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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
54/80

第54話:虚虚実実

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 美月とサンドラさん以外は皆、待合室に集まっていた。その後の一之瀬組の顛末と、その他外界の情報を知るためだ。2人は、大斗の居る3階を巡回している。


「いったぁ...」


 胸をさする。


 あれから1週間くらい傷は痛んだ。実との戦いで受けた傷はあまり深くなく、後に引きずるようなものではなかった。

しかし、折れた肋骨にまたヒビが入ってしまったらしい。


 更には、こっぴどく怒られた。当たり前の話だ。


 結果的に私がやったことは美月には伝わっていない。ただ、他のみんなには伝わった。GPSの存在もちゃんと話した。


 当然責められた。これも当たり前の話だ。


 それからGPSを使って何とか対応しようという話になったが、あの夜の後、GPSの反応は無くなった。概ね気づかれたんだと思う。


 その後は2人が退院した。しかし、以前として大斗は起きないし、同じ病院に入院している火花も起きない。


 まだ護衛はする必要があった。


 そして、今に至る。


 未だに私と美月との間に確執は存在しており、想いも互いに変わっていない。


 そんな時だった。


 ニュースで速報が流れた。


「お、おい、これ」


 裕樹が待合室にあるテレビを指した。


 そこに私と日暮は目を合わせる。


 そこには俯瞰から見た爆発の現場が映されていた。これは富岡町だ。


 そして、続け様に富岡町、新古町で爆発事件が起きたと報道がされていた。


「これって...」


「連続爆破テロ...。同時多発的に行われている」


 そしてその瞬間、入り口から何人もの人が流れ込んできた。


 その中には、見覚えのある人物がいた。


「う、嘘...」


 戦慄の声が漏れる。


 その瞬間、大きな音が聞こえた。


「まずい」


 日暮は焦った様子でそう言った。


 銃声だ。中に入ってきた20人以上いる人物の誰かが、実弾を放った。


 何が起きたのか理解した誰かが悲鳴をあげる。それに輪唱するかのように、悲鳴が辺り一帯に響き渡った。


 逃げ惑う人々の波が襲いかかる。


「朝霧大斗を引き渡してもらいます。要求を飲まなければ、ここにいる全員を皆殺しにします」


 前に出てそう言ったのは、見覚えのある女だった。


 五十嵐...!


 五十嵐だけじゃない。奴らの中には、見覚えのある人間もいた。後は、半分が半グレで、半分が正規のメンバーだろう。そして、その見覚えのある人物の中には、実もいる。


「あら、美月さんは居ないのですね」


 そう言うと、微笑みながら、五十嵐は一歩一歩と距離を縮める。


「お前...!大斗は渡さない!」


 日暮が前に出て、怒声を上げた。


「良いんですか?今回は私たちもキチンと戦力を整えて来ました。さっき言ったことは冗談じゃないんですよ?」


「だとしても...!」


「そうですか、では」


 パンと大きな音が鳴った瞬間、弾丸が後ろへ飛んでいった。そしてそれは、1人の女の人に当たった。


「だ、大丈夫ですか!?」


 裕樹が駆け寄る。


 胸から血を流してる。当たりどころが悪い。いや、違う。わざと狙ったんだ。


「五十嵐ッ!!!」


 日暮も即座に銃を撃ち返すが、五十嵐はそれをやすやすとかわした。


「あなたの銃弾は素直でわかりやすいですね。で、今ので分かったと思いますが、私たちは市民を平気で殺傷します。朝霧大斗を渡さないということは、市民が何人も死ぬということ。わかりますね?」


 近くで怯えるナースに目線を送った。怯え切っている。


「院長さんに伝えといて下さいね」


 それを聞いたナースは怯えたまま何処かへ去った。


 どこまで鬼畜なのか。市民を平気で人質に取るなんて...!


「そういうわけなので、あなた達も何処かへ去ってもらえれば良いのですが」


「通さない!!!」


「はあ、では仕方ないですね」


 五十嵐が手を上げる。それと同時に、20人中、10人もの人間が一斉に銃口をこちらに向けた。


「やっばい伏せて!!!!!!」


 その声と被るように、銃弾の嵐が降り注いだ。


 あれは、マシンガンだ。


 幸いソファがあったため何とかなった。しかし、前に出ることは愚か、顔を出すことすらできない。


 更に、撃っていない10人は、横の階段から別々のルートを行っている。まずい。先に行かれた。


 でも、別々のルートということは、大斗の病室がわかっていないということだ。時間はあるか...?


 もどかしい。今すぐにでもあいつらを撃ちたい...!


「どうする!?このままじゃ死ぬだけだぞ!」


「一斉に撃ち始めたから、弾切れも同時に起きる。その瞬間に下がろう」


 日暮はそう言うと、じっとソファで待った。


 そして、弾幕が切れた。


「後ろ!早く下がって!!!大斗のとこ行って!!!」


 弾幕の切間を利用して、廊下まで走ろうと姿を出した。その時。


「わかってますよ」


 不気味な声と同時に、数発の弾丸が襲ってきた。


 まずい。読まれてた。このままじゃ当たる...!

