまだ!


 ハズレ。


 何回やっても中心や頭に当たるどころか、そもそも当たらない。


「......なんでや」


「...んまぁ、初心者はこんなもんだよ!心配することじゃない!じゃ、気を取り直して近接戦闘行ってみよう!」


「...オッケー」


 正直、落ち込んでる。

 ただ、落ち込んでる場合じゃない。次だ次。次に賭けろ。


「はい、じゃ、近接戦闘ね」


 道着に着替え、道場の扉を開けると、畳の上に道着姿の日暮が立っていた。スチロール製のナイフのようなものを持っている。


「押忍!」


「気合い入ってんねぇ。じゃあ、とりあえず、食らってみよっか」


「押忍!って、え?」


 食らって?


 瞬間、懐に日暮が入ってきた。目で追えないし、追えたとしてもとても対処できねぇ!


「死ねええええええ!」


 実戦で死ねはおかしいっ!とりあえず、避け...。


「はい、終わり」


 結局俺の体は動くことなく、ナイフで一突きされてしまった。


「さっきみたいに突撃された時の対処法。体の何処かしらを掴まれた時の対処法。拘束されてる状況から脱出する方法。とにかく、実践的で効果的な練習をするからね。とりあえず、食らって慣れろっ!」


「うわあああ!!!」


「とにかく!私に一本取れるまで!」


 そんなこんなで死ぬほど技を食らわせられ、たまに、自分で日暮に食らわせ、そして結局、「体力が無いから」と1日に何キロも走らされ...。銃も手にタコができるほど撃った。


 そんなのをほぼ丸一日。

 たまにお使いみたいな任務を交え、何日も何日も繰り返した。


 そして。


「お、今日も修行か?」


「はい。先輩もやります?」


「やらんわ」


「じゃあ、虚は?」


「遠慮しとく」


「ホワイトは?」


「美月って呼んでよ...。行かないよ。私強いし」


「痛い目見るぞ」


「ほぉ?見させてくれるのかな?」


 そう言ってシュッシュっとパンチを繰り出すホワイト。

 そんな奴を尻目に、俺は今日も修行しに行く。


 と、言っても。今日は特別だ。夏休みの最終日。


 今日は、師匠に一本取る日だ。一週間前からそう決めていた。


 緊張で震える手を抑えながら、ロックを解除し、薄暗い階段を降りる。


 こんなに緊張したのも初めてだ。普段はうるさい俺の第六感も、あまりの緊張になりを潜めている。


 別に師匠は期日は定めていない。ただ、この日を逃せば、練習時間は少なくなり、弱体化してしまう。それに、こうやって決めとかないと、だらしない俺はダラダラ先延ばしにするだろう。


 だから今日だ。今日、一本決める!


「ふぅ」


 呼気と吸気を深く...。


 覚悟決めろ!朝霧大斗!


「たのもおおお!」


 勢いよく道場の扉を開ける。

 目の前には正座をし、心頭滅却をした日暮が座っている。


「その目...私から一本を取ろうとしているな?」


 鋭い目つきと、オーラ。

 日暮。いや、師匠。あなたも本気なんですね。


 なら、本気で取りに行くのが作法だろう。


「はい。今日は、本気です」


「よかろう」


 師匠は咳を1回した後、腰を上げ、正面に立った。


「鉄火場でも、暗殺でも、護衛でも。私たちは命を賭けてその任務にあたる。私たちは日々に命を賭して、命を奪い、そして守っているんだ。だから、この修行は本番だと思ってやりなさい。命を賭けて、私の命を奪ってみなさい」


「はい、師匠」


 直後、静謐な空間が辺りを包む。


 間違いなく今、生死を賭けた戦いが始まろうとしている。


「さぁ、始めよっか...!」














*不定期更新です。基本13時に更新してます。

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