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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
30/80

第30話:勝ち筋

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 勝てるか...?


 汗が顔を伝い、鼓動が早くなるのを感じる。


 目の前には金髪の女がつまらなそうな顔をして立っていた。一方俺は汗まみれだ。下には、日暮と裕樹先輩が血を流して倒れている。


 この2人が命を繋いでくれた。ここで逃げたら、そんな2人を見殺しにすることだ。


 勝てるか勝てないかじゃない。勝つ。

 勝って生き残る。そう念じろ。


「めんどくさいから、早めに始末しちゃうねー」


 気だるげな声で女はそう言うと、ナイフを強く握り、姿勢を低くした。


 ...来る。


 そう思った頃には、女の体は目の前にあった。


「...」


「はっやっ!?」


 ナイフが急所の位置に迫る。それをなんとかして避けるも、次から次へと刃が飛んでくる。


 早い。対処するのがやっとで、反撃ができない...!


「ガラ空き」


 そう言うと、女は俺の脚に蹴りを入れた。そして体勢が崩れる。


 しまった!このままじゃ殺られる...!


「死ぬかああああ!」


 追撃のナイフをなんとか避ける。そして俺は、逆に女の腕を掴んだ。


「腕を...」


 そのまま腕を折ろうとした。


 しかし、女は平然としている。そして拳をこちらに向けた。


 何だ...?指に指輪...。


「!?」


 皮一枚でかわすことができた。


「避けられるんだ。マジでだるいじゃん」


 避けることはできたが、腕を離してしまった。折角作った隙が見事に崩された。


「暗器か...」


 暗器。

 日暮が修行中に言っていた。暗殺者は見えないところや、予想もつかないところに武器を隠し持っていることが多い。今のもそうだ。


 指輪に見せかけた銃。普通、殺すほどの威力は無いが、改造しているのだろう。多分、あの威力じゃ、近距離なら十分に殺傷できる。


 この調子じゃ、もっと持ってるな、これ。


「気づいたところで意味ないよね。てか、そろそろ諦めてくんない?ダルいんですけど」


「生を諦める奴がどこにいんだよ」


「実力差はわかったっしょ?だから」


「諦めろってか?んな馬鹿なことするかよ。こちとら、未練タラタラだわ。それに...ここで死んだら、また誰も助けられなくなっちまうだろ」


 誰かを死なせるのは、誰だって嫌だろう。もうあれきりにしたい。


 だから...!


「お前を倒す...!」


 踏切が肝心だ。

 屈むように姿勢を低く。体を倒して最短最速で脚を動かす。


 そうすれば。


「!?」


 女の顔が初めて変わった。


「俺のターンだ...!」


 瞬歩。距離を一瞬で縮めることができる古武術の技だ。


 完全な会得はまだできてないが、この距離なら十分だ。


 懐に入ると、俺はそのまま連撃を浴びせる。


「あーもう!」


 女は苛立ちの篭った声を発しながら避ける。


 左右上下あらゆる方角から刃を向けるが、全て避けられる。


 クソ...!早さが足りねえ...!


「...っ」


 ヤバい。一瞬連撃が途切れちまった...!


 女は当然その隙を見逃さない。


「死ね...!」


「うっ...」


 カバーしようとナイフを突くが、それを後ろ回転によって避けられてしまった。


 そしてその勢いのまま、後ろ回し蹴りが飛んでくる。


 狙いは上段。集中しろ...!


「おらあああっ!!!」


 バンッと大きな音が鳴って、体に衝撃が走る。


 腕を使ってガードできたが、体が飛んでしまった。その隙に弾丸がこちらに飛ぶ。


「くっ!」


 予想していたため、なんとか避けることができた。


 しかし、銃弾は無慈悲にも数発撃ち込まれる。


「クソッタレ...!」


 蛇行して避けようとするも、体に何発か直撃してしまう。


 俺はあいつらとは違う。天才じゃないし、秀才でもない。銃も避けられねえし、当たらないくらい早く動けるわけじゃない。


 そんな俺が、今の俺が、出来ること。


「あああああああああああ!!!!!」


 ただ走る。そして走りながら狙いを澄ます。


 あの女は「ついに諦めたか」と思っているだろう。1発だけで良い。その油断につけ入る一撃を。


 1発2発と銃弾が体にめり込む。その度に痛みを感じる。しかし、動きは止まらない。急所はガードできている。


「なっ!?」


 女が驚愕した。


 だろ?バカだよな。銃弾の中走ってくる奴はいねえ。


 その油断が、傲慢が、見下しが。


「ここだ...!」


 この1発を当てることになる...!


「くっ!」


 走りながらだったため、急所は外してしまったが、肩口に当てることができた。


 そして、それは大きな隙を生む。


「ふっ...!」


 ナイフを振りかざす。

 女は動かない。


 獲った...!


「調子に乗んなよ」


「!?」


 早い。なんだ、その腕の動き。


 女は内側から腕を差し込み、俺の肩を掴んだ。そして、そのまま腕をひねる。


 まずい。これは折られる!


