第28話:奪還への道
*不定期更新です。基本13時に更新してます。
怖い。それが今の私の内情だ。
今朝、大斗から実がいなくなったと連絡が入ってから、学校を抜け出したが、気が気ではない。
隣を走る虚の表情も、心配そうだ。
走り始めてから数分経った頃、裕樹から連絡があった。
それは、奴らのアジトがわかったこと。そしてそこに実がいる可能性が高いということ。
それを聞いてから、向かう先が富岡町の廃ビルとなった。そして、私はある人物に連絡を入れてから、再発進した。
向かっている最中は誰も喋らなかった。
火花も虚も私も、とにかく、実の安否が心配でならない。そして、考えたくもない考えが頭をよぎる。
道中、武装している半グレがいた。
時刻は昼だ。この町は警察も機能しているし、人通りも結構ある。そんな中でこれは大事件だろう。案の定、警察車両が行き交っていた。
あいつらの作戦?私たちが来ることを見越して、行動を制限している?時間稼ぎか。
実の身に何が起きるかわからない。時間稼ぎなんて手を使っている時点で、危険な匂いがする。
ただ、時間稼ぎをするということは、実が安全な可能性が高い。処分する気なら、直ぐに殺せるはずだからだ。
まだ勝機はある。
半グレや警察に見つからないように、なるべく早くやり過ごすと、ビルの近くまでやってきた。ビル付近は、表通りより寂れており、警察も、不思議と半グレすらもいなかった。
こちらとしては好都合だが、警戒しておくに越したことはない。
「美月、突撃は」
虚が落ち着かない様子でそう言った。
「気持ちはわかるけど、ちょっと待ってて」
私は人を待っていた。もどかしい時間だが、辛抱してほしい。
その人は偶然にもこの富岡町に住んでいる。こんな騒動が起きてるから、来るかどうかはわからないけど、来てほしい。
数分待つと人影が見えた。
「美月さん。持って来ましたよ」
「ありがとうございます高橋さん」
待っていたのは高橋さんだ。学校に武器は持ってきていないため、高橋さんに預けている予備の銃を持ってきてもらったのだ。
「いえいえ。にしても、事情は聞きましたが、大変なことになってますね」
「はい。場所は掴んでいるので、今から突入します」
「なら私も」
「高橋さんは敵の増援が来た時のために、外で待っていてください」
本当は来てもらいたい。しかし、どうにもきな臭い。
ここの周りだけ誰もいないのも、こんなに派手にやっているのも、何か裏があるような...。
時間稼ぎをしているのにも関わらず、どこか私たちを誘い込んでいるような気もする。
「...わかりました」
高橋さんは了承すると、自らの腰に挿した拳銃を握りしめた。
「虚は狙撃をお願い。このビルは穴だらけだから、狙えると思う。あと、ここら辺は使われてないビルが多いから、ポイントは簡単に見つけられる」
「でも」
「適材適所だよ、虚。私たちを信じて」
そう言うと、虚は暫く間を置いた後に「わかった」と言った。
「よし。じゃあ突入は私と火花でやる。高橋さんは見張りで、虚は狙撃を頼んだよ」
そして、突入作戦がスタートした。
2人と別れ、私と火花は開け放たれたビルのドアにある物陰に隠れいていた。
中を見ると、居る。外には居ないけど、中には10人ほどが銃を持って、執拗に辺りを見渡していた。
しかし、実らしき影は無い。このビルは3階建てだ。1番上にいると考えるのが妥当だろう。
厄介なのは、どれも見るからに構成員であること。それも、普通の構成員よりも強そうだ。
クロウの構成員にもランクのようなものがあるらしく、私たちが今まで戦ってきたのはその底辺だった。
この人たちは、その1個上くらいだろうか。
奥の階段に行くためには、そんな奴らを倒さないといけない。
「火花、真剣じゃないけど大丈夫?」
「はい。木刀で十分です」
「そりゃ頼もしい」
1個ランクが上だろうと関係ない。
私と火花の実力を見くびらないで欲しい。
「あ、ここからはコードネーム使うけど、火花はフラワーで良い?」
「なんでも良いですよ」
「よし。じゃあ行こう、フラワー」
「はい」
息を吐く。
そして。
「「せーの」」
物陰から一気に飛び出し、制圧の態勢をとる。
「侵入者だあああ!!!撃て撃て!!!」
誰かがそう言うと、無数の弾丸が辺りを飛び交った。
味方に当たらないように工夫をしているし、連携が取れている。敵ながら流石と言いたい。
しかし、その程度なら何とかなる。
「フラワー!」
「はい...!」
合図をすると、火花は私の真ん前に出る。
「2人で勝てると思うなああ!」
そんな怒声と共に、銃弾が飛んできた。
「なっ!?」
しかし、どれも火花に当たることはなかった。
火花は自身に当たるであろう銃弾を、全て的確に木刀で防いだのだ。
そしてある程度近づくと、火花が横にズレた。
「ナイス!」
私は銃を構え、連続で3発撃った。
3発とも前にいた構成員の頭に当たる。
「嘘だろ!?」
「あ、慌てるな!数でなんとかなるはずだ!」
尚も銃を撃とうとするが、もう無駄だ。
十分に近づいている。
火花は前に踏み込むと、1人の頭に木刀を入れる。
私も続こう。
「死ねええ!!!」
