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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第2章:十一編
66/80

第66話:【SIDE.C】次なる戦いへ

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 ジョンの死体とみなみ、そして灑鳥をクロウ直属の病院に運び、阿修羅を帰らせた後に、俺たちはこれからのことを話すため、あるマンションの一室に入った。


 話し相手は仮面の女、ルナだ。こいつは最近こっちにきたばっかで、この後の第2の作戦については説明していない。


「失敗だったな」


 辺りには忙しないサイレンの音と、警察車両の通る音が聞こえる。そして、緊急を報じるニュースがテレビから流れている。


 ここは安全な拠点だ。派手にやりはしたが、バレることはないだろう。問題は、派手にやった代わりに得られたものが少なかったこと。


 何より、戦力を大幅に失ったのはまずい。


 灑鳥は俺が来た時には既に危ない状態で、クロウ直属の病院に担ぎ込んだは良いものの、助かるかどうかは望み薄だそうだ。みなみも戦える状況じゃなくなっちまったし、ジョンに至っては息絶えていた。


「......」


 テレビから流れる緊急報道をしばらく静観していると、目の前にいるルナは口を開いた。


「まああれは仕方ないですね。予定より、相手が上だった」


「それもあるが、何より朝霧大斗だ。予想以上に治りが早い。あいつマジで何者なんだ?」


 問いかけるが、ルナは一切答えようとしない。いつも通りだ。こいつらは依頼してるくせして、こっちには情報を渡さない。渡すとしても最低限で、それ以外は「知らなくていい」の一点張りだ。


「それよりどうするんですか?私たちは脱出しましたが、他の半グレとかは...」


 他の半グレどもは死んでるか、今頃警察に捕まってるかの2択だろう。捕まってしまえば、事情聴取なりされてしまう。木っ端には重要な情報は教えてないが、ヘボい情報の1つや2つは出されるだろう。


 そうなれば、多少なりとも不利になるのは確かだ。


 もちろん、何も考えてないわけではない。


「今の日本の警察ってよぉ、役立たずだと思わねえか?」


 問いかけると、回答とは違う予想外の言葉が出たためかルナは少し戸惑ったが、直ぐに冷静になった。


「ま、まあ、30年前から犯罪率は増えましたし、それに伴って警察や国家の力が衰えたのは事実ですね。でも、いきなり何故...?」


 そう、今から30年前、2072年、日本の全てが変わった。AIの大規模躍進によって、徐々に増えていた失業者が一気に上がり、とうとう日本という国家が破綻したのだ。


 今は少し安定しているが、それでも尚、この国は腐っている。上と下の埋まらない格差、増えていく孤児、そして、腐った警察共。


「だから、少し灸を据えてやろうかと思ってる」


 そう言うと、俺は右ポケットから赤いスイッチを取り出した。


 押そうとする俺の手を見ながら、ルナは「何を」と呟く。俺は答える間もなくそのスイッチを押した。


「何したんですか?」


 怪訝な目を向けながら問いかけるルナに、俺は顎で「見てみろ」とテレビを指した。


 その瞬間、報道陣のカメラが大きく揺れ、ブレる視界に悲鳴だけが聞こえる惨状が映し出された。


 キャスターが「どうしたんですか!?」と慌てた様子でアナウンサーに問うが、返事はなく、ただ地面に血と肉片、そして血に汚れた警官の服が写っているだけだった。


「こ、れは...」


 狼狽えるルナ。こいつもハデス出身だろうに、以外と狼狽えたりするんだな。


「半グレ共には口封じ兼、組織権力削減のための遠隔起動式爆弾を仕掛けておいた。もちろん、病院だけじゃねえ。他の場所で暴れてたやつも、捕まり次第爆発させてる。今頃警察署も大変なことになってるだろうよ」


