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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
39/80

第39話:情報共有《後》

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

「名取実は元々ハデスの訓練生で、羽のリーダー格の奴らと接点があるってことだ」


 場が凍る。


 確かに元々クロウ傘下の組織に所属していたとは言ってたけど、まさか暗殺組織の一員だったとは...。


 あいつは、自分の素性は詳しく言おうとしなかったからわからなかった。俺たちも深くは詮索しなかった。


 言わなかった理由は本人に聞かないとわからないが、自分から暗殺組織に入ってたなんて、誰も言いたがらないのは当たり前の話だろう。ましてや、羽のリーダー格と接点があるなんて、言えるわけもない。


 言ったら、信用を失う。言ったら、捨てられてしまうかもしれない。そう思ったのではないだろうか。


 言わなかったのは、あいつなりの防衛手段だった、と。


「で、この話を踏まえた上で、さっきの『俺たちがあいつらの拠点に入り、実を救出することを見込んでの作戦だとしたら』ってのを考えてみると...?」


「そ、んな...」


 虚が呆然とした顔で後退りした。


 無理も無い。


 俺だって気づいた瞬間に青ざめてしまった。親友のこいつなら、絶望ものだろう。


 裕樹先輩は恐らく、実はスパイかもしれないということを言っているのだろう。


 俺の周りの戦力は高く、俺を殺すのは困難だ。しかし、俺の近くに内通者がいるとなれば、話は別となる。色々有利に進められるだろう。その内通者役として、リーダー格の奴らと接点のある実は適役だ。


 そのため、実を内通者にするべく、話合いの場を設けて、邪魔されないように時間稼ぎをした。


 解放の際わざわざ戦ったのは、疑われないためだろう。直ぐに返せば、流石に怪まれるしな。


 思いたくはないが、かなり疑わしい。実に何らかの条件を出して、傀儡として操っている可能性が高い。


「実がスパイだとしたら大変だ。問い詰めるか」


 裕樹先輩がホワイトに問う。すると、ホワイトは少し考えた後に「いや」と言った。


「彼女がスパイなら、盗聴器などで声を聴かれてる可能性が高い。問い詰めると、逆に彼女の身が危険に晒されるかもしれない。しかもそうなれば、相手が何をしてくるかわからなくなる。逆に、実に黙っておけば、相手が何をしてくるかが、大体わかる」


「じゃあ、どうするの?」


 日暮が問う。


 その疑問に対し、ホワイトは淡々と語り始めた。


 「実をスパイにする目的って何だと思う?こっちの動向を確認するためっていうのもあると思うけど、襲撃のタイミングを見計らうっていうのが一番だと思うんだよ。例えば、戦力となる火花がいない日を狙う、とか、大斗くんの周りが手薄の時間を狙う、とかね。そして、そのタイミングは裕樹たちが入院している間が好ましい。でも、向こうも戦力が削られてるから、すぐには攻め込めない。つまり、向こうの戦力が補給され、こっちが入院中かつ、大斗くんの命を確実に狙えるタイミングを、内通者の実を通して、逐一見計らってると思うんだよ」


「まあ、確かにな」


「なら、そのタイミングをこっちが作っちゃえば良い。大斗くんが単独行動すれば、好機と思って襲いかかってくるはず。そうして殺そうとしてきた奴らを、逆にこっちがとっ捕まえる。そこで襲われなければ、実がスパイである可能性って低くなると思うんだ」


 その作戦は高リスクだが、反面としてリターンも大きかった。


「俺囮じゃん...。大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ。絶対に守り通すから」


 自信満々に言い放つホワイトを見て、俺は何も言い返さなかった。こいつはいつか、信頼が大事だと言っていた。俺も、信頼してみるか。


「わかった。やってやるよ」


 そう答えると、ホワイトは「ありがとう」と言って微笑んだ。


「確かに、それだと相手の行動も読めるし、実がスパイかどうかもわかるかも」


 納得の声が上がるが、1人だけその声を上げなかった。


「虚。これで実がスパイじゃないとわかれば、それで良いし、本当に実がスパイであれば、実はきっと苦しんでいるはず。虚、キミは約束したんでしょ?キミが救うんだ。その約束を果たす時だ」


「...」


 虚はしばらく間を置いたのちに、静かに頭を縦に振った。


 親友がスパイなんて、信じたくもないだろう。どれだけ辛いか、想像もつかない。


 それでも、約束を果たすために、こいつは首を縦に振ったんだ。確認することは勇気がいるはずなのに。


 本当に、強い子だ。


「ま、その作戦で行くか。作戦決行日は3日後で良いか?今はまだ動けないんだよ」


「向こうの戦力が回復する頃合いがいいだろうから、それぐらいが良いかもね。病院抜け出して来てね」


「私たちの負担大きいわね...」


 日暮がため息混じりにそう呟いた。


「じゃあ決...」


「ちょっと良いかな」


 裕樹先輩の声を遮ったのは、ホワイトだった。


「どうした?」


 問うと、ホワイトは覚悟を決めたように口を開く。


「今回の事件で、私たちは相当な被害を負った。そして、これからもクロウを追うとなると、これより酷いことになるかもしれない。もしかしたら、今隣にいる仲間が死んでしまうかもしれない。それでも...それでもキミたちは...」


「何言ってんの?」


 今度はホワイトの声を、日暮が遮った。


「危険なんて最初から承知だよ。私だって目的あるんだから、着いていくに決まってんじゃん」


 その言葉に、皆は頷き返す。


 もう乗りかかった船だ。そんなの言われても、下船なんて出来ないだろう。する気もないしな。


「みんな、ありがとう」


 そう言うホワイトの顔は、どこか嬉しそうだった。


「ま、俺が持ってる情報はこんなところだし、次に打つ手も決まった。なんか追加情報があったらまた言うから、今日は解散でいいだろ」


 裕樹先輩が発した言葉に誰も異論を出さなかった。


 そうして、俺たちは解散という運びになった。俺とホワイトは高橋さんが用意した車に乗る。


 明後日に、例の作戦を実行する。

 本当に実がスパイなのかを確かめないといけない。


 ていうか、今日は情報量が多くてなんか疲れた。それに、まだわからないことだらけで、それを考えようとして余計疲れる。


 あ、わからないことといえば。


「そういえば、あの時重蔵さんに言われてたことって何だったんだ?」


「あー、実のことだよ」


 今実の話題が出ると、嫌な予感しかしない。


「...実が何だって?」


 問うと、ホワイトは真顔のままこう言った。


「実は強いから用心しろって」


 重蔵さんは人を観察するだけで、強いか否かがわかる人だ。その人が言うなら、間違い無いだろう。


 俺はそれを聞いて、戦慄した。


 その言葉は、どうにも実と俺たちが戦うことを前提として言っているようにしか聞こえない。


 そしてそれを聞いたホワイトは平然とした顔を保ち、俺たちと作戦会議をしていた。


 あくまで憶測でしかないし、本人に聞かないとわからない。勘に近いものだ。深く考える必要は無いだろう。


 しかし、どうにも考えてしまう。


 こいつは、そして重蔵さんは。


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*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。


 前編で説明が下手なのを裕樹のせいにしてますが、自分が下手なだけです。下手な説明パートを長ったらしく続けてしまい申し訳ないと思っていますが、そこんところは気合で何とかしてもらうと嬉しいです。


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