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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第0章:プロローグ
2/80

第2話:何でも屋シルバー《前》

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

「私たちの組織に入ってくれない?」


 言い終わった後、彼女は可愛らしい笑みを浮かべた。


「......」


「......」


 沈黙が続く。

 彼女の顔も段々と崩れて...無い。笑みだ、怖いくらい。


「返事は?」


 決まってる。


「普通に断ります。ではここらで...」


 再び立ち去る。


 ヤバい人すぎる。

 絶対関わっちゃいけないやつだ。二つ返事で「是非!」とか言ったら最悪死ぬやつだろ。


 そろーっと少しだけ後ろを振り向くと、追いかけられていないことがわかった。


 諦めてくれたならいいけど。


 しばらく警戒しながら歩いていると、不意に後ろから大きな声が聞こえてきた。


「大斗くーん!脚痛くないー?」


 声の発生源はあのjkだ。


 脚痛くない?なんだそりゃ。


「痛いわけ...って」


 途端に立っていられなくなるほどの激痛が腿を襲う。


 なんだこれ痛すぎる。痛い痛い痛い痛い痛いたいたいたいたいたいって!!!

 正直、悲鳴すら出ない。


「いっ!?あっ!?」


 代わりに変な声が途切れ途切れに出る。


「さっ、きのっ、じゅうだっ」


「ふふふ、つっかまえたー」


 妙にテンションの高い声と共に、ゆっくりと屈むjk。


 逃げたい、けど、これは。

 無理なやつだ。


「大丈夫?」


 そう言って、悶絶しながら腿を抑える俺を、彼女は覗き込む。


「きゅ、救急車」


「そうだね」


 彼女は鞄から包帯を取り出し、慣れた手つきで俺の脚に巻いていく。巻き終わったと思えば、俺のことを負ぶった。


「な、にを」


「病院行くんだよ」


「きゅ、きゅうきゅう...しゃ」


 意識が遠のく。

 嘘...だろ...?


 完全に闇に包まれた。




「いってらっしゃい、大斗」


「行ってきます、お母さん!」


 ドアを開けると、夏の熱気と蝉の声が玄関に蔓延する。


「大斗、気をつけろよ」


「わかってるよ、お父さん!お父さんこそ、そのペンダント無くさないようにね!」


「はは、そうだな」


「じゃあ、行ってくるね!」


 父さんはいつも銀色のペンダントをしていた。

 あの日も、最期まで持っていたらしい。


 遺品を渡された時、そう言われた。


 放火。

 父さんと母さんは俺が友達と遊びに行っているときに、何者かによって家を放火され、そのまま...。


 父さん、母さん、どうして...。

 一体誰が。


 瞬間、辺りを光が包む。




「あ...れ...」


 目を開ける。

 見知らぬ天井だ。リアルでこんなこと起きるとは思わなかった。


「お、目を覚ましましたね」


 誰かが柔らかい笑みを浮かべている。

 目の前にはあの黒髪jkではなく、デカい乳の...じゃなく、ショートな銀髪が特徴の白衣を着たお姉さんだ。なんかエロ...。


 いや、そんなこと言ってる場合ではない。


「あの、ここって...それに、どちら様ですか?」


「ここは病院です。あと私の名前は芦田結花あしだゆいかです。しばらく意識を失っていたのですが...無事で良かったです。銃弾がもうちょっと右にズレてたら、危なかったですよ」


