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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
46/80

第46話:それでも

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

「虚...!」


「実...!」


 拮抗した状態のまま、互いの目線が交差する。


 最悪な事態だ。信じたくなかった。でも、状況から察して信じるしかない。


 しかし、意外にも頭の中は冷静だった。もっと困惑して焦ると思っていた。


 とにかくこの状況をなんとかしないといけないという感情が、逆に冷静さを生んだのかもしれない。


「どう、して、ここに...?」


「仲間を助けるために来た」


 真っ直ぐと見つめて告げる虚を見て、実は視線を落とした。


「何で裏切ったの?」


 問うが、実は口をつぐんで答えようとしない。


「全て嘘だったの?全部あなたの計画?」


「それはっ...!」


 反応からして違うらしい。


 ならば何故言わないのか。以前、盗聴されている可能性があると言っていた気がする。下手なことを言うと、自分の立場が危うくなってしまうから、言わないのかもしれない。


「...わかった。じゃあ今でも実は私たちの元へ戻る気は無い?」


「...ごめん」


「そっか」


 私はそう言うと、掴んでいた手を離した。


「私、は」


 震えた声が聞こえる。


「私は、戻れない。私のために。お父さんのために。だから、ごめん」


 お父さんの...?発言からして、心から裏切った訳じゃなさそうだ。


「理由は言えない?」


「...言えない」


「じゃあ、大斗はまだ殺すつもり?」


 その問いかけに対して、実は下を向いたまま暫く答えなかった。


 そして、意を決したように顔を上げ、口を開いた。


「私のために、大斗には死んでもらう」


「...わかった」


 そう言った瞬間、私は再び銃弾を放った。


「ぐっ!?」


 2発が左右の太腿に直撃する。


「大斗を早く病院に送らないといけない。だから、卑怯とか無し」


「...そうだね虚。久しぶりだったから、そういうの忘れてたよ」


 ふらふらと立ち上がる実に、照準を合わせる。恐らく、あの状態ならまともに動けない。しかし、もしかしたらまだ動けるかもしれない。殺さなくていい。あくまで無力化を考える。


 なら、銃はダメだ。首を絞めて意識を落とすか。


 そう思い、銃をしまう。そして再び目線を上げたとき。


「え」


 目の前にいなかった。


「ごめんね」


「!?」


 なんとか避けることができたが、頬が切れてしまった。


 いつの間にこんな近くに...!


「虚を殺したくないよ。だから、大斗はもう諦めて...!」


「嫌だ!私は仲間を見捨てない!」


 銃を構える。しかし、一瞬にして距離を詰められてしまい、撃てない。


「嘘...」


 早い。早すぎる。目で追えないという次元ではない。この強さは、火花に匹敵するほどかもしれない。


 実は悲壮な表情を浮かべながら、あらゆるところを切り裂いた。


「わかったでしょ?もうやめて」


「見捨てることはできない!」


「虚も死んじゃうよ?」


「それでも...!」


 瞬間、私のナイフが実のナイフの動きを止めた。


「それでも、私は見捨てない!だから...」


 パキンという音と共に、私のナイフが宙へ撥ねた。


「......っ!」


 再びナイフの連撃が始まる。避けようとするも、それを読まれて避けられない。弾こうにも、手元にナイフがない。


 全身が切り刻まれ、顔面に血がまとわりつく。圧倒的な実力差がそこにあった。


 それでも退かない。


「どうして...?」


 連撃が収まり、実の声が震える。


「実が本気のように、私だって本気なんだよ。だから、大斗を助けるために、退かない」


「私だって退けないっっっ!!!」


 慟哭が響き、実の凶刃が襲い掛かる。


 私はそれを避けなかった。


「何で...」


 避けずにただ、抱きしめた。


 実の震える体を強く抱きしめる。刃は肩を深く切り裂いているが、そんなことはどうでもいい。


 私は実のことを知らない。昔も今も、それは変わらない。ただ、1つわかっていることがある。


 実は言動からして、裏切りたくて裏切ったわけじゃない。


 大斗を撃つときだって、躊躇っていた。私と戦っていた時も、こんなに実力差があるのに、決定打となる攻撃はしてこなかった。現に今も、血塗れではあるが、意識は明瞭に保たれている。最後の攻撃も、本意じゃないと思う。私が避けるだろうと思っていたから、予想外の深傷に対して動揺しているのだろう。


 今だって、こんなに隙があるのに、私を攻撃しようとしていない。


 実は恐らく、羽に何らかの条件を出された。その条件が私たちを裏切るに足るほど、魅力的なものであったため、苦渋の決断で裏切った。そう考えられる。


 希望的かもしれない。でも、私はそう思う。そう思いたい。ただの勘だ。希望論だ。でも、信じる。


 そして、私にはその魅力的な条件の見当がついている。


 私たちを裏切るほどに、欲しかったもの。それは。


「『自由』だよね?」


 瞬間、実の体がピクリと跳ね上がった。


「さっき、自分のためだけじゃなく、お父さんのためとも言っていた。健太郎さんは自由を望んで、実と2人で山奥に住むことを決めていた。でも、それは叶わなかった。そして、亡くなる前に、あなたにその意思を託した。ずっとクロウに追われていたあなたが欲していた『自由』を。そして...」


「......そして私は羽から条件を出された」


 覚悟がついたのか、実は私の体を離すと、淡々と喋り出した。盗聴されているなら、危険が伴う行為だ。でも、堰を切ったかのように、言葉が流れ出していた。


 

 












*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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