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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
44/80

第44話:伝説の女傭兵

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 暗い路地に、12人の武装した集団が対立している。


 一方は柄の悪そうな男たちと、1人の女。

 一方は綺麗で動きやすい制服を着た男たちと、その集団にそぐわない大柄な男。


 間に流れる空気は、異質なものだった。


 女がタバコに火をつけ、煙を吐く。


「今退くなら、殺さずにしといてやる。退かないのなら、お前らを殺す」


 女の目は、嘘を吐いていなかった。冷徹で、見るものの心を読んでいるかのような眼光。


 それに対して、大柄な男は笑いながら答えた。


「戦争しに来たのに引くわけねえじゃねえか!それに、こんな強そうな奴がいるなら、尚更引けないな!」


「そうか。愚か者はいつも死に急ぐ...」


 女がリボルバーを取り出す。


 応じるように、大柄の男もサバイバルナイフを取り出した。


「お前ら手を出すなよ?代わりにあの5人と遊んどけ...」


 そう言った後に、首を捻って音を鳴らした。


「俺はジョンだ!名前は?」


「サンドラだ」


 ジョンと言った男は、名前を聞くと、今度は頭を捻った。


「サンドラ...サンドラか!知ってるぞ!アメリカで有名な伝説の女傭兵じゃねえか!ベルフィールド傭兵団の!」


 やたらとテンションが高いジョンを、尚も冷ややかな視線で見つめるサンドラ。


「私を知ってて尚退かないのは何故だ。正真正銘のバカか?それともどんなことをしたかまでは知らないのか?」


「知ってるぞ!最強最悪の傭兵団の総隊長を勤め、幾千もの戦地に出向き、深い傷を何度も負っては何百人を屠り、結果必ず生還する不死身の女。戦争において、サンドラがどっちに着くかが勝敗を分けるとまで言われてる程の実力者だろ!噂はよく聞いている!」


「なんだ、知ってるのか。じゃあ正真正銘の脳筋野郎ってことだな」


「お、否定しないんだな。ってことは世にある噂は本当ってことか?」


 問いを受けたサンドラは、タバコを落として踏んだ。


3()()()()()


