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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
58/80

第58話:空白の期間

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 他の傭兵どもには指示を出したが、シルバーの連中とは連絡がつかない。


「チッ、面倒なことになったな」


 同時多発的に事件を起こすことで、本命の病院襲撃に警察や機動隊が来るのを遅らせているのだろう。全く面倒だ。


 今優先すべきは朝霧大斗の防衛。そのためにそこら辺にいたゴミを2つ処理し、病室の前まで急ぐ。


 シルバーの奴らがこっちに来ていれば良いが、あまり期待はできない。


 そして、3階の曲がり角まで来たところで、後ろからの気配を察知した。


 長年死地を潜り抜けていれば、後ろにいるこいつが、どれほど強いのかどうかが肌でわかる。


 こいつは強い。そして、知っている。


「動くな」


 そいつは銃口を後頭部に突きつけた。


 手を挙げる。


「誰に銃口向けてるのか、わかっているのか?」


 振り返らずにそう言うと、後ろの男は「ああ」とだけ言って銃口を下に下ろした。


「ババア、久しぶりだな」


 振り返ると、やはり見知った男がそこにいた。


 剃り込みのある頭に、ガタイのいい体。そして右肩にあるタトゥー。


 元ベルフィールド傭兵団員にして、あたしの息子。


 天宮阿修羅。


「阿修羅、お前、あたしの前に出てきて、尚且つ銃口を突きつけるとは、どういうことをしているのかわかってるんだろうな?」


「ババアを足止めするためだ。殺したくはないから、どっかへ行くんだな」


「おいクソガキ、舐めた口聞いてるんじゃねえぞ」


「あ?死に損ないのクソババア相手に、口の聞き方なんて考えるわけねえだろうが」


「教育がなって無いな。あたしが再教育してやろう」


「育てたのはテメエだろうがクソババア」


「育ててくれた感謝もねえのか、ガキ。勝手に抜けて半グレかき集めたかと思えば、挙げ句の果てにゴミ集団の仲間入りしてるとは、全く親不孝もいいところだ」


「感謝はしてるぜ。強くしてくれてありがとうな」


 そう言うと奴は、銃を下に落として、代わりに拳を前に突き出した。


「舐めてるのか?何故武器を使わない」


 問うと、阿修羅は笑いながら口を開いた。


「老人相手にそこまでする訳ねえだろ」


 クソガキが...。


 だが、こいつは絶対に戦争で妥協するような男ではない。一緒に戦ってきて、それをあたしは知っている。そしてあたしも妥協しないということを、こいつは知っている。


 こいつがあたし相手にこんな舐めたことをするわけがない。恐らく、何か考えがある。


「お前をぶち殺す前に、1つ聞いても良いか」


「あ?」


「お前、何で傭兵団抜けた?そして何でこんな組織に入った?」


 阿修羅はあたしの問いを受けて、少しばかり逡巡をした。


「簡単だ。ババアの傭兵団じゃ退屈なんだ。お前の傭兵団抜けて、半グレをまとめて悪さをしたのはそれが理由だな。んで、後者は......あいつらに勝てねえと察したから屈した。それだけだ」


 思わず「はあ?」と言いたくなった。


 こいつはバカで言うこと聞かない、ゴミみたいな野郎だが、こんな腰抜けではないし、簡単に屈するような男じゃない。それに、情に厚く、仲間を大切に想っているところがあった。


