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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
28/80

第28話:奪還への道

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 怖い。それが今の私の内情だ。


 今朝、大斗から実がいなくなったと連絡が入ってから、学校を抜け出したが、気が気ではない。


 隣を走る虚の表情も、心配そうだ。


 走り始めてから数分経った頃、裕樹から連絡があった。

 それは、奴らのアジトがわかったこと。そしてそこに実がいる可能性が高いということ。


 それを聞いてから、向かう先が富岡町の廃ビルとなった。そして、私はある人物に連絡を入れてから、再発進した。


 向かっている最中は誰も喋らなかった。


 火花も虚も私も、とにかく、実の安否が心配でならない。そして、考えたくもない考えが頭をよぎる。


 道中、武装している半グレがいた。

 時刻は昼だ。この町は警察も機能しているし、人通りも結構ある。そんな中でこれは大事件だろう。案の定、警察車両が行き交っていた。


 あいつらの作戦?私たちが来ることを見越して、行動を制限している?時間稼ぎか。


 実の身に何が起きるかわからない。時間稼ぎなんて手を使っている時点で、危険な匂いがする。

 ただ、時間稼ぎをするということは、実が安全な可能性が高い。処分する気なら、直ぐに殺せるはずだからだ。


 まだ勝機はある。


 半グレや警察に見つからないように、なるべく早くやり過ごすと、ビルの近くまでやってきた。ビル付近は、表通りより寂れており、警察も、不思議と半グレすらもいなかった。


 こちらとしては好都合だが、警戒しておくに越したことはない。


「美月、突撃は」


 虚が落ち着かない様子でそう言った。


「気持ちはわかるけど、ちょっと待ってて」


 私は人を待っていた。もどかしい時間だが、辛抱してほしい。


 その人は偶然にもこの富岡町に住んでいる。こんな騒動が起きてるから、来るかどうかはわからないけど、来てほしい。


 数分待つと人影が見えた。


「美月さん。持って来ましたよ」


「ありがとうございます高橋さん」


 待っていたのは高橋さんだ。学校に武器は持ってきていないため、高橋さんに預けている予備の銃を持ってきてもらったのだ。


「いえいえ。にしても、事情は聞きましたが、大変なことになってますね」


「はい。場所は掴んでいるので、今から突入します」


「なら私も」


「高橋さんは敵の増援が来た時のために、外で待っていてください」


 本当は来てもらいたい。しかし、どうにもきな臭い。

 ここの周りだけ誰もいないのも、こんなに派手にやっているのも、何か裏があるような...。


 時間稼ぎをしているのにも関わらず、どこか私たちを誘い込んでいるような気もする。


「...わかりました」


 高橋さんは了承すると、自らの腰に挿した拳銃を握りしめた。


「虚は狙撃をお願い。このビルは穴だらけだから、狙えると思う。あと、ここら辺は使われてないビルが多いから、ポイントは簡単に見つけられる」


「でも」


「適材適所だよ、虚。私たちを信じて」


 そう言うと、虚は暫く間を置いた後に「わかった」と言った。


「よし。じゃあ突入は私と火花でやる。高橋さんは見張りで、虚は狙撃を頼んだよ」


 そして、突入作戦がスタートした。


 2人と別れ、私と火花は開け放たれたビルのドアにある物陰に隠れいていた。


 中を見ると、居る。外には居ないけど、中には10人ほどが銃を持って、執拗に辺りを見渡していた。


 しかし、実らしき影は無い。このビルは3階建てだ。1番上にいると考えるのが妥当だろう。


 厄介なのは、どれも見るからに構成員であること。それも、普通の構成員よりも強そうだ。


 クロウの構成員にもランクのようなものがあるらしく、私たちが今まで戦ってきたのはその底辺だった。


 この人たちは、その1個上くらいだろうか。


 奥の階段に行くためには、そんな奴らを倒さないといけない。


「火花、真剣じゃないけど大丈夫?」


「はい。木刀で十分です」


「そりゃ頼もしい」


 1個ランクが上だろうと関係ない。

 私と火花の実力を見くびらないで欲しい。


「あ、ここからはコードネーム使うけど、火花はフラワーで良い?」


「なんでも良いですよ」


「よし。じゃあ行こう、フラワー」


「はい」


 息を吐く。


 そして。


「「せーの」」


 物陰から一気に飛び出し、制圧の態勢をとる。


「侵入者だあああ!!!撃て撃て!!!」


 誰かがそう言うと、無数の弾丸が辺りを飛び交った。


 味方に当たらないように工夫をしているし、連携が取れている。敵ながら流石と言いたい。


 しかし、その程度なら何とかなる。


「フラワー!」


「はい...!」


 合図をすると、火花は私の真ん前に出る。


「2人で勝てると思うなああ!」


 そんな怒声と共に、銃弾が飛んできた。


「なっ!?」


 しかし、どれも火花に当たることはなかった。


 火花は自身に当たるであろう銃弾を、全て的確に木刀で防いだのだ。


 そしてある程度近づくと、火花が横にズレた。


「ナイス!」


 私は銃を構え、連続で3発撃った。


 3発とも前にいた構成員の頭に当たる。


「嘘だろ!?」


「あ、慌てるな!数でなんとかなるはずだ!」


 尚も銃を撃とうとするが、もう無駄だ。

 十分に近づいている。


 火花は前に踏み込むと、1人の頭に木刀を入れる。


 私も続こう。