「はぁ、ありがとうございます。にしては、その...」


 辺りを見渡す。

 設備が心許ない気がするし、どこか生臭い。


 俺の不安げな顔を見た芦田さんは、にっこりと微笑んだ。


「あー、ここは闇病院ですよ。裏社会の救命施設です」


「なんだってこんなところに」


「私もわかりませんが、まぁここに運んできたってことは、何かあるんでしょう」


「あ、そういえばあの人は」


 見回すがそれらしい人物はいない。


「美月はコンビニに行ってますよ。もうすぐ帰ってくると思います」


 美月?あいつの名前か。

 心の中で首を傾げていると、勘づいたかのように芦田さんは口を開いた。


「あの子は白井美月(しらいみづき)。変な子だけど、良い子ですよ......変な子だけど」


「ハハハ、そうですか」


 良い子、ねぇ。今のところ変な子でしかないんですが。現に芦田さんも変な子強調してるし...。


 そんなことを思っていると、廊下の方からスキップのような軽快な足音が聞こえてきた。

 人が怪我して入院してんのにスキップかよ、不謹慎だな。


「結花ー!大斗くん起きたー?」


 大声が廊下に響く。


「噂したら来ましたね」


「来てほしくなかったんだけど」


「お?その声は」


 苦言が聞こえたのか、先ほどのステップが駆け足に変わって近づいてきた。


「起きたね、大斗くん」


 白井さんだったか。彼女は右手にコンビニ袋を持っていた。


「は、はい、おかげさまで助かりました。で、その、何でここに?」


「それはね、大斗くんの命が狙われてるからだよ。普通の病院だと暗殺されちゃうんだよ」


「あー、そういう理由が。なるほどねぇ」


 こりゃまいったな。


「納得した?じゃあ組織に」


 するか。


「するか!!!なんだそれ、バカバカしい。もっとまともな設定をだな」


 反論すると白井さん、いや、白井は人差し指を顎に当て、考えるポーズをとった。


「キミ、さっき殺されかけたこと覚えてないの?」


「それは...」


言い淀むと、彼女は顎に当てた人差し指を、中空に立てた。


「大斗くんを殺そうとした組織は、私たちが狙ってた組織なんだ。組織名はCROWで、私たちは〝黒〟って呼んでる。何年も何年も追い続けている宿敵でね、そんな奴らの動きが怪しいって気づいて、周辺を探ってみたら、キミが中心に浮かび上がったんだ。で、私たちはキミの周辺を隈なくチェックしてた」


「俺が狙われる理由が無いだろ。少なくとも俺自身は身に覚えがない」


「理由はわからない。でもここ数週間、ヤツらにずっとキミは監視されてたよ。気づかなかったかもしれないけどね」


 そう話すと、彼女は珍しく真面目な顔をした。


「キミは何故だか命を狙われている。そして、私たちはあの組織を狙っている。だから私たちの元へ来てほしい」


「......俺が入れば命は安全。そして、俺がいれば、その組織が狙って近づいて来るから好都合ってことか」


 考える。

 重要なのは信用に足るか、だ。

 嘘、と一括りにしたら死ぬかもしれない。本当かはわからない。が、嘘ならおかしいことはある。


 俺が助かったのはこいつが来たからだ。でも、あんな都合よく来るか?こいつは俺の周りをチェックしていたと言った。それが本当なら、あのタイミングで俺を助けた理由がつく。


 ただ、あまりにも突拍子が無さすぎる。


「すまないが、ことわ...」


 言葉が詰まる。

 ...嫌な予感がする。


 あの日以来、嫌な予感がするものに興味を持ち、欲望に抗えずに痛い目にあってきた。

 だが、今回のは違う。

 何かが全力で言うなと言っている。


「......」


「どした?」


 俺は小さくため息を吐くと、顔を上げた。


「お前を信じる。入るよ、お前の組織に」


 そう言うと、彼女はどこか安心した様な顔を浮かべて微笑んだ。


「それは良かった」


「ただし、俺が騙されたと思ったら、すぐ抜けるからな」


 彼女は俺の発言を聞いた途端、わざと「ニヒヒ」と気味の悪い笑い声を上げた。


「抜けられたら、ね」


「お前...!」


「ははは!」


 声を上げて笑う彼女を尻目に、芦田さんは立ち上がった。


「事情は知りませんけど、なんか良かったですね。でも、3日は入院してもらいますよ」


 芦田さんが釘を刺すと、子供のような仕草で「えー」と言った。


「ま、いいや。改めまして朝霧大斗くん。キミを我が組織、()()()()()()()()の一員として、歓迎するよ」


「お、おう」


「これからよろしくね!」


 そう言って足速に立ち去っていった。


 何でも屋シルバー、か。

 さて、これからどうなるのやら...。

*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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