 そう思っていたが、銃弾は私たちの元へ来なかった。


 日暮がソファを蹴り上げて防いだのだ。


「おっと、あなたも中々神に愛されているようで。やはり、あなたたちは侮れないですね」


「お前だけは行かせない...!」


「わかりました。と言いたいところですが、ここであなたと戦っても意味がないので」


 そう言うと、後ろから見覚えのない、仮面を被った女が出てきた。


「この方が相手をしてくれます。さ、私たちは朝霧大斗を探しますよ。邪魔になる方は全員始末しても良いです。民間人もやっちゃってください」


 その言葉に応じるように、五十嵐たちは先に先にとバラけていく。そのうちの何人かは、私たちの方へ来ていた。遠かったこともあり、素性や人数ははっきりとわからない。


「待て!!!」


 日暮が銃を構え、銃口を五十嵐に合わせる。


 しかし、その銃弾は、何かによって防がれた。


「させないから」


 仮面の女だ。なんと、日暮が撃った数発を、全部そのナイフで防いだのだ。


 その離れ業を最後に、見えなくなった。


 こっちの後ろには奴らがいる。早くしないとまずい。


「くそ!どうする!?」


 走りながら、裕樹が焦った声を出す。


 状況は良くない。しかし、相手は大斗がいる病室を把握していない様子だ。なら、まだ出来ることはあるはずだ。


「大斗の病室まで先回りするっていうのは?」


 提案すると、思考の時間に入る。


「相手は大斗の場所が分かってない。だからこそ、今の状況はまだ良い方だ。俺たちの背後には追ってきてる奴がいる。多分、強い奴もいるだろ。直で行っちまうと、そこにいるっていうのを知らせることになっちまう」


「じゃあどうすれば...」


 またも思考の時間に入ろうとしたところ、裕樹が口を開いた。


「大斗の病室には、追手を撒いてから行く」


「奇襲で返り討ちにするのは...?」


「追手以外に、先に探し始めてる奴らもいる。奇襲タイミングを待ってる間に、そいつらに襲われたら死ぬ。それに、奇襲どうこうでどうにかなる相手が追ってきてるとは思えねえ」


 そう言うと、裕樹は銃を握りしめた。その手は震えている。


「今の要は俺たちだ。警察が来るまでの間、持ち堪えねえとな...でも、民間人は...」


 尚も拳が震えている。


 違う、裕樹。それは違う。


「救える人は救う。それがシルバーでしょ?」


 私はそう言うと、銃を構えて、曲がり角に手をついた。


 曲がり角の向こうには、血塗れの床の上で怯える親子と、拳銃を構える男がいた。服装から、多分正規の構成員だ。


 シルバーはクロウの被害に遭った人たちを救う組織。このテロも例外じゃない。


 いくら大斗を守るとはいえ、それを蔑ろに出来るはずがない。まずは、目の前にいる人たちからだ...!


「早く助けないと...!」


 私は飛び出て、背後から迅速にその構成員の喉元を切った。


「怪我はありませんか?」


「あ、あああありがとうございます...で、でもその...」


「まずは」


 安全な場所を考える。正直、安全と言える場所は無い。出口みも居るだろうし、非常口もマークされてるだろう。出るためには、その危険性を加味しなければならない。


 つまり、民間人を安全に出口まで避難させるためには、この中の誰かが避難誘導に徹しなければならないということ。それは、戦力外になるということでもある。


「裕樹が案内して」


「で、でも、俺が離れたら...」


「誰か1人が民間人を守る必要がある。それも大事な役割。わかってるでしょ?」


「ああ、それは十分わかってる」


「裕樹の実力と状況判断能力があれば、大勢の民間人を助けることができる。だから」


「だからって...これ以上役に立てないのは、俺自身が許せねえよ...!」


 悔しさの混じった声を吐露する。それに対して、私は一つ息を吐き、裕樹の肩に手を置いた。


「リーダーいないから私が言うけど、これは任務だから。民間人を守るのは任務。裕樹が敵役で、裕樹にしか任せられない。ここにいる大勢の民間人を、その手で掴める分だけで良いから、救って見せて。これは大役だよ」


 私の顔は、どうなっていただろうか。優しくしたつもりだけど、仏頂面だったかもしれない。


「...わかった。後は任せる。終わったらすぐに戻るから、待ってろ」


 そう言うと、裕樹は親子を連れて何処かへ行った。


 さて、ここからが課題だ。


 大斗の入る3階には、サンドラさんと美月がいる。この騒動のことは、さっき走るついでの連絡をしておいたため、わかっているだろう。恐らく、大斗の元へ行っているはずだ。


 間に合っているかわからない。相手はバラバラに動いていた。エレベーターを使われたら、美月たちの立ち位置にもよるが、間に合わない可能性がある。


 いや、可能性の話は考えるな。信じよう。信頼することが、一番大事だ。


 行こう。大斗を守りに。


「行こ...」


 その瞬間、背筋が凍るような感覚が体を襲った。


「死ねやあああ!!!」


 後だ。後ろにいる。まずい、頭下げないと...!


「ッ!!!」


 何とか反応して病室前のソファに身を託した。その瞬間、後ろから凄まじい弾幕が飛んできた。


 相手は1人。


 弾切れ。行ける。


「さようなら」


「ガハッ」


 銃弾が頭にめり込む。


 危なかった。10人くらいいた半グレだったからまだ良かった。構成員や、他の主要戦力、半グレでも複数人いたら死んでた。


 そうだ。相手はマシンガンを所持している。迂闊に動いたら死ぬ。慎重に行動して、敵がいたとしたら、撃たれる前に殺さないとダメだ。


 神経を研ぎ澄ませ...!


「!?」


 そして再び進もうとした瞬間、1発の銃弾が頭を掠めた。


 ソファの影から見る。


 姿を見た瞬間、息を呑んでしまった。


 赤みがかったショートヘアは、ボサボサのミディアムヘアになっており、元気そうな瞳は、既に生気はない。しかし、どれだけ変貌しても見覚えのある姿。


 私はそっと、確かめるように呟いた。


「実」
























*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。


虚虚実実とは、全て使って戦うことです。

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