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ブラック&ホワイト  作者: 芋太郎
第0章:プロローグ
11/80

第11話:開戦

*不定期更新です。基本13時に更新してます。

 俺、日暮、火花、亮吉、重蔵、他一之瀬組構成員諸々が門から出ると、ゾロゾロと武装した柄の悪い連中がやってきた。ただの武装じゃない、全員拳銃を手にしている。しかも、数も多い。30人以上はいるのではないだろうか。こんなもんに一斉に撃たれたら終わるんじゃないか?大丈夫か?


「これ、いかんやつじゃない?」


 俺は恐怖に震える声を発すると、隣にいる日暮は「大丈夫、大丈夫」と言って肩を叩いた。


「あの方たちの背後には、あなたの仲間がいます。手筈通りに行けば、死ぬことはないでしょう」


 火花さんは長い髪を靡かせ、淡々と言ってのけた。


 その言葉には自信が込められているように感じる。それは火花さんだけでなく、俺以外を除いたここにいる全員がそう思っているだろう。誰も迷い無く、勝利を確信している。


 だが、俺はまだそう思えない。だってそうだろ?こっちはせいぜい10人ちょっとだ。ただ、相手は30人以上いる。完全に人数差がある。作戦があったとしても、例え強くても、死傷者なしでうまくいくなんてのは、絵空事にしか聞こえない。


「ま、見とれ、倅」


 火花さんの師匠、重蔵さんはそう言って一歩前に出た。


「儂等は強い。そしてこの戦いは倅にもいい経験になるじゃろ。よーく、見とるんじゃぞ」


 振り返りニッと歯を剥けると火花さんの方を向いた。


「火花、抜け」


「はい、師匠」


 その合図を皮切りに、2人の雰囲気が変わる。

 金属の音を鳴らしながら、鞘から抜かれたものは、あの日見た木刀や、竹刀ではなく、紛れもなく真刀だった。


「ヤクザ風情が、俺らに勝てると思ってんのかぁ!!!」


 ドスの効いた低い声とともに、正面にいる全員が銃をこちらに向ける。


「死ねやあああああ!!!」


 一斉にトリガーを引く、俺、日暮、亮吉、その他構成員は路上駐車している車や、電柱の影を使って隠れる。


「これ、どうするんですか!?弾幕張られたらどうにも...」


 俺と日暮は近くの車の影に隠れている。何発か俺の頬をかすめており、心底怖いのだが、隣の日暮は余裕そうだ。


「大丈夫だよ。その為に後ろに美月たちを用意してるんだから。それに...」


 日暮は外を指差し、俺に見るように促した。

 いや、見るのは無理ですよ。と思ったが、なんだか弾幕が薄れてきたため、ちょっとだけなら行けそうだ。


 俺は勇気を出して少しだけ覗いた。


「!?」


 すごい光景が広がっていた。


 2人の剣士が、銃弾の雨を掻い潜りながら、バッサバッサと薙ぎ倒していたのだ。

 弾幕が薄れたのも、彼らが倒していたからだった。


「やっば...」


 元からない語彙力がゼロになるほどの光景に、息を呑む。


 てかなんで当たってないんだよ銃弾。おかしいだろ。あの弾幕だぞ。


「な、なんで当たって...」


 開いた口で無理矢理声を発すると、隣の日暮が口を開いた。


「あれね、動きが速すぎて当たんないんだよ。狙いも定まらないし、定まってなかったら当たらない。着弾地点にはもうあの人たちの見る影もなくて、訳もわからないままやられていく」