「死ねええ!!!」


「遅いね」


 銃口を向けてから撃つまでが遅い。


 私は撃たれるよりも早くに撃った。


 撃たれた男は、白目を剥いて倒れる。


「殺せえええ!」


「うおおおお!」


 それを皮切りに、2人が私に飛びかかる。


 距離的に銃は不利だと気付いたのだろう、2人ともアーミーナイフを片手に持っている。


 1人が突き、1人が切りつける。中々に連携が取れているが、当たらない。


「クソがああああ!!!」


 1人が突っ込んできた。


 早い。ナイフを腹の前で構えている。


「死ねやああああ!!!」


「...」


 確かに早い。が、避けられる。


 私は体を横に向けて避けると、足をかけた。


「!?」


 すると相手は、体勢を大きく崩す。


 そしてそこに銃口を突きつけ、撃つ。


 血を吐き倒れる同胞を見て、間髪入れずにもう1人も突進してきた。


「うおおおおお!!!」


 今度は横振りだ。


 結構早い横振りが連続で来た。


「死ね死ね死ね!!!」


「焦っちゃ当たらないよ」


 何処を狙っているかが丸見えだ。狙いが分かれば、そこをナイフから遠ざけるだけで避けることができる。


「終わりだ!」


 遠くの1人が笑い声と共に、銃を撃つ。しかしそれも見えている。


「よっ」


 私は目の前でナイフを振る男の右手を取り、瞬時に関節を決める。


「えっ」


 すると、その男の額に銃弾がめり込んだ。


 その様子を見て、発砲した本人は「ひっ!?」と悲鳴を上げ、逃げようとした。


「逃げないでね」


 その背中を撃ち抜く。


 男は「ガハッ」と血を吐いて倒れた。


「あとは...」


 見回すが、敵がいない。


 あとは火花が全部やったみたいだ。


「強いねフラワー」


「あなたほどではありません。さ、2階へ行きましょう」


 そう言うと、2階に上がる階段まで歩く。その道中、私の足元に何かが当たった。


「ん?」


 下を見ると、1人の死体のポケットから、黒くて丸い何かが出ていた。見覚えがある。これは...。


「フラワー」


 指差す私の顔は、笑っていただろう。


「まさか...」


 戦慄する火花の顔は、他では見られないものだった。


 辺りを見ると、この人を含めて2人持っているのが分かった。

 私はそれを拾い上げると、1つを火花に渡し、2階への階段を登った。


 そして2階にたどり着いた。


「いるねー」


 階段の影から覗き込むと、1階と同じ位の構成員が立っていた。


 普通ならこの階段を登っていけば、3階に行けるだろうけど、わざとか自然にか、瓦礫で塞がれている。代わりに、反対側に簡易的な階段のような段差があり、そこから3階に登れそうだ。


つまり、3階に辿り着くためには、この2階を突っ切る必要がある。


 そこで、私と火花はさっき拾ったものを取り出す。


「さ、汚ねえ花火といこうか」


「本当にやるんですね...」


 2人の手に握られているものの正体、それは...。


「手榴弾ターイム」


 2人はピンを抜き、少し置いてから投げつける。


 部屋の真ん中に落ちたそれは、一瞬で爆発した。

 爆音と共に、断末魔が辺りに響く。


 ビル全体が揺れるほどの爆発だ。

 これは全滅したはず。


「ありゃー」


 見ると、案の定全滅していた。


 少し燃えているが、これ位なら階段まで進める。


「じゃ、行こう」


「は、はい」


 火花には少し刺激が強かったか。


 あとは3階を残すのみ。読みが正しければ、上に実がいるはずだ。


 私たちは早る気持ちのままに、脚を動かした。


「急ぎましょう」


「そうだね」


 階段に差し掛かる。


 その瞬間。


「!?」


 1発の銃弾が顔を掠めた。

 寸前で気づいたおかげで、なんとか避けることができた。


 しかし、何?さっきまでこんな奴いなかった。


「おっと、外しちまったな」


 その男は身長が2m近くあり、存在感が濃い。これだけの男が立っていたなら気づくだろう。気づかなかったということは、ずっとどこかに隠れていたということだが、この男が隠れられるほどの遮蔽は無い。


 用は、完全に気配がなかったのだ。


 この男は、これまでの奴らとは違う。格段に強い...!


「どれにしようかな」


 男は、そう言いながら私と火花を順に指差した。

 そして、その指が火花に止まる。


「決めた。今日の女はお前だぁ」


 瞬間、火花に向けて銃が向けられ、間髪いれずに銃弾が放たれた。


「くっ」


 火花はこれを何とか防ぐ。

 しかし、それを見越していたかのように、既に男の体は火花の近くにあった。


「食わせろ...!」


「っ」


 男の大ぶりな拳が火花に飛ぶ。それを防ぐことはできたが、体が大きく後ろに飛ばされてしまった。


「火花っ!?」


「行ってください!」


 火花はそう言うと、木刀を構えた。


 火花。

 今は一刻も早く急ぐべきだ。ここで足止めされるわけにもいかない。


 私は火花を信じる...!


「わかった...!」


 階段目がけて走り始めると、後ろから男が追いかけてきた。


「お前もだ!」


 しかし、私に触れることはできない。

 男の前には火花が立っていた。


「私が相手です」


 そう言って木刀を構える姿を最後に、火花は見えなくなった。


 待ってて火花、虚、みんな。そして、実。


 今、助ける...!



*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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