表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
42/80

第42話:嘘

「ただで死ぬわけねえだろ...!かかってこい!!!全員返り討ちにしてやる!!!」


 4人の構成員と俺が対立している。


 銃を撃たれたら一たまりもない。ここは一気に距離を詰める...!狙いは真ん中の男だ!


 そう決めた瞬間、俺は前傾姿勢をとり、狙いの相手との距離を一気に詰めた。


「...」


 しかし、相手は驚きもせずに俺のナイフを冷静に対処する。


「かかってこい」と息巻いたものの。


「グッ...!」


 普通にキツイ。


 数は1人奇襲で減らしたが、まだ4人もいる。4人と言っても、前まで戦ってきた半グレたちとは格が違う...!


 連携も取れてるし、戦闘慣れしている。恐らく俺よりも場数を踏んでる奴らだ。1人1人の戦闘力も高い。


「クソッ」


 中々ナイフが当たらない。かといって、当たるまで1人に固執していると、死角からもう1人が突っ込んでくる。


 汗が頬を伝う。疲れてきた。


 しかし、道幅が広いし、相手の統率も取れているため、距離を取ってはダメだ。銃で撃ち抜かれる。取るなら遮蔽の裏だろう。


 いや、それもダメだ。実に弾が当たっちまう。


 やはり、近距離を保ち続けるしかねえ...!

 クソッ!焦るな!落ち着け!


「フンッ」


「ぬお!?」


 構成員の男のナイフが頬を掠めた。


「ヤバッ」


 後ろから、ナイフが飛んでくる。それもなんとか避けたが、今度は銃口がこっちを向いていた。


「ちょ、っと!」


 それもなんとか避けた。今のところ、第六感のお陰で助かっている。こんだけ高頻度で発動しているのは、修行の成果か、はたまた当たれば即死の攻撃が多いから、いつもよりも体が危機を感じ取っているのか...。多分、後者だろう。


 つーか、ヤバい。これは死ぬ。


 多対一は1人ずつやるのが基本だが、分断なんてできない。休憩する場所もなければ、下がるための遮蔽もない。体力も持たなければ、脚の傷もバカになっていない。


 体力の限界が、命の終わりだ。


「...」


 どうする?


 今は、避けるのに手一杯だ。なんなら、もう避けることすらままならない。深い傷を、腹や腕に負っている。そもそも、脚に銃弾を受けている時点で、全部を避けるなんて無理な話だったのだ。


 焦るな。焦れば死ぬ。


 そうだ。


 視野を広くしろ。火花さんに言われた通りにやるんだ。


 多対一なんて、尚更視野を広くして戦うもんだろ。何やってたんだ俺!何を学んだんだ...!


 視野を広く、状況判断を的確に。そして、直感を研ぎ澄ませ...!


 極限まで、集中しろ...!!!


「!?」


 何だ?頭が冷静だ。さっきまでの焦燥感は何処に行った?脳内がとてもスッキリしている。真っ白、ではなく、スッキリだ。脳には多量の情報が流れてきているのに、全く渋滞していない。全てを綺麗に、そして正確に演算している。


 そしてそれによって、次はどう動けば良いのかが、瞬時にわかる。


 狙いは、あいつだ。


 1人がナイフを頭目掛けて振った。

 それを、低姿勢で避ける。


 その隙を突いて、もう1人が俺に膝蹴りを当てようとした。

 それを、クルリと回転して避ける。


 残るは狙いのこいつのみ。


 俺は一瞬で懐を取った。


「なっ!?」


 2人の連携の取れた猛攻を潜り抜け、3人目のターゲットの目の前まで迫ると、そいつの顔には焦りが滲み出ていた。


「...」


 鈍角にナイフが突き刺さる。

 そいつは何も言わずに、血だけを吐いて倒れた。


 見える。ゾーンってやつか。


 お陰で、最初に吹き飛ばした奴が、銃をひっそりと構えているのも見えた。


 俺は転かした奴の手を引っ張ると同時に、体の後ろに持っていった。


「何...!?」


 すると、吹っ飛んだ奴が放った銃弾が、もう1人に当たった。


 さあ、後は3人だ。


 まず、吹き飛んだ奴はこれ以上動かれると厄介なため、早急に銃殺する。


 残り2人。


 しかしどうにも、2人は冷静に見える。これだけ殺したのにも関わらず、焦っていない。


 他の奴も、やられるとわかった瞬間は流石に焦っていたが、現状に対しては一切焦りを感じていなかった。


 余裕があるのか。なら、その余裕はどこから生まれているのか。


 ...いや、今は考えない方がいいだろう。目の前の2人に集中だ。


 視野を広く。


 そうして、再び突っ込もうとした瞬間。


「っ!?」


 脚に激痛が走った。


 クソッ!アドレナリンが切れたか...!