「なんだよ、それ」


 強すぎる。あのお爺ちゃんも火花さんも、強いってものじゃねえ。これは強すぎる。


「才能の産物か、努力の賜物か。いるんだよねぇ、この世界ではたまに。私たちはそんな芸当、到底できないから、こうやって」


 自重気味に言いながら、車の影から身を乗り出し、銃弾を数発放つ。直後「グアア」と断末魔が聞こえた。


「弾幕が薄れたタイミングを狙って撃つしかない」


「...努力の賜物って、努力すればああなれるのか?」


「どうだろ。まあ、少なくともあの2人は才能よりかは、努力したって感じだね。それも並みの努力じゃなく、想像も絶するような訓練を毎日何時間も欠かさず、ね」


「...無理だな」


 戦慄に声を振るわせると、日暮は「だね」と笑いながら言った。


「ま、天才よりかは現実的だけどさ」


 何か言ったように聞こえたが、小声だったこともあり、聞こえなかった。


「なんか言いました?」


「なんでもない。それより、あの2人でも十分だけど、そろそろ私たちも参戦しよっか」


 見ると敵も最初にあった勢いはなく、10人くらいまでには減ってる。


「行くぞ!」


 電柱の影に隠れていた亮吉さんの合図を元に、全員が反撃を開始すると、一瞬にして型がついた。


「すごいねえ火花。私たち必要ないじゃん」


「マジですごいな、火花ちゃん」


「グッジョブ」


 陽気に手を振りながら、ホワイトと裕樹先輩、虚が向かってきた。


 俺は抗議すべく、あいつに近づく。


「おい、聞かされて無かったんだが?」


 問い詰めると、ケロッとした表情で「だって」と言い放ち


「この作戦の肝はキミでしょ?でもキミにこのこと知らせたら、ビビって辺りをキョロキョロして、返って警戒されちゃうじゃん」


と言った。


「もっともらしい理論をぶつけやがって...」


「ま、そんなこと言ってるけど、実際は学ぶところも多かったのでは?」


「...確かにそうだけど...なんか良いように言いくるめられてる気がする」


「ふふふ、ま、そうだねー」


 俺たちが話していると、皆が集まってきた。


「何か言うことはないのか、美月」


 亮吉さんが左腕を腰に当て、美月を見下ろした。


「あ、みんな、ありがとうねー!」


「儂も久々に楽しめたわい。ま、口ほどでも無かったがの、ほっほっほ」


 重蔵さんは楽しそうに言うと、俺の方を一瞬見つめた後、手を挙げながら歩いて行った。


 それに着いて行くように火花さんも歩き始める。両者とも方向は一之瀬邸だ。また修行でもするのだろう。今戦ったばっかなのに恐ろしいな。


「あ、火花、ありがとね!」


「はい」


 端的に告げる。

 火花さんがホワイトの前を過ぎる一瞬、何かを感じた。


 ま、知らんこっちゃないが...。


「生きている奴は全員目覚め次第尋問だ。死んだやつは山に埋める。いいな!」


「「「はい!!!」」」


 亮吉さんが指示し、組員は遂行するために作業に移った。亮吉さん怖いし、大変そうだ。ただ、それでも皆、文句の一つも言わずに従うものだから、やはり、人となりが出てるんだろう。相当な人格者だ。


「私たちは帰ろっか」


 皆、適当に返事して歩き出す。


「本格的に命を狙われる気分はどうでしょうか、大斗くん?」


「聞く必要あるか?最悪だよ」


「でも、これで俺たちを信じられるな?」


「まあ、そうですね。信じるしかない、って感じです」


 肩をすくめると、横を歩くホワイトが真剣な顔を浮かべた。


「多分、さっき襲ってきたのは(クロウ)の息がかかった奴らで間違いないと思う。ただ、強さからして構成員では無かった。構成員はもっと強いからね」


「マジかよ」


「うん。多分その辺の半グレを何かで釣ったんでしょうね。様子見か、戦力を見るためか...。いずれにせよ、奴らが本腰を入れたって考えていいね。とすれば、こちらも何かアクションを起こさないとねー」


 皆、真剣な表情を浮かべる。


 ホワイトは「大斗くん」と言って、俺の目を見つめた。


「覚悟は、できてる?」


 覚悟、か。

 その覚悟が何を示しているか、具体的にはわからない。いや、多分俺が想像しうる全てのことを指しているのだろう。


 それは、戦う覚悟。それは、命を賭ける覚悟。それは、仲間を失う覚悟。


「できているか」と聞かれて正直に「はい」と即答できるタマは持ち合わせていない。


 ただ


「死にたくないからな。覚悟云々は知らないが。頑張りはするさ」


「なにそれ、頼りないね」


 ホワイトはクスクス笑う。


「でも、それで十分だよ」


 夕陽はもう沈みかけており、街は色づき始めていた。


 BARゴールデンが始まる前に帰るため、足早に帰路に着いた。




 月の光も入らない暗い廃墟に、青白いモニターの光が充満している。


 モニターの前には男が1人、不敵な笑みを浮かべながら映像を見ていた。


「無理かぁ。想像以上にターゲットの周りがガチガチだな。こりゃ、量より質を高めなきゃ無理っぽいなー」


 男は失敗したにも関わらず、どこか楽しげな表情を浮かべ、手に持っていたチェスのコマを並べる。


「にしてもすげーなー、この2人。相手が雑魚だからって39人全員銃持ちだぜ?イカれてるよ」


 男は、その狂気の孕んだ眠そうな目を画面に向けて、何度も何度も映像を巻き戻した。


「1人は知らねえけど、1人は知ってるぞ。確か、新倉重蔵だったか。鬼の剣豪、伝説の人斬り、とか異名があったよなぁ。実力も、名前にそぐわない。これは...」


 男は声を上げて笑った。

 男にとって楽しくて仕方がなかった。


 その笑い声は誰もいない廃墟に響く。


 ひとしきり笑った後、男は目を見開いた。


「新倉重蔵。こりゃ面白いことに使えそうだな!ははっ、楽しみだなぁ。全く、これは...」


 上を見上げ、手を挙げる。恍惚とした表情には、今にも人を殺しそうな狂気を孕んでいた。


「楽しみだぁ...!」



          ーーープロローグ(完)








*プロローグが終わりました。


*面白いと思ったら、高評価していってくれると嬉しいです。

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