ジェラルド・スカイライン。
王宮の大門まではスタンフォード家の馬車で乗り入れる。
そのまま馬車回しにつけ、まず降りたのは真っ赤な髪で長身の、若い騎士だった。
「お気を付けてくださいませ。奥様」
そうここまでシルフィーナに同行してきていた侍女のリーファを馬車に残し、ゆったりと馬車の戸口に手をかける。
「お手をどうぞ、シルフィーナ様」
先に降りた赤髪の騎士が、そうゆったりと手を差し伸べた。
「ジェラルドさま、ありがとうございます」
そう言って彼の手を取るシルフィーナ。
旦那さま以外にはセバスや護衛の方にこうしてエスコートして頂いたことはあったけれど、明らかに貴族の方、それもこんな若い青年に手を差し伸べられた経験はなかったから。
少し恥ずかしさも感じながら馬車を降りる。
それでも、ここまでしっかりとドレスを着込んだ状態では一人で馬車から降りるのはなかなか難しい。
ドアにもっと長い取手が欲しいかも。そうも思ってしまう。
ジェラルドの手を借りて何とか馬車を降りたシルフィーナ、そのままジェラルドにエスコートされるままに王宮外苑の長い回廊を歩いていった。
流石に、王宮の中に家人の護衛を何人も連れて歩くことはできない。
そもそも武器の類も携帯を許されないのだ。
貴族の、それも許可のあるものだけしか入室を許されない魔道士の塔であればなおさら。
ここまでついてきてくれた侍女のリーファや御者兼護衛の家人は待合で待たせておくことになる。
そんな状態の場所に、シルフィーナを一人行かせることはサイラスも認めることは出来なかった。
いくら魔道士の塔に行くことが彼女のためになることだとはいえ、それだけはできない、と。
そこでシルフィーナに同行させることにしたのが今回の騎士ジェラルドだったのだけれど。
騎士団に入団したのはつい2年ほど前だから、そこまで信頼を寄せている部下というほどではなかったけれど。
消去法で今回は彼が最適と判断した。
彼の家、スカイライン子爵家はオルレアン公爵家の流れを汲む名家であり、魔道士の塔にも深く関わっている少し特別な家系だった。
代々の筆頭魔道士を輩出し、現在のアグリッパ大導師はジェラルドの叔父にあたる。
そういう事情もあり、今回の同行者として選出されたジェラルドであったのだけれど。
「シルフィーナさま、こちらです」
「はい、ありがとうございますジェラルドさま」
スマートにシルフィーナをエスコートする彼に。
(旦那さま、少しは嫉妬してくださらなかったのかしら?)
そんなふうに、少し気にやむシルフィーナだった。




