第4話:初任務(?)
*不定期更新です。基本13時に更新してます。
その後、2人が帰ってくるのをテレビ見たり、喋ったりして待ったが、2人ともどうやら用事が長引くようなので、解散ということになった。
「じゃ、私帰るね。明日からよろしくね、大斗」
「そうだな、まだ何するかわからないけど」
俺の反応に「ふふ」と笑うと、日暮は帰っていった。
「さて、俺も帰るか」
バッグを肩にかけ、立ち去ろうとするが、一歩踏んだところで、バッグを思いっきり掴まれた。
「何すんだよ」
「掴んでる」
悪びれもなくホワイトは言う。
その態度に少々イラつきながら、口を開いた。
「わかってるわ。てか、解散じゃないのか」
「そうだね。で、尋ねるけど、どこに帰ろうとしてるの?」
発せられた疑問に疑問が浮かぶ。
何を言ってるんだ、こいつは。
「どこにって、家にだよ。しばらく帰ってないしな」
至極当然の解答だ。
「無いよ」
「は?」
「解約しといたから。代わりにあなたはここで暮らしてもらいます」
「...はぁ?」
本当に何を言っているんだ?
いや、家が解約って。そもそも他人の家を勝手に解約なんて、できるもんじゃないだろ。
「できるよ」
「なっ」
こいつ、心を読んでやがる...!
「裏社会の怖いところだよねぇ。そういうのもできちゃうんだよ。ささ、キミは向こうの部屋ね」
そう言うと、ホワイトは奥にあるドアを指差し、俺の体を強引に押す。
「おい!冗談だろ!な、ちょ、押すな...!」
「ほら、入った入った。可愛いjkと同棲なんて幸せ者だよ?あ、キミの私物は諸々置いてあるからね。あと、呼んだらすぐ来てね!じゃ!」
「ちょ」
にこやかに言い放つと、ドアを勢いよく閉めた。
俺はドアにもつれかかる。
今の一瞬でドッと疲れが押し寄せてきた。
大学は夏休みだからまだ良いが、家解約って...。
両親が死に、不幸が続き、命を狙われ、信頼できるかどうか怪しい組織に入り、家を勝手に解約され、良くわからんことは良くわからんまま...どうなってんだよ...。
考えに耽っていると、眠くなってきた。うとうとしていると今度は、微かにシャワーの音が聞こえてくる。
あー、そういや同棲って...。
「......」
可愛いjkと同棲...。
想像が膨らむ。
確かに顔は良いしな。それに俺となんか距離感が近い気もする。これは、もしかするともしかするのでは!
ああ、あんなことやこんなことを。
「大斗くん」
「ホワイト、いや、美月」
「大斗くん」
「美月...」
2人は甘い恋の虜に...。
「大斗くん」
「はっ!?」
頬が冷たい感触に襲われ、体がビクンと跳ね上がる。
後ろを振り向くと、エプロンをつけたホワイトが立っていた。
「朝だよ、起きて。あと、臭いからシャワー浴びて」
「く、臭い...」
微妙に傷ついた。
どうやら、寝落ちしてしまったらしく、そのせいでシャワーも浴びてない。この夏でそれはマズい。
「すまんな。今入ってくる」
立ち上がると同時に腹の虫が鳴った。
ヤバい恥ずかしい。そういや、昨日何も食ってねぇ。
美月は、恥ずかしがる俺の顔を見て、少し笑った。
「ご飯、できてるよ。シャワー浴びたらおいで」
天使か。
俺は「ありがとう」と照れながら言うと、シャワーを浴びに行った。着替えとかその他備品は、何故か俺の部屋にあるので困らない。
もう怖さとかない。逆に全部やってくれるのがありがたく感じるまである。
シャワーをとっとと浴びて、居間のようなところに戻ると、朝食が置いてあった。
トーストに卵にトマトとレタス。普通の朝食だが、これが美味い。というより、なんか特別感がある。
「美味しい?」
「ああ、癪だが美味いよ」
「癪ってなんだよー」
ホワイトは少し頬を膨らませた後、直ぐに朝食に手をつけたかと思うと、今度はスマホを取り出して、俺に突き出した。
そこには大きく『依頼』と書かれていた。
「これ。最近とある半グレ集団が色々やらかしてるから、この地区を見回ってくれって来たんだ。前金はもう貰ってるから、今日の18時から0時くらいまで、よろしくね」
そんなこと言ってまた朝食に戻った。
「伝えるだけ伝えとくの精神やめた方がいいぞ。なんで俺が警備とかするんだ?」
「うーん、交流のためかな。昨日会えなかった虚と裕樹も行かせるから」
「あー、そういう。とでも言うと思ったか。大体、そういうのって俺たちの仕事なのか?警察とかいるだろ」
そう言うと、ホワイトは少し考えた後に真面目な顔になった。
「信頼の問題だよ。私たちはこの街の人から信頼されている。そしてその信頼関係は守っていかないといけないんだ。それに、警察だと捕まえるだけ捕まえて、後は終わりって感じだからね。一発痛い目に合わせないといけないんだよ」
なんか意外と真剣な考えがあった。
でもそのセリフの中に1つ気になるものがあった。
「『一発痛い目に合わせる』って、喧嘩するってこと?なら無理」
「はいはい、それは起きた時現地で決めてくださーい。じゃ、よろしくー」
強引に話を落とされ、ホワイトは言及から逃れるようにアジトをあとにした。
「あいつ...」
こうして俺は、初任務として、究極的に治安の悪い夜の街へ繰り出すことになってしまったのだ。
*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。