 折られないように身を翻すが、そこに女の左手が出てきた。


「死んで」


 はっきりとした声が聞こえた。


 撃たれる。このままじゃ死ぬ...!


 俺は咄嗟に避けた。しかし、激痛が走る。


「グッ!?ああああああああああああああ!!!!」


 折れた。いやわかってた。


 あのままじゃ死んでた。避けようにも体がロックされて避けられない。避けるには無理矢理にでも動くしかない。それが腕を自ら折る形になっても。


「はーやーくー」


「容赦しろよっ...」


 そして、休む間もなく連撃が飛んでくる。しかも今度のはものが違う。


「くっそ」


 ナイフが来るかと思えば、蹴りが。蹴りの次は隙を埋めるように裏拳が。そして暗器も使ってくる。トリッキーだし、さっきよりも格段に早い。


 利き腕が折れて使えない今、満足に避けることもできない。何度もナイフで切り裂かれ、ここぞとばかりに暗器が飛んでくる。


 完全に相手のペースだ。


 戦場で心折れる、即ち死だ。集中しろ。活路はあるはずだ。


 そう思いながら避けに徹するが、隙がない。


 それに。


「はっ!」


「うおっ」


 靴の側面に刃が埋め込まれており、それが俺の体を切り刻む。


 出血が多くなってきた。体が持たねえ。


 視界が白む。このままじゃ死ぬ...!


 連撃が止むことはない。距離を取ろうにも、銃が飛んでくるため取れない。


 その瞬間、悪寒が背筋を巡った。


「!?」


 ワイヤーだ。隙を見て俺の首にかけようとしてやがった。


「さっきからおかしい。あんた、もしかして...」


「はぁ...はぁ...なんだよ」


「第六感ってやつ?あるでしょ」


 顔が引き攣る。


 正解だ。


 日暮と戦っている時、ちょくちょく感じたのだ。ここから攻撃が来るだの、次は蹴りが飛んでくるだの。そして、一際強烈なものだと、見えてなくても何となくで感じる。


 今のワイヤーがそうだったように、致死の攻撃だと、奇襲でも避けることができるのだ。流石に銃弾は無理だが。


 これが無かったら、今頃死んでいる。多分あの暗器で終わりだ。


 だが、何故わかった?こんなの誰にも見抜けないはずだ。


「そっかそれか。だから面倒臭いわけだ」


 そう言いながら女は銃を取り出した。


 咄嗟に体が横に動く。銃弾は横を飛んでいった。


「じゃあ尚更殺さなきゃじゃん」


 女が凄まじい速度で再接近してきた。


「お前...何なんだよ!何の目的で俺を...!」


 攻撃をかわしながら、いや、ほぼ受けながら問う。


「は?教えるわけないじゃん」


 返ってきたのは嘲笑混じりのものだった。


 あークソ!ヤバい。持たねえ。


 使え。()()を使え...!


 お前は俺を格下だと思っているだろ?現に中々死なない俺に苛立ちを募らせているはずだ。ここまで戦ってこれているのは第六感のお陰、そう思っているだろ?俺の実力はこの戦闘に介在していない、そう思っているだろ?


 なら使えよ。


「...」


 来た。千載一遇のチャンスだ。


 女は左拳をこっちに振ってきた。


「貰った...!」


「なっ!?」


 ナイフが女の腹部に刺さった。女は吐血しながら後ずさる。


 だよな。俺は一撃で死に至る暗器を一番警戒している。もちろん、それは女も知っているはずだ。


 だから暗器を振るだけで、注意を引くことができる。つまり、暗器をブラフに別の行動を出すことができる。


 ブラフじゃない可能性は無い。指輪型の銃はリボルバーが普通だ。これまで発砲数を数えていたが、もう打ち切っている。


 要は、ブラフ確定だ。


 暗器をブラフにして飛んでくるのはナイフだろう。それが一番早いからな。でも早いとはいえ、暗器で注意を引く関係上、ナイフは遅れてくるのは必然だ。


 わかってるんだよ。この暗器はブラフで、ナイフが本命なこと。それがわかっていれば、後出しのナイフより先に、俺の攻撃が当たる...!


 にしても...。


「いったー」


 まだ立ってられるのかよ...。


 結構深手なはずだ。このまま戦ってたら、俺もこいつも共倒れになる。それは勘弁だ。


「やってやるよ」


 俺は左手のナイフを持ち直すと、迎撃の姿勢に入った。しかし、目に映ったのは女の背中だった。


「あんたと共倒れなんか嫌だし、あたし帰るわ」


「おい!!!」


「じゃ」


 あいつを逃すわけないはいかない...!


 俺はナイフを手放し、銃を握り、照準を合わせる。


 しかし、手が震えて合わない。おまけに地面から立ち上がれない。


 なんだよチクショウ...!


「クソっ!!!」


 悔しさが込み上げる。


 我慢だ。とりあえず助かったんだ。今は日暮たちを何とかしないと。


 しかし、時間が経っている。今から救急車を呼ぶしかないが、助かるかわからない。


 頼む、日暮、裕樹先輩。生きていてくれ...!






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