表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
41/80

第41話:1つだけ

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 夜の病院は静かだ。


 もうすぐ退院とはいえ、仲間がいないと、少し寂しい。


 実に会いたい。


「実...」


 仰向けになり、天井を見つめる。


 実は本当にスパイなのだろうか。本当なら、裏切ったということになる。


 私は本当に実のことを知らなすぎている。親友失格だ。これじゃ約束なんて、守れやしない。


 それでも...。


 それでも、約束したことには変わらない。私は、たとえ実が裏切ったとしても、絶対に守るし助ける。


 だって実は、私のことを...。


「嘘...」


 何気なくスマホの画面を開くと、とあるニュースが目に入ってきた。信じたくないと思い、もう一度目を通す。


 燃えた家が中継されている。そこには、消防隊が駆けつけ、必死に消火作業をしていた。


 そこに映っていた家は、紛れもなく、一之瀬亮吉さんの家だった。


「行かなきゃ...!」


 ベッドの下に手を入れる。

 前は学校に武器を持って行かなかったせいで大変なことになったため、最近は身近なところに武器を置いている。


 ベッドの下の拳銃とナイフを取り出し、病室から出る。


「虚...!」


 横から声をかけてきたのは日暮だった。隣には裕樹もいる。


「行くの?」


「行く」


「武器は?」


「持ってる」


 答えると、日暮はしばらく考えたのちに「私も」と言った。


「日暮たちは残ってて」


「でも...!みんなが危険なときに待ってるだけだなんて!」


 俯く日暮。そんな日暮を見て、裕樹は手を肩に置いた。


「日暮、完治してない俺たちが行っても足手纏いになるだけだ。それに、俺たちの分の武器は無いだろ」


「そうだけど...!」


 悔しそうに歯噛みする日暮。


 私は「大丈夫」と言って日暮の目を見た。


「まだみんなは生きてると思う。絶対に助け出す。だから...待ってて」


 そう言って駆け出した。


 タクシーを拾って、今から行って間に合うか。


 焦燥感が心を支配する。


 お願いみんな。生きていて...!




 爆音で目が覚めた。多分、ここにいる人たちはみんな覚めただろう。


「何だ!?」


 眠気も一気に吹き飛んだ。


 燃えてる!?なんだ?爆発?


「大斗くん!!!」


 焦った顔をしながら入って来たのはホワイトだった。その両腕には、血塗れの実の姿があった。


「ホワイト!何が起きてる!実はなんで...!」


「襲撃だよ。予想より早かった。実は爆発で怪我を負ったんだと思う。それより早く!みんなもう外に出てる!」


 しゅ、襲撃!?戦力の回復がまだだろ!?向こうも痛手を負っていたはずだぞ!


 それに、実が怪我?実がスパイなら、巻き込んで攻撃するなんてことするか...?もしかして、実はスパイじゃないのか...?


 色々な疑問が頭に浮かぶが、聞いてる暇はないだろう。


「お、おう!」


 俺はそう言うと、ホワイトの後を追った。


「考えが甘かった...!超小規模組織である羽の特記戦力のほとんどが、未だにダメージを負っているのは確かだと思う。だけど、クロウ本部から戦力を送られてくることは考えてなかった...!」


 言われてハッとする。


 そうか。戦力が回復せずとも、クロウから取り寄せれば...。


 羽は今までそうやってきたはずだ。何故気づかなかった...!


 自分が嫌いになりそうになりながらも、炎に包まれた屋敷をなんとか抜ける。


 すると、そこには数名の組員と、組長、火花さん、そして、傭兵団のみんなが立っていた。


 皆、相応の怪我を負っている。中でも一之瀬組長は脚をやられ、歩けそうにない。


 そこに、何名かの人影が近づいてきた。


「3週間ぶりですね。美月さん」


 微笑みを浮かべながらやってきた女は、多分五十嵐灑鳥だ。


「おお!なんか戦い甲斐がありそうなやつばっかじゃね!?こりゃ良い戦争になりそうだ」


 ゲラゲラと笑いながらやってきた高身長の男は、ジョン・リードだろう。


「さっさと終わらせましょう」


 メガネをつけた男と、その後ろにいる奴らは知らない。恐らくホワイトが言っていた、クロウから新戦力として来た奴らだろう。


 新戦力、というだけあって強いのは目に見える。


 そんな奴らが、満身創痍の俺らに近づいてくる。


「皆さん、逃げて下さい」


 その言葉を発したのは火花さんだった。


「でも...!」


「私は叔父様を守らないと行けません。事務所に残ってる組員と共にここに残ります。すみませんが、先に行っててください」


「火花...」


 それでも尚行こうとしないホワイトの腕を、サンドラさんが掴んだ。


「行くぞ、ガキ共。お前にはお前の使命があるだろ。今はそれに専念しろ」


「サンドラさん......わかった。火花、頼んだよ」


「言われなくてもやります。そちらも、ご武運を祈りますよ」


 そうして、俺たちは走って逃げていった。


「死ぬな...」


 俺たちが去る間際、亮吉さんの声でそう聞こえた。


「あなたたちに構う必要はありませんが、火花さんはただで行かせる気も無いでしょうし、特記戦力とシルバーの支援者はここで倒した方が良さそうですね...。ソリスさん。単独でお願いします。あなたならきっと、神に選ばれますよ」


