第50話:仲間割れ
*不定期更新です。基本13時に更新してます。
「ここ...は...」
目を覚ますと、病室のベッドに眠っていた。
日付けを確認すると、昨日から1日経っていた。
「あ、起きた?」
隣に目をやると、そこには美月が座っている。
どこか様子がおかしい気がする。
「あの後、どうなったの?」
私が問いかけると、美月は起きたことを全て話した。
敵の情報や、こっちの情報を知るうちに、顔面が青ざめていく。
「大斗が...」
「うん、植物状態だって。でも、目を覚ます可能性はゼロじゃないって言ってたから、まだ、希望は捨てちゃダメだよ」
「そう、だね」
大斗はあの後、植物状態になったらしい。私が実に勝てていたら、説得出来ていたら...。
「ごめん...」
「仕方ないことだから、謝ることじゃないよ」
そうは言っているけど、私にも責任の一端があることは事実だ。私の実力不足が招いたことでもある。
後悔は当然あるに決まっている。
「連中は多分、今を好機だと思って何かしらの方法で大斗くんを暗殺しに来ると思う。だから、これからは大斗くんを優先的に護衛するよ。もちろん、キミもね」
実はあの時、もう既にボロボロだった大斗にトドメを刺そうとしていた。それ程までに、確実性を重要視しているのだ。恐らく、微塵でも生きている可能性があれば、執拗に殺しに来るだろう。
わかってる。私だって大斗を護りたい。今は防衛にしかまわれない以上、こうやって守る必要があることは、十分理解できている。
...けど、それだと実はどうなるの?
「...実は?」
問いかけると、美月は俯いた。
「実は...一之瀬組のみんながなんとかしてくれるよ」
フワッとした言い方だ。美月はいつもこんな感じだけど、重要な時に曖昧な表現はあまりしない。ハッキリ言うタイプだ。
十中八九、嘘を吐いて誤魔化しているのだろう。
理由は想像できる。私を抑制するため。
正直、不快だ。今の美月は、頼りなくて、どこか弱々しい。こんな嘘まで吐いて、はぐらかすのもらしくない。
...見たくない。
「...わかった」
「だ、大斗くんの防衛体制が整ったら、実はちゃんと...」
「はぁ」
思わず溜息を吐くと、美月の体が反応するように少し跳ねた。
「...ごめん。なんか変なこと言った...?」
そしてこう言い放った。
「誤魔化さないで」
「......誤魔化して、ないよ」
「誤魔化してるよ。私を懐柔させようとしてるのが見え見え」
「誤魔化してないってば...!」
その時、私の中の糸が切れた。
「どうして嘘吐くの!?バレないと思った!?嘘吐いて誤魔化して、私を実の元へ行かせないようにしてるんでしょ!!!」
「だから嘘なんて」
「ふざけないで!!!!!」
しばしの静寂が訪れる。
「ふざけてなんかない」
美月はそう言うと、静かに立ち上がった。
「実の元に行かせたくない!今は大斗くんのことに専念してほしい!私が正直に話せば、虚は実のことばっか考えて、挙句、実を救出する流れになっちゃうでしょ!!!」
そう言い放つ姿は、私には頼り無くて情け無い、ただのエゴイストにしか見えなかった。
「やっぱりそうだ...!なんで?どうして?前は実のこと守るって言ってた!!!そんなのおかしい!!!」
「おかしくないよ!優先順位は大斗くんの方が上!そんなの、わかってることでしょ!?現に、虚以外のみんなは了承した!!!」
「おかしいよ!そんなの、美月のやり方じゃない!!!シルバーのやり方じゃない!!!」
「虚の友達だからでしょ!?だから虚はそんなに必死になって実を助けたいんでしょ!?みんな、私の話に乗ってくれたって言ったじゃん!!!これが一番なんだよ!!!これしか無いんだよ!!!この戦力差で同時に救うなんて出来ないんだよ!!!現実をもっと見てよ!!!」
「違う!!!実じゃなくても、誰かを見捨てるようなこのやり方はおかしい!!!もっと別の方法があるはず!!!」
「見捨てるなんて言ってないじゃん!!!落ち着いたらって言ってるじゃん!!!」
「言ってるようなものだよ!!!実は今でも苦しんでるのに...!」
「知ったことかよ!!!!!!!」
その声は、今までで1番...響いた。
「なに、それ」
ただただ呆然と、その言葉が漏れる。
私の声を聞いた美月は、自分が何を言ったのか理解したのか「あ」と声を漏らした。
「ち、ちが、そんなこと、言いたかったわけじゃ...」
必死に取り繕ってるけど、無駄だ。
これが、美月の本性だ。大斗が大事で、実は二の次。そうじゃないんだ。大斗が大事、そして、実はどうでもいい。むしろ助けたくない。そう考えているんだ。
優先順位なんてこと言っているけど、そんなの表面上で、本心としては、ただ実の元へ行かせたくないだけ。自分の思い通りにさせたいだけ。
本当に、この人は...。
堕ちた。
「...わかった。もういいよ。もう、出て行って」
「うつ、ろ...?」
「お願い、出て行って。顔も見たくない」
「ごめん、虚」
「出て行ってって、聞こえなかった?」
「...わかった」
そう言うと、美月は背中を向けて出口まで歩いて行った。
その後ろ姿は、前の美月とはかけ離れた、弱々しいものだった。
「失望したよ」
出る際に、そんな言葉が漏れる。
美月は少し止まった後、ドアに手をかけ、ゆっくりと出ていった。
再び、静かな時間が始まる。
今の美月はおかしい。頼りにならない。信頼できない。みんなもそうだ。今の美月が言った言葉に従ってしまったのだ。
1人じゃできないのはわかってる。でも、1人でやらないといけない。
やるためには実の位置を把握しておかなければいけない。
実の位置は、わかっている。
抱きしめた時、GPSをつけておいていたのだ。本来なら、仲間と共有すべきだけど、今は出来ないししたくない。
「実...」
スマホの画面を見ると、新古町に程近い、富岡町の雑居ビルに信号があった。つまり、ここにいるということだ。
実、待ってて。
「直ぐ助けに行くから...!」
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