第33話:【SIDE.C】新戦力
*不定期更新です。基本13時に更新してます。
都内某所。
新たにできた拠点はとても住み心地がいい。以前のクソみたいな埃まみれの場所とおさらばできて、心底良かったと思う。
今から、報告兼、それを踏まえて今後どうするかを決める話し合いをしなければならない。
「灑鳥、作戦はどうだった」
対面に座る灑鳥は、薄気味悪い微笑をたたえたまま口を開いた。
「はい、上上とは言えませんがなんとか上手くいってますよ。やはり手強いですね。間宮さんは虚さんと戦が後の消息が掴めませんし、美波さんも大斗さんと戦って重傷を負っています」
その報告を受けて、少し驚いた。
おっさんはしぶといからどうせ生きているだろう。しばらくすればまた顔を出すはずだ。心配はいらない。
問題は、美波。本名、岸辺美波は相当な実力者だ。近接戦闘の暗殺術を得意としている。確かに実力としてはまだまだというところはあるが、朝霧大斗に重傷を負わされるほどでは決して無いはずだ。
「おっさんはとにかく、美波がやられたか。相当実力が上がってるな」
「はい。それに、予想通りリーダー格の白井美月も実力者でした。さらに、一ノ瀬火花も同格か少し下か位の実力を有していると思いますよ」
「やはり、一筋縄ではいかねえな。周りの戦闘力が高すぎる。そういえばあのデカブツは」
「あー。風一郎なら、どうなったかはわかるんじゃないんですか?だって、あなたは強いか、興味が湧いた者しか名前を覚えない」
「ハハ、わかってるじゃねえか」
「まあ、一ノ瀬火花さんの足止めにはなりましたよ。耐久力が売りでしたからね、あの人」
その言葉を聞いて、俺は笑った。
表面上で、笑った。
こいつは変わった。適応した、が正しいか。まあ、俺も変わっちまったんだが。こいつは昔、優しかった。少なくとも、こんなこと言うやつではなかった。
いや、止めよう。思い出したところで過去に戻れるわけでもねえし、今更考えることでもない。
「で、これからどうするか、決めてんのか?」
「はい。引き続き私が指揮をとります。苦戦したとはいえ、相手の戦力も大幅に削ることができましたし、このまま上手くいけば、朝霧大斗を確実に殺せる。ただ、最小限の被害に抑えることはできなかったので、こちらも戦力が減ってしまいました。そこで、新たに戦力を拡充したいと思います」
灑鳥はその後続けて「入ってください」と言った。
ドアが開く。
そこにはキチッとした制服を着た男女が立っていた。
人数は10人。
この制服は間違いない、クロウの連中だ。それも高ランクの。中でも真ん中の男は、制服の襟にカラスを模したバッヂが付けられている。
「この人たちは全員ランク3以上。中でも真ん中のこの人は、最高ランクの5です」
紹介された男は、メガネを上に上げ、軽く会釈をした。
「はじめまして。今日より灑鳥殿の元で働くこととなりました、ソリスです。よろしくお願いします」
ソリスか、確かクロウの構成員はランク4までが番号呼びで、ランク5になって、コードネームが授与される。つまり、こいつは本名じゃ無い。ただ、そんなコードネーム聞いたことねえな。俺がいたときにはいなかった奴ってことか。
「ああ」
軽く手を挙げると、ソリスという男は後ろに下がった。
「俺たちはクロウじゃねえのに、やたら忠誠心があんな。使い勝手が良さそうだ」
「はい、とても良い人たちです」
「ま、あいつらがお前の新たな戦力ってなら、頼もしいな。何より面白くなりそうだ」
「そうですね。後はあの子次第です」
「まあな」
俺は間を埋めるようにタバコに火をつけた。
「そういえば、あなたの方はどうなんです?」
灑鳥にしては珍しく、自分から問いかけてきた。
「順調だよ。ここにいられるのが何よりの証拠だ。なあ?伊沢徹?」
「そ、そうですね」
伊沢はビクビクと怯えながら答えた。こんな腰抜けがトップになってくれて助かった。
「こっちも、灑鳥と同じように本部からランク5のやつを呼んであるんだが、そいつが使えるやつでな。お陰で快調なんだよ」
「私は支部からですよ」
「ま、どっちでも良いじゃねえか。ランク5は数少ねえけど、重要ミッションのためだ。これくらいやってもらわねえとな」
喉の奥から笑いながら、煙を吐く。
「そういえば、天宮阿修羅は現れてないようですが、そこはどうなんでしょうか?」
「ま、こんだけ半グレどもをこき使ってんだ。そろそろ来んだろ」
そう言ってタバコを灰皿に落とすと、ドアの奥の方が騒がしくなってきた。
「凄いですね」
「噂をすればってやつだな。とうとう来やがったか」
騒音が止み、足音が近づく。
「お前ら、客人だから手を出すな」
そう言うと、傍の構成員は「はい」と言って、武器を下ろし起立した。
そしてドアが開く。
「邪魔するぞ」
怒髪天をついたかのように、逆立った赤髪の男。
「天宮阿修羅。ようやく来たか」
「お前たちか。俺のバカ供をオモチャにしやがったのは」
天宮は立ったまま俺たちを睨みつけた。凄まじい威圧感だ。
「まあ座れよ。紅茶でも」
「要らん。俺は紅茶が嫌いだ。それより、話をしに来た」
「そうか。俺たちもお前と話したかったんだ」
「バカが。俺を呼び出すためにバカ供を雑兵に使ったんだろうが。わかってんだぞコラ」
更に眼力が増した。
俺はそれに臆せず、口を開いた。
「単刀直入に言う。俺の仲間になってくれねえか」
そう言うと、やつは「あ?」と言って睨んだ。まるで獅子のような眼光だ。
これは、戦闘になるか?まあ良い。それも予想通りだ。
しかし、返ってきたのは意外な返答だった。
「ま、大体そんなんだろうと思ったよ。良いぜ、入ってやる」
「良いのか?二つ返事で」
「ああ。俺は自分より強いやつは目を見ればわかるんだが、お前は俺より強い。そんなやつに歯向かうのは愚者のやることだ」
その言葉は予想外だった。もっと反論や、実力行使に出るものだと思っていたが、呆気ない。
前評判では仲間のことを大切にする男だと聞いたが、真っ赤な嘘だったってか。
まあ良い。安くで駒が手に入ったのはデカい。
ただ、ここまであっさりだと怪しい。しばらくの間は重役とは離れていてもらおう。信頼に足るやつかどうか、じっくり見定めようじゃねえか。
「じゃあ、よろしく」
俺が手を差し伸べると、天宮は強く握って「ああ」と言った。
その後、灑鳥は仲間を連れてここから出て行った。
俺は布団の中で考える。
灑鳥たちが上手くいけば、俺たちの作戦は無くなるから楽になるっちゃ楽になるが、それはそれで楽しくねえな。
まあ良い。あいつ次第だが、やってくれるだろう。餌は用意してある。
失敗したら、次は俺たちの作戦だ。
これからが楽しみだ。
中でもあいつを使えるのが1番楽しみだ。
「新倉重蔵...!」
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