「承知しました」


 ソリスと呼ばれた男が火花さんの前に出る。


「じゃあ、頼みましたよ」


「御意」


 五十嵐たちが俺を追いに走る。


「くっ...」


「行かせたくないでしょうが、引き止めて仕舞えば、あなたは足手纏いを庇いながら数名の強敵と戦うことになり、絶対に死にます。引き止めないのは賢明な判断でしょう。まあ、引き止めなくとも僕が殺しますが...」


 そこから先は、見えなかった。


 ヤバい。実を持ってるためか、速度が出ずに徐々に距離が詰められてしまっている。


 銃弾がすぐそこを掠める。


 広いシャッター街のため、跳弾が当たることはないが、直撃したらひとたまりもない。


 こっちも撃ちながら走ってるため、向こうも照準が合わずに当たらずに済んでいるが、時間の問題だ。


「美月!」


 そう呼んだのはサンドラさんだ。


 サンドラさんは他の傭兵と共に立ち止まった。


「済まないが、先に行け!このままだと追いつかれる!」


「サンドラさん!」


「いいから先に行け!」


 その声を聞いて、ホワイトは歯噛みしながら「わかった」と言って走り始めた。


「本気出せバカども!!!何度も潜った戦場だ!!!死に物狂いで生き残れえええええ!!!」


 男たちの雄叫びが聞こえた瞬間、後ろから銃撃戦の音が聞こえ始める。


 しばらくして後ろを見ると、五十嵐と新戦力の5人が追ってきていた。


 あのジョンとかいう男と、残りの5人は引き受けてくれたみたいだ。


 しかし。


「あっぶね!?」


 銃弾が足下に当たった。


 もうすぐそこまで来ている。


 このままじゃ、やられる...!ホワイトも疲れてきているみたいだし、どうすれば...!


「大斗くん」


 息を切らしながら「何だ?」と答える。


 すると、ホワイトは俺に実を渡してきた。


「五十嵐は強い。ここで振り切らないと、取り返しのつかないことになる。だから...ごめん。大斗くんは実を持って逃げて」


「行けるのか」


 問うと、ホワイトは不敵な笑みを浮かべた。


「当たり前、だよ」


「...わかった」


 信頼だ。信じろ、仲間を!これまで残って戦った人は、俺たちを信じてくれたはずだ...!


「シルバーの拠点なら安全なはず。そこまで逃げて、救急車を呼んで」


 指示に強く頷き返すと、俺は実を抱えて立ち上がった。


「ホワイト、無事を祈るぞ」


「キミも、気をつけてね」


「ああ」


 走り出すと同時に、後ろから声が聞こえてきた。不気味な声だ。


「行かせませんよ?」


「やば...!?」


 銃弾が俺目がけて飛んできた。


「それはこっちのセリフだよ。大斗くんたちは、殺させない」


 が、それをなんとホワイトはナイフで防いだ。


 そして、道を塞ぐように立つ。


「頼んだよ」


「ああ...!」


 再び走り始める。銃弾はこちらに飛んでこなかった。


「なるほど、やはりあなたは手強いですね。ではせめて、5人だけでも行ってください」


「いかせな...」


「それはこっちのセリフ、ですよ?」


「っ!?」


 苦戦している様子だが、生憎と見ている暇はない。


 5人が追ってきてる。

 しかし、もう頼れるのは俺だけだ。


 数発の銃弾が、後ろから背中目がけて飛んでくる。


 疲れのせいで速度も出ない。まずい、これは...!


「グアッ!?」


 そしてとうとう、1発の銃弾が脚を貫いた。

 その瞬間、俺の体は実を放って地面に転がる。


「くっ...そっ...!」


 追い詰められた。


 ...あの時を思い出す。


 初めて、命を狙われたあの時。同じように脚を貫かれ、同じように転け、同じように接近され、そして死にかけた。


 あの時は仲間が守ってくれたが、今はいない。


「往生しろ、朝霧大斗。お前の存在は邪魔なんだ」


 顔は暗くて見えないが、声から察するに男なのだろう。


 1人の男が俺の額に銃口を当てた。


「今行くよ、父さん、母さん」


 引き金に指がかかる。


 その刹那、俺は銃口を左手で下に向け、そのまま右手の拳を大きく後ろに下げた。


()()()()()


「!?」


 そして、1人の顔面に1発パンチをお見舞いしてやった。顔面に受けた男は、吹っ飛んで動かなくなった。意識が飛んだのだろう。


 脚は痛むが、まだ立てる。まだ戦える。


 さっきは、あの時と同じだと言ったが、あの時とは確実に違うところが、1つだけある。


 それは、俺が前より強くなったところだ。


 集中しろ。視野を広く持て。あの日の悔しさをバネにしろ...!


 信頼して俺たちを守ってくれた人のためにも、戦え、朝霧大斗!!!


 覚悟を決めると同時に、俺は立ち上がり、銃を構える奴らに向かってナイフを突きつけた。


「ただで死ぬわけねえだろ...!かかってこい!!!全員返り討ちにしてやる!!!」


















*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