「あ、悪魔ですか」


「お前らのお陰で悪魔になれたわ」


 そう言うと、ルナは黙った。


 さて、今の問題も山積みだが、次のことも考えないといけない。


「ところで、次はどうするんですか」


 ルナの問いかけに答えるように、俺は次からのことを説明した。すると、ルナは考える仕草をとった後に口を開いた。


「戦力は?」


「お前もいるし、俺もいるだろ。何より、()()()もこっちにいる。ただ、多ければ多い方がいい。クロウから送れないか」


「ランク3以下は送れますが、人数は限られます」


 その言葉に、疑問が浮かぶ。


「前も思ったが、お前らもう十分大規模組織だろ。なのに何故、兵隊送るのを渋るんだ」


「言えません」


 またこれか。


 まあただ今回は、俺も灑鳥も前々から予想がついている。


 朝霧大斗の殺害よりも、優先すべきことがあるんだろう。その「優先すべきこと」とやらに戦力の大部分を割いているから、木端しか送らねえし、何より俺たちなんかに依頼したんだろう。


 間宮は色々綺麗な理由を並べていたが、結局はどうせそういう理由だ。あくまで俺たちは駒。わかってる。


「......まあいい。それより、俺もダメージ受けちまったし、あの爺さんも何とかしねえといけねえ。時間は必要だな」


「まだ言うこと聞かないんですか?新倉重蔵さん」


「もう直ぐだ。あいつは俺たちの言うことを聞く。もう既に聞かざるを得なくなってんだからな」


 その後、俺たちは色々と今後のことを話し合った。


「では、ここからは手筈通りということで良いですね」


 そう言って去ろうとするルナ。こいつ、話を直ぐに終わらせようとしてるな。


 その背中を見て、俺は思わず「待て」呼び止めた。ルナは「何ですか?」と言いながら振り返る。


 ずっと疑問に思っていたことだ。聞こうかどうか少し迷ったが、呼び止めたからには聞かないのも不自然だろう。


「...お前らの目的は何だ?」


 こいつは答えるだろうか。いや、答えないだろう。さっきも朝霧大斗について言おうとしなかったし。


「答えられませんね」


 予想内の反応だ。しかし、ここで引くつもりはない。


「おかしいと思わねえか?依頼した側と実行する側、双方は平等じゃねえとダメだろ。なのに、お前らは俺たちのことを良く知ってて、俺たちは依頼主の素性の1つもわかんないんだぜ?」


「私たちはあなた達に依頼してるわけではありませんよ。一連の頼みは全て命令です。背けば死ぬのみ。だからあなた達は飲んだのでしょう?」


 確かに、依頼と言われたが、大義名分に過ぎないだろう。こいつらの性格上、断れば死ぬ依頼だ。それは命令に等しい。


「まあ確かにそうだけどよ。明らかに死んでるジョンを持ち帰らせたり、第六感が異常に強い謎の大学生を執拗に狙ってたり、絶対何か裏あるだろ。気になるじゃねえか」


 しつこく言及すると、ルナは「そうですね...」と言って少し髪を撫でた。


「......目的とか、そういうのはあまり深くは言えませんが...1つだけ教えます」


 そう言うと、ルナは口を耳元に近づけて囁いた。


「クロウは()()()()()()()です」


「生物研究?一体それは...」


「それ以上は言えませんが、私が着てるこの服は、その研究の成果によって作られたスーツですよ」


 ルナは少しだけ服を脱ぐと、その服の下にあるピチッとしたスーツを見せてきた。


「そもそもそのスーツの凄さを知らねえし、何より、それ作ったから何なんだ?」


「それは言えませんね。まあ、それ以上知る必要もないでしょう」


 ぶっきらぼうに言い放つと、ルナは「では」と言って出ていった。


 1人きりの部屋に静寂が立ち込める。俺は机の上のチェス駒をとって、電灯にかざした。


 あのボロい廃ビルからここまで来れたのは、クロウから貰った前報酬と、支給された戦力と権力によって奪い取った金のお陰だ。クロウは何も情報を寄越さない。俺たちには重要なことを隠し、捨て駒のように扱っている。負けて死んでも、少しは仕事してくれるだろう、そう思ってこの依頼をしたのだろう。利用しているんだ。


 しかし、お前らが俺を利用しているように、俺もお前らを利用している。


 決めたんだよ、あの日から、生きるためには何でも利用するってな。例え法を犯そうが、非人道的だろうが関係ねえ。


 全ては、生きるためだ。


「さ、第2フェーズと行こうじゃねえか」


 次なる戦いへ。


 ターゲットは、一之瀬組だ。








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