 それを瞬間、ジョンの口角が大きく弓形に曲がった。


「最高だ!ツイてるぜ!お前ら!何があってもマジで邪魔すんじゃねえぞ!邪魔したら殺す!」


 獣のような大きな声が路地に響き、サンドラは呆れた顔でため息を吐いた。


「始めようサンドラ!」


 先手を打ったのはジョンだ。ガードの姿勢を維持し続けた状態で、突っ込んできた。両手には棘の付いたメリケンサックが握られている。


「ハッハッハ!伝説の女傭兵よ!ついてこれるかあああ!!!」


 サンドラがリボルバーを撃つよりも早くに、攻撃が飛んでくる。


「チッ、めんどくさい」


 そう言いながらも、サンドラは避け続けた。


「顔色一つ変えないなあ!」


「ヌルいんだよ」


「じゃあこれはどう...だっ!」


 右ストレートが飛んでくる。それを避ける体勢に入った瞬間、右腕が引っ込んだ。


 フェイントか。


 早い。しかし、フェイントとわかってしまえば、避けるのは造作もない。


「おおっ!?」


 ジョンは驚いたリアクションを過剰にとると、スッと後ろへ飛んだ。


 なるほど。攻撃を読まれたか。ただのバカじゃなさそうだ。


 しかし、距離さえ取ればこっちのもの。


 サンドラはリボルバーを向け、装填数分を撃った。


 ジョンは手元にあった電飾の看板を持ち上げ盾にする。が、2発が腕に当たった。しかし、痛がる様子も退く気も無さそうだ。むしろ笑っている。


「ハッハッハ!痛みを感じるのは久しぶりだ!」


「クソバカが...」


「撃ち切っただろ!今度はこっちの番だ!」


 また距離を詰めてくる。

 しかも、速度がさっきよりも格段に増している。


「今度は避けられるか!!!」


 更に、足技まで入れてくる。


 しかし、どれもサンドラには当たらない。当たることはおろか、掠りもしないし、危ないと思わせることもない。


 サンドラは冷静に、そして冷徹に攻撃を避け続け、反撃のタイミングを見計らっていた。


 そんな中、サンドラは再びタバコを取り出し、火をつける。その工程までの隙も、攻撃が当たらない。


「それは!流石に舐めすぎだ!!!」


 強烈なキックが顔面に飛ぶが、避ける。ストレートもフックもフェイントも。後ろに回ろうが、正面から攻撃しようが虚を突こうとしようが、何もかも効かない。


 まるで、その冷めた瞳が、物事の全てを把握しきっているようだった。


 段々とジョンの顔に、焦りと苛立ちが浮かび上がってきた。


 そしてその感情は、判断を鈍らせ、攻撃の多様性を失わせる。


 サンドラの術中にハマっていた。


「ラアアアアア!!!」


 強烈なストレートが飛ぶ。食らったらお終いだろうが、当たるわけがない。


 サンドラはそれをしゃがんで避ける。すると、追撃しに、今度は上からパンチが降ってきた。


 そこで、サンドラはタバコを口から離した。


 そして。


「何ッ!?」


 煙を顔面に吹きかけたのだ。


 たちまち煙によって視界を遮られ、ジョンは困惑したままあらぬ方向へパンチを打ってしまう。


 サンドラは当然の如くそれを避けると、今度はこっちの番だと言わんばかりの連撃を浴びせた。


 言葉も手も足も出ないまま、攻撃によって後退させられていく。


 その攻撃は、とても老いた女から出るものとは思えないほど火力が高く、早く、そして洗練されていた。


「アアアアアアアアア!!!」


 ジョンが叫びと共にノーガードでストレートを打つ。


 サンドラはそれを悠々としゃがんでかわす。


「は!?」


 そして気づいたら、いるはずの場所にサンドラはいなかった。


 ジョンは、刹那のうちに至る所に目を見張る。そしてようやく見つけた時には、ガード不能な程近くにいた。


 空中だ。


 サンドラは、ジョンの巨体故の腕の大きさから、ストレートを打ったときに死角が生じることを見切り、それを利用したのだ。


「...!」


 そして、空中での後ろ回し蹴りが炸裂する。それは顔面に当たり、ジョンの体が大きく吹っ飛んだ。壁にめり込む勢いだ。


「ガハッッッ!!!」


 吹き飛んで壁に直撃したジョンに、サンドラが近づく。


「い、良い蹴りだ...!」


「生きてたか。珍しい」


 その言葉を受け、ジョンは笑った後に周りを見渡した。

 そこには、味方に付けていた5人が全員伏していた。


「ハハ...サンドラだけじゃなく、周りも強いのか...!流石、最強の傭兵団は伊達じゃない...な...」


「ベルフィールド傭兵団を敵に回したのが運の尽きだ。残念だったな」


「残念?そんなわけあるかよ!光栄だよ」


「...脳筋が」


 そう言って、リボルバーに弾を詰め、銃口を突きつける。


「あー、タバコ1本、貰って良いか」


「ダメだ。これはあたしの大事なタバコだ」


「そう固いこと言うなよ。良いこと教えてやるからさ」


「貴様から教わる良いことなんて無い」


「間宮と天宮。知ってるぜ?元々あんたの傭兵団出身なんだろ?」


 その言葉を聞いた瞬間、サンドラの顔が険しくなった。


 そして舌打ちをしたのち、タバコの箱から1本抜くと、投げ捨てた。


「火も良いか」


「チッ」


 火をつける。すると満足したのか、大人しく口を開いた。


「間宮は行方知らずだったが、先日復帰した。復帰って言っても全然戦える状態じゃないがね...。で、復帰後、元々は五十嵐ちゃんの元に着いていたが、野上の方に移ったんだよ。だからまあ、間宮をとっちめたいなら、野上を追うと良い。見つけられればの話だがな」


「潜伏場所を言え」


 再び銃口を突きつける。


 ジョンはヘラヘラと笑いながら、銃口に手を当てた。


「ハハ、いずれ会うさ。戦い続けてればな」


 サンドラは舌打ちをして銃を下げた。


「賢明な判断だ。ここで殺したら天宮のことを知らないままになるからな」


「安心しろ。言った後に殺す」


 ジョンは尚もヘラヘラとした笑みを浮かべていた。


「天宮阿修羅。サンドラたちはそいつを探してるんだろ?あいつは俺たちの組織に加わった。正直入った理由とかはわからないが、まあ、やる気はありそうな感じだな。やる気があるってことは、こいつも間宮と同じように、追っていればいずれかちあうだろうよ。ま、居場所は教えないけど」


 ジョンがちょうど良くタバコを吸い終えると、サンドラは三度銃を突き付けた。


「大体予想通りの情報ばかりだった。聞いて損した。時間を命で返せ」


 引き金に指をかける。


「そりゃ悪かった...な!」


 引き金を引く瞬間、ジョンは顔を持ち上げ、口から煙を吐いた。


 煙により、視界が一瞬無くなった隙をついて、逃げ出す。


「クソガキが...!」


「じゃあなああああ!!!また会おう!!!」


 サンドラは銃を撃って追撃するが、怪我を追っているとは思えないほどの反応と加速度により、1発も当たらなかった。


「サ、サンドラさん」


 やりとりを見ていた、1人の傭兵が話しかける。


「お前らは何故撃たなかった...?」


「は、は、は、そ、そ、そそそれは...!」


 胸ぐらを掴まれ、動揺する部下。


「手を出すなと言っていたのは向こうだ。何もこっちが出すなとは言ってなかったよな。何故取り巻きの雑魚を倒した後に加勢しなかった?何故逃げられた時に撃たなかった?答えてみろボンクラ共」


 凄まじい威圧感を放った後、サンドラは怯える部下の胸ぐらを離した。


「殴ってやりたいし、あの男も追ってぶっ殺したいところだが、生憎と今はその暇が無い。あのバカガキを助けに行くぞ」


「は、はい!」


 男たちは、早足に去るサンドラについて行った。


*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。


今回は珍しく三人称で書きました。こっちの方が読みやすいかも。

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