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096:過去の遺産

「それと今回の件だがな。事後となってしまったが、ギルドとしてクエストを発行した。ミャレリナ、クエスト証を」

「はいですニャ。ナガレ様、どうぞお納めくださいニャ」

「これは……?」


 ミャレリナはクエスト証明書を三通出し、テーブルの上へと並べる。


「一つは殺盗団の壊滅依頼。まぁこれは正式には商業ギルドからの依頼だが、ウチもそれに今日の分も含め便乗した形だ。二つ目は巨滅級の討伐依頼だ。将来危険性の高い魔物を早期に討伐出来た事は、ギルドへの高い貢献とみなされる。知性ある魔物だし、殺盗団も居た事から酋滅級との話も出たのだが、判定が微妙なので今回は巨滅級とする。最後は悪魔の討伐と、それに付随する高信頼度の情報だ。これのお陰で抵抗する奴らとの間で、街は軽い内乱状態なのは見ての通りだがな。悪魔の件については痕跡は発見したが、流が言っていた規模の悪魔かどうかの確証が薄くてな。申し訳ないが一時保留とさせてくれ」


 リットンハイムは大きくため息を吐き、ゆっくりと首を左右に振る。

 そして予想外のクエストを発行、そして完了している事から驚く流。


「って既に完了してるのばかりじゃないか。いいのか? それに商業ギルドからは既に報酬は受け取っているんだが」

「何を言っている。良いも悪いも冒険者が成した事を、正当に評価するのもギルドの役割だ。それをせず、ギルドが存在する意味はあるまい? それと商業ギルドから連絡があってな、報酬はそのままで良いそうだ」


 まさかの商業ギルドからの報酬にくわえ、正当な評価と言われてみればそうだと思う事にして、話の続きをする。


「しかしまさか商業ギルドが報酬を上乗せするとはね……。それでこれをどうすればいいんだ?」

「まずは既に私のサインで完了を証明してあるから、受付に行って換金してくれ。ああ、それと金額はかなりの物になるから……そうだな。ギルドの口座を作って保管しておくのもいいぞ? お前なら管理費用はただにしてやる」

「銀行までやってるのかよ? まぁ便利そうだな、ミャレリナ頼めるか?」

「はいニャ、お任せですニャ!」


 そう言うとミャレリナは部屋を出て行く。それを見送った後で、リットンハイムは流の顔をジット見つめ、こう切り出す。


「しかしナガレ……お前は一体何者なんだ? こんな働きを数日でこなすなんて、まるでお伽噺に出て来るヤツみたいじゃないか?」

「また哲学的な問いだな。お前は何処から来て何処へ行くのか……みたいなかんじか?」

「茶化すな。まあ、お前がトエトリーに仇なす存在にならない事を、心より祈っているよ」

「大げさな~、大体俺はこの街が大好きだ。そしてアンタを始め、色々な人に世話になっているしな。そんな街に仇成す事はしないって。あ、でも俺に牙を向けたら別だがな~?」


 そう最後にエアークオーツしながら、おどけて流は答える。それを見ていたリットンハイムは、自分の心配が杞憂だと言う安心感が不思議と湧いて来る事を実感してた。


「そう……か。そうだったな、お前は巨滅の英雄++だからな」

「アンタに貰った名誉だ。まぁ、その名に恥じない活躍をご期待くださいよ? ってやつだな」

「ハハハハ、期待しているよ。時にナガレよ、お前はあのラミアの王女をどうするつもりだ?」

「え? そう言われると考えてもみなかったな。ただ倒した証拠として持って来ただけで……」

「ふん、そんな事だと思ったわ。トエトリーの産業の一つに、魔物の加工と言うのがある。つまり魔物の素材から魔具を作ったり、武器や防具の素材にしたりと言う訳だな。他にもあるが、まぁメインはこんな所だろう」


(そうだった! 異世界の大テンプレとも言える、ギルドへの素材の買い取り依頼の事を忘れていたぞ、不覚ッ!!)


「そ、そうだったのか。あ~そうなると、岩山に埋もれている下半身が勿体ないなぁ」

「ふむ……確かに王女の素材となると希少だな。後で人を派遣して掘り返させよう。それでだ、今も言ったが王女の素材はとても貴重だ。それを買い取らせて欲しいんだが、どうだ?」

「お~! こちらとしても使い道の無い不気味な死体より、その方がよほどいい。全部任せてもいいか?」

「ああ、それは問題ない。受付の右側から五か所が素材専門の査定場所だ。大きいのは外に出て左側にある建物で査定してもらってくれ」

「なるほどね、了解」

「今回のラミアはこちらで憲兵から引き取った後、下半身も含め後日連絡する」


 素材買い取りと言えば、以前倒した緑の小人達の事を思い出し、あれ等の素材の価値を聞いてみる事にする。


「そう言えばこの街に来る少し前だが、緑の小人。あ、俺はそう呼んでいたんだが、ゴブリンの集落を殲滅したんだよ。もしかしてそれも素材買い取りしてくれたのか?」

「ゴブリンの集落? そう言えば最近聞いた気が……ッ!! 思い出した、クコロー伯の次女が最近人さらいが横行していると知らせを受けて、自領の騎士団から数名と捜索中にさらわれたと聞いていたな」

「そうそう、それだ。その時に確か~えっと。雑魚やら中ボスみたいのや、後は酋長って言うのを倒したんだが、それも買い取りしてくれたのか?」


 リットンハイムは目の前の漢が、何を言っているのかが分からなかった。

 確かに殲滅したと報告があったが、その内容までは忙しい自分としては聞いていなかったのだから。


「…………もう一度いいか?」

「いや、だからさ。ゴブリンって言うの? それの集落を殲滅したんだよ。そこに囚われていた娘の中に、今言ったクコロー伯爵の娘が居てな、名前はセリアって言うテンプレ……コホン。美しい娘が居たんだよ」

「いや、その倒したのを何と言った?」

「えっと~セリアが言うには、犬とゴブリンと、中ボス……名前忘れたが普通より大きいのと、人間よりデカイのを酋長って言ってたな」


 リットンハイムはまたもや意味不明な事を言う流に困惑しながらも、冷めても香気ある茶を一口飲む事で、平常心を保とうと努力する。



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