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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
43/80

第43話:一刀一閃

*不定期更新です。基本13時に更新してます。


 叔父様と組員たちを後ろに下がらせ、しばらく刀を振っていた。


 汗が頬を伝い、柄を握る力が強くなる。


 相対する男の名はソリスだったか。ソリスは私の剣を何回か食らっているものの、まだ戦う姿勢をとってくる。


 致命傷を与えたいところだが、流石に難しい。


 私も屋敷から出る際に、浅いとは言えないほどの傷を負っているし、ソリス自体も相当な手慣れだ。


 これまで会ってきた中では、上位に食い込むほどの実力者だ。


「はぁ...はぁ...」


 10分は連続で切り続けていたため、流石に息が上がってきた。


「そろそろ消防車とか来そうだから、終わらせたいんだけど」


「同感ですね。直ぐにでも決着を付けたいところです」


 今のところ、こちらが優勢だ。


 なら、短期決着に出る...!


「ハアアアアアア...!」


「やはり早いですねぇ!」


 息も吐かぬほどの連撃を浴びせる。ソリスはそれを避け切ることができていない。しかし、確実に致命傷は避けている。


 攻撃は受けているのに、全然反撃してこない。この男の実力が知れない。


「反撃しないんですか」


「余地がないですよ。想像以上にあなたが強くて、勝てる気がしないですね」


 真顔で言い放っている。


 嘘を吐いているのか、本当に私に勝つ気が無いのかわからない。


 いや、そもそも勝つ気が無いなら負けを認めて逃げるか、直ぐに切られて死ぬかの二択だろう。


 そう、この男は諦めていない。


「なら、諦めて死んでください」


「それは出来ないですね。何故なら...」


 瞬間、いきなり銃弾が飛んできた。予備動作も無いそれをなんとか刀で防ぐ。


 しかし、再び視線を戻すと、さっきまでいた位置に、ソリスの姿は無かった。


 消えた!?


「わかったからです」


「!?」


 斜め後ろにソリスの姿があった。もう得物が脇腹付近まで来ている。


 いつの間にそこに...!?


「くっ!」


 金切り音が響いた。


 何とか刺されなかったが、少し抉られてしまった。


 しかし、傷を気にしている暇はない。次から次へと攻撃が飛んでくる。


 そこで、この男の獲物の正体がようやくわかった。針だ。両手にある鉄針を武器として使っている。


 これが小さいため、相当避けづらい。それに、戦い方が未知数だ。


「読み切っていますよ」


 そう言いながら、鉄針による攻撃が早まる。


 リーチはこちらの方が上だ。距離さえ取ることができれば良い。しかし、不思議と距離が取れない。どれだけ下がろうがついてくる。


「くっ...!」


「無駄ですよ。全てわかっています。あなたが次どう動くかも」


 どうするのが正解だ。無理矢理にでも攻撃した方がいいか。


 そう思い、刀を振り下ろす。しかし、それをなんとあの細い鉄針で受け流された。


「無駄だと言っています」


 そして、瞬く間に距離を詰められる。


 まずい。避けないと...!


 瞬時に避ける体勢に入る。


「右」


 声と共に、避けた方向から針が飛ぶ。


「左」


 また避けると共に針が飛んできた。


 冗談なんかじゃない。本当に全て読まれている...!


「.....っ」


 そしてとうとう、針が腕に深く刺さった。


「先程までの攻撃で、あなたの行動パターンは全て熟知しました。先は勝ち目が無いと言いましたが、それを訂正しましょう」


 ソリスはそう言うと、腕から針を素早く抜き、そしてまた、消えた。


「今は、あなたに勝ち目が無い」


「なっ!?」


 また現れた。そして、反応が遅れる。


「何度も言うようですが、あなたの動向、弱点は全て見抜けています。いい加減、死んじゃってください」


 鉄針が次から次へと飛んでくる。早いし変則的だ。それに、何故だか避けにくい。変則的だから、というわけではなく、根本的な避けにくさがある。そのせいで、脇腹や腕が度々刺される。


