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097:魔核

「今、酋長と言ったか?」

「ああ、そんな事を言ってたな」

「ふざけるなあああああ!?」

「うわッ!? な、何だよ」

「お前! 本当に倒したのか、酋長を!!!!!?」

「いや~それがさ。カタコトの言葉を話す凶悪なヤツだったんだが、俺はそれが酋長ってのかは分からないんだよな。ただセリアがそう言ってたから、そのまま言ってるだけで」


 リットンハイムは頭を抱えて前かがみになる。

 もしそれが本当なら、ほっておけばやがてジェネラル等の凶悪な上位種も出て来るのは確実だったろうし、それを流は大事になる前に未然に防いだ事になる。


「確かにクコロー伯の次女の名前はセリアだし、その報告も彼女から上がっていたはずだ……」


 その時丁度ミャレリナが、新しいお茶とお菓子を持って戻って来る。


「戻ったニャ~。って、どうしたのかニャ?」

「いや、それがサブマスがいきなり頭を抱えてな。病気か?」

「馬鹿野郎!! お前のせいだ、お・ま・え・の!!」

「え!? 理不尽な!!」

「ナガレ、ミャレリナにも同じ説明をしてやってくれ……。あぁ、あの時は殺盗団の対応中で多忙だったな……。この件の事は終わった事として忘れてた私も悪いか……」


 また頭を抱え込むリットンハイムを置いて、ミャレリナにも同じ説明をする。

 が、途中から青い顔をして変人を見るような目で流れを凝視する。


「…………ナガレ様。頭、大丈夫かニャ?」

「突然失礼な事を言うお前がな!! で、それがどうしたって言うんだよ?」

「えっと~、ナガレ様は今の自分の階級知ってるかニャ?」

「当たり前だろう? 巨滅級だ」

「ニャ。そしてその上は何か知ってるかニャ?」

「う~ん、確か酋滅級って言ってた気がする」

「ニャ。さ~って、問題ニャ! 酋長を倒したら一体何級でしょ~か?」

「英検二級!」

「おしい!! 正解は『酋滅級』ですニャ!」

「カスってもねーし、全然おしくないだろ! って……え? まさか酋滅級の敵を倒した事になるのか? 今思い出した、確かセリアとファンも何かそんな事で大騒ぎしてた記憶が……」


 言われてみれば、過去にセリアは「一人で倒したんだから、酋滅級++は確実よ!!」と言っていた気がする……。そう思うと流の額に汗がにじみ出る。


「まぁ、いっか」

「「いいのかよ!」」

「あの後近くを通りかかったから、集落を見に行ったんだよ。でも死体が無くなって集落は燃やされてたし、今さら素材って言ってもどうにもならないしな。それにアレは俺が冒険者になる前の事だから、別に今更どうでもいいって」


 自分の成した功績の事など、意に介さない流に呆れる二人だったが、リットンハイムは少し考えた後にミャレリナへ指示を出す。


「ふむ。ミャレリナ、騎士団からその報告がうちに来た後、その後処理はどうなったんだ?」

「えっとですニャ、確か……。そう、討伐者不明と言う事でウチが素材であるリーダーと酋長の魔核を管理しているはずですニャ」

「聞いての通りだナガレ。ゴブリンの素材に関しては、小さな魔核くらいのあまり価値の無い物にしかならんし、ゴブリンドッグは毛皮と肉になる位だ。ただリーダーと呼ばれる上位種と酋長は別で、体内に『上級魔核』と言われる物がある。それがウチの保管庫にあるはずだから、それをお前に譲渡する」

「え? 別にいらないぞ? あれは冒険者になる前の話だからな」

「だからさっきも言ったろう? 正当な評価をってな」


 そう言われると困る流は、その話を受ける事にする。


「そっかぁ、じゃあありがたく貰っとくよ。それと魔核って何だ?」

「あぁそうだったな、この国に居ると常識だから説明を省いていたが、魔核と言うのは主に魔具を動かす力に用いられる。つまりは動力だな。その他にも武器や防具に使われたり、魔法を発動する触媒にもなったりもする。その他にもあるが、まぁ大体こんなところだ」

「それと大きさや、希少な魔物の魔核だと価値も上がるニャ」


 魔具の動力に魔核が使われていると聞いて、正にテンプレ! と心躍る流。


「うむ、ただな……酋滅級に関してだが、それは諦めてくれ。すまない……」

「あ~それこそいいって、別に階級に拘っている訳じゃないからな。この国に来てたまたま最初に倒したのがアイツ等だったってだけだからな。気にしないでくれ」

「そう言ってもらえると助かる。しかしなんだ、まさかこの国へ来て最初の偉業が酋長の討伐とはなぁ」

「本当ですニャ。本来なら酋滅級++の偉業だから、またギルドを上げてお祭り騒ぎにするところなんですけどニャ」

「やめてくれよ……またあの舞台で、晒し者になるのは勘弁だぞ?」


 プは実力と言うより、機転と運で勝てたようなものだから、心苦しいにも程があると流は思う。

 しかし一般的にそれも込みで、殲滅出来る人物が少ないと言う事を知らない流である。


「ニャハハ。またすぐに使う事になるから、流様用に手入れをしとくニャ」

「勘弁してくれよ……」


 それから少し開設した口座の話等の話をしてから、一階で換金と魔核をもらい受ける事になったので、ミャレリナと二人で一階へと戻る。

 二階へ降りると、またもや冒険者や職員に纏わりつかれ、それでもやっと一階へと向かう階段へと辿り着く。


「ナ、ナガレ様。こちらへ」

「おぉぅ。しかし酷いなこれは」


 一階へ戻るなり、二人は相変わらずの様子にげんなりとする。

 三階のそれなりに騒がしい程度の平穏はここには無く、戦場のような嵐がギルド内を支配していた。

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