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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第1章:虚実編
13/80

第13話:任務開始

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 翌朝。


 俺たちは依頼主と会うため、一ノ瀬組へと向かっていった。

 門の前まで行くと、そこにはスーツを着た1人の男。と、もう1人、残暑の中、とても暑そうな格好をした人が立っていた。


 フードとマスクのせいで顔はよく見えないが、体格からしておそらく女の人だ。しかも、若い。


「依頼主の名取健太郎さんですね?えと、そちらの方は」


 ホワイトが笑顔を向けながら問うと、名取さんは「はい」と言った後に、後ろのもう1人を見つめた。


「こいつは私の娘です。あなた達を信用していないわけではありませんが、念には念を入れて、顔を隠したいのです...。私のせいでこの子を巻き込むわけにもいかないので...」


「あー、なるほどわかりました!いいですよ、命のためですからねー」


 朗らかに流す。結構あっさりとオッケーを出していたが、普通にいいのか?それ。と思わなくもない。まあ、リーダーが決めたことだし、異存はないんだけどさ。


「依頼を承りました、ホワイトです。ここに居るのが、右からルーク、サブ、ホーク、チキンです。本名ではありませんけど、任務中はこの名前で行きますので、ご了承くださいね」


 そっか、コードネームなんて概念あったな。これまでは敵が黒の構成員じゃ無かったし、そもそも名前を呼ぶようなことも無かったから忘れてたわ。


「はい、わかりました」


 名取さんは覇気のない顔で了承した。


 聞く限り、命を狙われて結構経っている。色んな嫌がらせを受けてきただろうし、一度殺されかけてもいる。そりゃこんだけやつれるわな...。


「じゃ、作戦通り行くよ。運転よろしく、サブ」


「へいへーい」


 サブこと日暮が運転席に乗り込むと、助手席にホワイト、後部座席に俺と依頼主の2人が乗った。


 俺たちと虚、裕樹先輩は別行動だ。


「安全運転頼むよ!」


 ホワイトがサムズアップすると、隣の日暮は「なんで私が」とかブツクサ文句を言っていた。


「じゃ、お2人はバックアップよろしく」


「任せとけ...いでででで」


 快い返事をしたものの、虚が髪を引っ張って台無しだ。カッコつかないっすね、先輩。


「そっちも頼んだ」


 虚はそう言って助手席に座る。


「運転係、行くよ」


「わかったわかった」


 裕樹先輩はただの運転係らしい。ドンマイ。


「作戦行ってみよー!」


 ホワイトは大きな声を上げて作戦開始の合図を出した。

 それぞれの車が進んでいく。


 俺は流れる景色と共に作戦を思い返すことにした。


 今日のゴールは、某県の山奥にある別荘だ。そこまで護衛をするというのが、俺たちの役割となっている。

 目的地に辿り着くのに、当然車を使うわけだが、これまでの被害から、移動中に狙われるリスクが高い。


 戦闘になった時のために、虚たちはGPSを使って、俺たちの車と並行する様に下道を通る。

 それは虚の本業がスナイパーだからだ。昨日聞いたが、虚はスナイパーらしい。スナイパーはスナイプするために、安全な高台に着かなきゃならない。そのため、俺たちと一緒にいると、本領を発揮できないのだ。ただ、虚は運転できないから、裕樹先輩に運転させてもらっているというわけ。


 これで全部だ。よくよく考えたら、作戦という作戦ではない気がする。結局その時はその時で、臨機応変に対応しろってのが結論だ。


 そうこう考えている内に、高速道路に乗った。高速道路内は無人だ。それもそのはず、一之瀬組の方々が色々頑張って、高速道路、及び、虚たちが通る下道を通行止めにしたのだから。