 どうしてここまで読まれているのか。


 ...癖、か。私の体に染みついた癖を把握して、攻撃や回避、そして接近に使っているのか。先程、武器も取らずにただ攻撃を受けていたのは、その癖を読むため。


 なら、1つ手がある。


「ハアアアアアア!!!」


 勢いよく、そして素早く振り切る。


 それをソリスは冷静に避けた。


 そして距離が開いたため、再び詰めにくる。


 ...ここだ。


「何ッ!?」


 私の脚がソリスの脚にかかる。


 案の定いきなり現れたが、現れる場所が読めてしまえば、どうってことはない。


 バランスが崩れたところを、刀で追撃する。


「クッソ!!!」


 どうにかして刀を避けようとしているが、流石にその姿勢からは無理だ。


 そして、刀が肩口から左腕を大きく裂いた。


「グアアアアアアアアア!!!」


 慟哭が響く。


「何故!完璧だった...はずだ...!!!」


「癖を読んでいたのでしょうが。癖を読んでいることを読まれているとは、気づかなかったそうですね」


 血振をした後に、トドメを刺すべく近づく。


「癖を読んだ位じゃ勝てません。私が一番私の癖を、弱点を知っています。私は昔から不器用で、生まれつき体が少し右に偏っていますので、いつも初動は右に動いてしまう。攻撃も右から、そして重心も右にずれるので、構えた刀も少し右にズレてしまうんです。故に右側に死角が生じて、いきなり現れるようなことが起きる。そして、左からの攻撃に反応しづらいというのもありますね。あと、集中力が高すぎるので、1つに集中し過ぎてしまう節もあります。お陰で銃弾を切れるほどにまで成長しましたが、あなたみたいに逆に利用されてしまう時が時々ありますね」


 ツラツラと喋った後に、首に刀を当てる。


「私が一番私を熟知しています。舐めないでください」


 じゃないと、師匠も美月も越えられない。


 介錯のために大きく刀を振り下ろす。


 その瞬間、ソリスが微かに笑った。


「まだ、終わりませんよ」


 そう言って、私の顔に血を飛ばした。


「っ!?」


 見えない。しかし、ここで止まればやられる...!


「ハアアアアアアア!!!」


「おっと」


 避けられた。


 見えない。何処にいる。


 静寂が辺りを包む。近づいてきているか、遠くで様子を見ているか、それとも逃げたか、出血で死んだか。


 それすらもわからない。


 冷静になれ。


 そっと息を吸い、そして吐く。


 考えるな。集中しろ。


 風の音、炎の音、自分の鼓動、刀が動く金属音、遠くで鳴るサイレンの音、その雑音を踏み分けた先。


 右斜め30度程後ろから、地を擦る音と、乱れた吐息。近づいてきている。


 3。


 2。


 1。


 .........ここだ。


 刀を振り切る。


「...」


「ガッ......」


 見えないが、恐らく手応えから、首だ。首を切った。


「大斗さんほどではありませんが、気配は感じ取れますので。では、安らかに」


 落ちた首にそう告げると、私は叔父様の元へ駆け寄った。


「こっちだ。火花」


 見当違いの方向へ走ったようだった。私は直ぐに声のする方へ方向転換した。


「座れ。水で洗い流す」


「ありがとうございます」


 座って顔を上げると、水が降ってきた。


「私たちのためによくやった火花。お前の師匠も喜ぶ」


 その言葉に呼応するように、他の組員たちも私のことをたたえた。


「当然のことをしたまでです。皆様を守ることができて、良かった」


 目の周りの血が流されて、視界を取り戻すことができた。


 目を開けるとそこには、脚から血を流す叔父様の姿があった。


「大丈夫ですか?」


「ああ、私は問題ない。直ぐに救急車も来るだろうしな。それよりお前は」


「私も問題あり...」


 瞬間、視界が揺らいだ。


 なん...だ...?


「ま...せ...」


「まずい!針に毒を仕込んでいたか...!耐えろ火花!」


 叔父様の心配する声が聞こえる。他の組員たちも私を呼びかけている。


 その声がドンドン遠くなる。


 そして、何も聞こえなくなった。











*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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