 おかしい。絶対に裏があるな。


「まあなんでも良いだろ。とっとと始めようぜ」


 そう言うと直ぐに突っ込んできやがった。


「あたしとタイマン張るには、万年早いんだよ」


 対応するように拳を出す。


 そしてそのまま殴り合いにもつれ込んだ。互いに強さは互角と言ったところ。そのせいか、どちらも明確なダメージを与えられない。


 数十発と打ち合いをしていれば、自然と時間も削れていく。


 これだけで結構時間食っちまう。


「動き、鈍ってんじゃねえか?」


「お前もぬるくなったな、阿修羅」


 互いの拳を、時には蹴りを繰り出す。互角の戦いが繰り広げられる。


「ババア、本気でこいよ」


「お前が本気で来るならいいぞ」


 挑発すると「チッ」と舌打ちをしてそのまま殴り合いを続行した。


 これでもうわかった。こいつはあたしを殺す気はない。そして、これまでの言動も、敵組織に入ったことも、説明する気はない。


 あたしは他の連中と違って、こいつのことをよくわかっている。隠しているのは、それなりに隠す理由があるからだ。


 全く、こんな奴ばかりで面倒くさい。


「死ねババア!!!」


 鋭い一閃が飛んでくる。


 あたしはそれを腕でガードするも、後ろまで吹き飛んでしまった。


 流石に老いたな。そしてこいつは前より強くなっている。


 こいつを気絶させて連れ帰るのは至難の業だ。


「老いには勝てねえようだな」


「ほざけ。若さを理由に驕るんじゃねえよ」


「じゃあ、こっちの技について来いよ...!」


 追撃するように連撃が飛んでくる。


 傭兵時代に培った技と、あたしが知らない間に鍛え上げられた技が組み合わさり、複雑な攻撃が繰り出される。一言で言えば、トリッキーだ。


 あたしの知らない阿修羅だ。壮年の体で対応するのは、少しばかり難しい。


 しかしあくまで、少しばかり、だ。


「舐めるなクソガキ」


「なっ!?」


 あたしが瞬時に対応したことにより、阿修羅は驚きの表情を見せる。


 こんなことで驚いてるようじゃあ、まだまだ三流だな。


「あたしがお前を知らない空白の期間があるように、お前にもあたしを知らない空白の期間が存在するんだよ。お前だけじゃない、あたしもその間に成長してんだ。わかったか」


「クソが...!」


 そういうところだ、阿修羅。


 戦闘中は如何なる不測にも対応できるように、常に冷静に、余裕を持って動かないといけない。前々からこいつはそこを欠いている。


「ババア」


 瞬間、阿修羅の瞳の色が変わった。


「説教垂れてんじゃねえぞ」


「!」


 下からのアッパーが飛んでくる。


 それを間一髪で避けると、奴は不敵な笑みを浮かべた。


「もう一丁!!!」


 間一髪で避けたせいで、2発目の攻撃が避けられない。


 あたしはそれを、腹に受けてしまった。


「グアッ」


 またも体が大きく後退し、壁に激突した。


 凄まじい威力だ。ジョンとかいう男よりも格段に強い。流石元傭兵と言ったところだな。訓練の成果は伊達ではない。


「くっ」


 ただ、それだけじゃないだろう。


 今の一撃は、傭兵人生だけじゃ培われなかったモノだ。恐らく、その後の、あたしが知らない間に培われたモノ。


 そして、先の変化。前とは違って、冷静になる速度が速い。感情のコントロールが上達している。


 想像以上に成長したな、こいつ。


「おいおい、大丈夫かよババア」


 阿修羅が嘲笑の笑みを浮かべながら歩いてきた。


「まだ戦えるか?いや、戦わなくていいぞ?」


 煽っているのか、性格の悪いやつだ。


「まだに決まってんだろ。あんなぬるい攻撃で戦意喪失するくらいなら、もう既に死んでる」


「そうかよ」


 つまらなさそうにそう吐き捨てると、あたしに手を差し伸べた。


 こういう精神は、やはり忘れてはいないようだな。


 あたしはその手を掴む。


「は?」


 そしてそのまま引っ張って、頭突きをお見舞いしてやった。


「クソババア!!!」


 額から血を流しながら、頭を抱えて激昂する。


「そんなんでキレてるようじゃまだまだだ。少し感心したが、間違いだったな」


「汚ねえぞテメエ!!!」


 痛みを我慢しながら、怒りに身を任せて殴りかかってきた。


 脳震盪起こしてるな。フラフラじゃないか。


 こんな奴の対処、簡単に決まってる。


「お前は一回頭冷やせ」


 そう言うと、向かってきた阿修羅に脚をかけて背中を押し、転倒させた。


 すると、対処できずにすっ転ぶ。


 そして仰向けにし、馬乗りになって一発顔面にパンチを当てる。


「クソ...ババ...ア...」


 その言葉を最後に、気絶した。


 全くもって世話の焼けるクソガキだ。こいつも後々になんとかしないといけないが、今の問題は朝霧大斗。


 しかし時間を使い過ぎた。もうそろそろ機動隊やらなんやらが来る頃合いだろう。


「クソ面倒くさい...!」


 それでも行かない理由にはならない。大人として、そしてあいつらの元指導係として、あたしはあたしを貫かねばならない。


 そしてあたしは、痛む腹を抑えながら、3階へと登って行った。




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