 もはや無茶苦茶だ。権力が強すぎるというか、規模がデカすぎる。


 まあ、そのお陰で車がいないため、どさくさに紛れて暗殺とか、渋滞とかは無いんだが...。


 そんなことを思いながら、走らせていると、ホワイトのスマホに着信が入った。


「はい」


 すると、焦ったような男の声が車内に響いた。


『バリケードを無理やり突破された!後ろから2台だ!2台そっちに向かってる!』


「わかった。なんとかする」


『お、俺たちも追いかけた方がいいか?』


「要らないよ。これ以上一之瀬組のみんなに迷惑かけるわけにいかないしね。じゃ」


 そう言って電話を切る。


 どうやら追いかけられているらしい。

 車内に緊張が走る。


 その瞬間、後ろの方から「チューン」と音が聞こえた。


 この音は聞いたことある。これは、銃弾が地面に当たって跳ねた時の音だ。

 てことは...。


 バックミラーを見る。


 すると、100メートル程後ろに黒塗りの車が2台いた。間違いなく追われてる。


「サブ、スピードアップ」


 ホワイトがしきりに前後を確認しながら指示を出すと、日暮は「アイサー!」とヤケクソ目に返事をした。


「だ、大丈夫なのか?」


「大丈夫じゃないかもね」


 距離が縮んで来てる。

 日暮はアクセル全開だ。これは単純に性能差で負けてるっぽい。


 ...まずくね?


 距離が縮み、更なる緊張感が車内を包む中、またもや着信音が鳴り響いた。


「はい」


『た、大変だ!!!』


 声からして別の人だが、明らかに焦りようが半端ない。なんだ?


『1台!バリケードを突破しやがった!後ろじゃねえ!前だ!逆走してそっち行ってる!!!』


 その瞬間、目の前に同じ車線で、すごい速度で突っ込んでくる車の姿が映った。


「サブ、前!!!」


 ホワイトが叫ぶ。


「ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 サブが叫ぶ。


 やばいやばいやばいやばい。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。


 避けようとしたのだろう。車内に横向きのGが加わり、阿鼻叫喚の地獄絵図が広がった。


 車は暫く回転を続け、その後に止まった。


 衝突はしていないが、この車はもう動きそうもない。それに


「出てこい」


 3台の車が停車し、数発の銃弾が窓ガラスを割った。


 追っかけてきた奴らは車線を変えて、避けたらしい。ナイスプレーだ!って褒めてる場合ではない!


 俺たちは焦りながら車の影に隠れる。5人隠れるには狭すぎるけど、仕方ない。


「もう逃げられんぞ。さっさと出てこ」


 撃った。日暮が割れた窓ガラス越しに、近づいてきたやつの頭を撃ち抜いた。


 速い。流石師匠だ。


 間髪容れずに、ホワイトも数発銃弾を放つと、たちまち奴らも警戒体制に入り、車の影に隠れた。


 ここんとここんなんばっか。


「こ、これも作戦のうちなんですよね」


 心配そうに言う名取さんに、ホワイトは微笑みながら「安心してください」と言った。


「こうならないに越したことは無いですが、こうなることも織り込み済みです。そのためにあの子を用意してるんですから」


 その時、また電話が鳴った。


「はいはーい」


『狙撃ポジションに着いた』


「うん、絶賛拮抗中。応援求む」


『了解』


 ピッと電話を切る。


 声の主は虚だろう。そして、虚が狙撃ポジションに着いた、と言うことは。


「相手は少数だ!押し切れ!」


 向こう側の誰かがそう言って立ち上がった。そして、他の者も立ち上がり、こちらに向かって来る。


 が、音もなく倒れた。


 立ち向かった者が、1人、また1人と血を吐き倒れる。


「お、おい、もど」


 戻ろうとした者も倒れる。


「凄えな」


 俺は思わず感嘆の声を漏らしてしまった。


 これが何でも屋シルバーの名狙撃手の実力...!


 その薄く開かれた冷たくも鋭い目は、確実に獲物の急所を狙って逃さない。





















*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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