「遅いね」
銃口を向けてから撃つまでが遅い。
私は撃たれるよりも早くに撃った。
撃たれた男は、白目を剥いて倒れる。
「殺せえええ!」
「うおおおお!」
それを皮切りに、2人が私に飛びかかる。
距離的に銃は不利だと気付いたのだろう、2人ともアーミーナイフを片手に持っている。
1人が突き、1人が切りつける。中々に連携が取れているが、当たらない。
「クソがああああ!!!」
1人が突っ込んできた。
早い。ナイフを腹の前で構えている。
「死ねやああああ!!!」
「...」
確かに早い。が、避けられる。
私は体を横に向けて避けると、足をかけた。
「!?」
すると相手は、体勢を大きく崩す。
そしてそこに銃口を突きつけ、撃つ。
血を吐き倒れる同胞を見て、間髪入れずにもう1人も突進してきた。
「うおおおおお!!!」
今度は横振りだ。
結構早い横振りが連続で来た。
「死ね死ね死ね!!!」
「焦っちゃ当たらないよ」
何処を狙っているかが丸見えだ。狙いが分かれば、そこをナイフから遠ざけるだけで避けることができる。
「終わりだ!」
遠くの1人が笑い声と共に、銃を撃つ。しかしそれも見えている。
「よっ」
私は目の前でナイフを振る男の右手を取り、瞬時に関節を決める。
「えっ」
すると、その男の額に銃弾がめり込んだ。
その様子を見て、発砲した本人は「ひっ!?」と悲鳴を上げ、逃げようとした。
「逃げないでね」
その背中を撃ち抜く。
男は「ガハッ」と血を吐いて倒れた。
「あとは...」
見回すが、敵がいない。
あとは火花が全部やったみたいだ。
「強いねフラワー」
「あなたほどではありません。さ、2階へ行きましょう」
そう言うと、2階に上がる階段まで歩く。その道中、私の足元に何かが当たった。
「ん?」
下を見ると、1人の死体のポケットから、黒くて丸い何かが出ていた。見覚えがある。これは...。
「フラワー」
指差す私の顔は、笑っていただろう。
「まさか...」
戦慄する火花の顔は、他では見られないものだった。
辺りを見ると、この人を含めて2人持っているのが分かった。
私はそれを拾い上げると、1つを火花に渡し、2階への階段を登った。
そして2階にたどり着いた。
「いるねー」
階段の影から覗き込むと、1階と同じ位の構成員が立っていた。
普通ならこの階段を登っていけば、3階に行けるだろうけど、わざとか自然にか、瓦礫で塞がれている。代わりに、反対側に簡易的な階段のような段差があり、そこから3階に登れそうだ。
つまり、3階に辿り着くためには、この2階を突っ切る必要がある。
そこで、私と火花はさっき拾ったものを取り出す。
「さ、汚ねえ花火といこうか」
「本当にやるんですね...」
2人の手に握られているものの正体、それは...。
「手榴弾ターイム」
2人はピンを抜き、少し置いてから投げつける。
部屋の真ん中に落ちたそれは、一瞬で爆発した。
爆音と共に、断末魔が辺りに響く。
ビル全体が揺れるほどの爆発だ。
これは全滅したはず。
「ありゃー」
見ると、案の定全滅していた。
少し燃えているが、これ位なら階段まで進める。
「じゃ、行こう」
「は、はい」
火花には少し刺激が強かったか。
あとは3階を残すのみ。読みが正しければ、上に実がいるはずだ。
私たちは早る気持ちのままに、脚を動かした。
「急ぎましょう」
「そうだね」
階段に差し掛かる。
その瞬間。
「!?」
1発の銃弾が顔を掠めた。
寸前で気づいたおかげで、なんとか避けることができた。
しかし、何?さっきまでこんな奴いなかった。
「おっと、外しちまったな」
その男は身長が2m近くあり、存在感が濃い。これだけの男が立っていたなら気づくだろう。気づかなかったということは、ずっとどこかに隠れていたということだが、この男が隠れられるほどの遮蔽は無い。
用は、完全に気配がなかったのだ。
この男は、これまでの奴らとは違う。格段に強い...!
「どれにしようかな」
男は、そう言いながら私と火花を順に指差した。
そして、その指が火花に止まる。
「決めた。今日の女はお前だぁ」
瞬間、火花に向けて銃が向けられ、間髪いれずに銃弾が放たれた。
「くっ」
火花はこれを何とか防ぐ。
しかし、それを見越していたかのように、既に男の体は火花の近くにあった。
「食わせろ...!」
「っ」
男の大ぶりな拳が火花に飛ぶ。それを防ぐことはできたが、体が大きく後ろに飛ばされてしまった。
「火花っ!?」
「行ってください!」
火花はそう言うと、木刀を構えた。
火花。
今は一刻も早く急ぐべきだ。ここで足止めされるわけにもいかない。
私は火花を信じる...!
「わかった...!」
階段目がけて走り始めると、後ろから男が追いかけてきた。
「お前もだ!」
しかし、私に触れることはできない。
男の前には火花が立っていた。
「私が相手です」
そう言って木刀を構える姿を最後に、火花は見えなくなった。
待ってて火花、虚、みんな。そして、実。
今、助ける...!
*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。