「死ね」


 2人は銃を構える。


 俺からの攻撃は間に合わない。ただ、構えている状態の今なら、なんとかギリギリ避けられる。


「グゥッッッ!!!」


 しかし、俺は避けなかった。いや、避けられなかった。


 銃弾は2発、肩と左腿に当たった。


「や...ばいな...」


 大量の血が滴る。


 何故、避けなかったか。


 弾道に実がいたのだ。避けたら実に直撃していた。


 こいつらは、俺が実を守る人間だということを見越していた。


「油断出来んからな。こっから撃って殺す」


「頑張った方だ。楽になれ」


 2人が銃口をこちらに向けた。


 まだ、なんとか動ける。ただ、戦うのは無理だ。


 俺たちの使命は生き残ること。実も俺も、両方生きて帰らないとダメだ。あいつらの作戦どおりになってしまう。


 ここで戦えば、俺は死ぬし、実も失血死するだろう。


 最善の手は逃げることだ。


 動くことができるなら、根性見せろ!持ってくれ!俺の体!


「ウオラアアアアアアアアアアア!!!」


 走って、実の体を再び抱く。


 銃弾が2発飛んできた。

 1発は掠めたが、2発目は脇腹に当たった。


「...!」


 転けそうになるが、ここで転べば死ぬ。


 俺は痛みを堪えながら、シルバーに向かって走った。


「もう...少しだ...実...」


 銃弾がまた飛んできた。


 なんとかそれは当たらずに済んだ。ただ、もう限界だ。


 距離的に、後1発でも撃たれれば、終わる。


 視野を広く保て...!あと、もう少しだ...!


「!?」


 その時、強烈な違和感を覚えた。


 直感だ。何かがおかしい。何だ?


 あ。


 わかった。


 実だ。相当な量の出血をして、随分と時間が経っているのに。


 呼吸が安定してい...。


「ガハッ...」


 喀血と吐血がとめどなく口から溢れる。


 下を見ると、腹のど真ん中に、深々とナイフが突き刺さっていた。


 危険信号が脳から送られ、体がそれに反応するよりも先に、やられてしまった。


 もう、ダメだ。


 意識が朦朧とし始め、地面に倒れてしまった。


「どう...して...」


 俺を見下ろす影に言う。


「みの...り.........」


 目の前が真っ暗になった。


 ああ、やられちまったか。もう、流石に生きられねえかな、これ。


「ごめんなさい、大斗...ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい...!」


 最後にそんな声が聞こえた気がした。





「遅いですよ、コードネーム、フィクタ」


「もっと早くに殺せましたよね。そのせいで3人死んでしまいましたよ」


 2人の男が実に近づいた。


 実は血塗れだが、平然とその場に立っている。


「...ごめん。確実に殺せるときを狙いたくて」


 そんなことを言って、誤魔化しているが、手は震えたままだ。


 1人の男はその様子を見て、鼻で笑った。


「やっぱりあなたは嘘吐きですね。それはそうと、朝霧大斗は生命力が高いので、まだ死んでないかもしれないです。なので、とどめを刺してください」


「わた...しが...?」


「はい、あなたの仕事ですので。まあ、恩人を裏切って殺すのは辛いでしょうが、組織に再び入るためには、これまでの逃亡を帳消しにするほどの信頼が必要です。これはその信用を得るための作業ですよ」


 男はそう言うと、銃を実に渡した。


 実の手が震える。目には涙が浮かんでいた。


「ごめんなさい......ごめんなさい...ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい...!!!」


 号泣しながら引き金に指をかける。


「......ごめんなさい、大斗」


 銃声が閑散とした路地に響いた。2()()()の、銃声が。


 銃弾は、2発とも2人の男の頭を正確に貫き、絶命させる。


「だ、誰!?」


 撃たれた方向は、暗く狭い路地裏。そこから、足音が近づいてくる。


 実は銃を構え、息を深く吐いた。


「死んで...!」


 引き金を引く。


 その瞬間、足音が一気に迫る。そして銃弾は、迫ってきた何者かによって、あらぬ方向に放たれてしまった。


 その女は、左手で実の右手にある銃を掴み、右手で実の喉首にナイフを突き立てていた。


 月明かりが路地を照らすと、その人物の正体が明らかになった。


 2人は驚きもせず、ただ互いに悲しい顔を浮かべ、睨みつけていただけだった。


 そして、同時に口が開いた。その声は、深い悲しみと静かな怒りが混ざった声だった。


「虚...!」


「実...!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