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094:両雄、デフコン2まで引き上げる

 流はその後バーツとメリサに礼を言い、そのまま帰宅しようとするが、冒険者ギルドからの使いが来て掴まってしまう。


「ナガレさん! やっと会えました、サブマスがどうしても会いたいと今日ずっと探していたんですよ?」

「使いってエルシアだったのか? ああ、そう言われれば昨日の今日だしな。はぁ~。俺の一日はまだ終わらないのか……」

「ささ、行きましょう!」

「ちょっとそこの冒険者ギルドの人・・・・・・・・。ナガレ様は大変お疲れですので、また後日にでもしたらいいのでは?」


 強引なエルシアにメリサは憤慨したように詰め寄る。


「あら、どこから声がしたのかと思えば商業ギルドの人・・・・・・・じゃないですか? 巨滅の英雄たるナガレさんはこんな事くらいで愚痴を言う人じゃありませんから、そうですよねナガレさん?」

「冒険者ギルドの人は頭まで筋肉なのかしら? ナガレ様は現に愚痴っておられますよ?」

「商業ギルドの人は言葉を額面通りに受け取る真面目さんなのかしら? あれはナガレさん独自のジョークみたいなものですよ」


 決してお互いの名前も呼ばなければ、目も笑っていない。しかし顔だけは営業スマイルなソレを見て回りは凍り付く。


「こ、怖ええええ……さっきのメリサちゃんは天に召されたのか?」

「冷血天使が解凍されたかと思ったら、いきなり再凍結かよ」

「クッ!? こ、これぞ俺の冷血アイドル天使! あの氷る視線で俺に罵詈雑言を浴びせてくれ!」

「冒険者ギルドの嬢ちゃんも負けてねーぞ、あの冷血天使と張り合ってやがる」


 何が来ようと人の心情等おかまいなしに、淡々と処理をするメリサ。

 片や無法者の冒険者を片手であしらう、海千山千のつわもののエルシア。

 二人の静かなアツイ戦いは今始まろうとしていた――が。


「待て待て、そう言えば蛇娘の件もあるから、一度報告へ行かなきゃならんのを思い出した。だから冒険者ギルドへ行ってみるよ」

「ナガレさん♪」


 その台詞にメリサは涙目になる。


「そ、そうですか……」

「心配かけてごめんなメリサ。今日は本当に世話になったな、ありがとう」

「いえ、それはこちらのセリフです……ナガレ様、また来てくださいね?」

「ああ、約束するさ。一応商人の端くれだしな?」


 そう言うと二人は実にいい雰囲気を醸し出す。


「うぅ。私が居ない間に一体何が!?」


 逆に涙目になるエルシアは二人を羨ましそうに見るのだった。


「くくく、領都級にして巨滅の英雄は常に強大な難敵と戦う宿命にあるらしいな」

「バーツさん? まぁ蛇娘は強敵でしたが?」

「鈍感もここまで来ると才能だな。わはははは」

 

 楽し気に笑うバーツにギルド内も釣られて笑いで溢れるのだった。



◇◇◇



 流はバーツ達とギルド内で別れると、外で待っていた嵐影を呼ぶ。


「じゃあ行くぞエルシア。嵐影に乗ってくれ」

「え? このラーマン変わった色をしていますね」

「俺の相棒で嵐影って言うんだ。よろしくな」

「まあ、そうなんですか? よろしくねランエイちゃん」

「……マ」


 流はエルシアの手を引くと、嵐影へ乗せて出発する。

 通りを歩くと、やはり衛兵やら憲兵。そして冒険者が走り回っているのを見かける。


「それで今日は何処へ行ってたんですか? もうあちこち探したんですよ?」

「そうだったのか、悪かったな。憲兵隊から報告上がって無かったか?」

「どうなんでしょうか? 私はナガレさんを探している時間が多かったもので、ギルドへは数回しか戻っていませんでしたので」

「なるほどな、実は――」


 これまでの事を掻い摘んで説明する。


「ええええ!? そんな大変な事になっていたんですか!! しかもまた巨滅級を討伐したなんて!!」

「おいおい、声が大きいぞ? 通行人が驚いている」

「あ、すみません。恥ずかしいです……」

「ははは、エルシアらしくていいんじゃないか? おっと、それより少し小腹が空いたな。丁度そこに美味そうな串焼き屋がある。少し休憩しないか?」

「そ、そうですね。私も今日はあまり食べて居なくて、お腹が減りました」

「じゃあ決まりだな!」


 頬を染めながらお腹を軽く抑えるエルシアが小動物のように見えた流は、思わず笑みがこぼれる。

 そんな流をエルシアは背中から〝ぽくぽく〟と抗議の叩き業を繰り出されていると、目的の串焼屋の近くへと到着する。

 二人は一秒でも早くと言う勢いで嵐影から降りると、串焼き屋の前に来る。

 屋台からはタレの焦げるいい香りが食欲を刺激し、無性にかぶりつきたくなる衝動の駆られるのを我慢しつつ、店主へと串焼きのオーダーをする。


「これはたまんない香だなぁ。ご店主! あるだけ全部くれ!!」

「へ? へい! よろこんでええ!?」

「いきなりの大人買いで驚きました……」

「はっはっは。一度やってみたいだろ、こういうのってさ?」

「ふふ。もう男の人っていつまでも子供なんですから」

「違いない」


 二人で笑い合っていると、次々と屋台のオヤジがプロの手捌きで串焼きを仕上げる。


「さあ、熱いうちに食ってくんな!」

「おお! これは美味そうだ、ほらエルシア食べて見ろよ?」

「ありがとうございます! うわ~柔らかくて、ほろりと口の中で溶けるような味わいです」

「うお! 本当だ、これは絶品だな。ほら嵐影も食べて見ろよ」


 嵐影へ串焼きを渡すと、器用に手に持って食べ始める。


「……ママッマ♪」

「そうかそうか、お前も美味いか~」

「お客さん、そんなに褒めてくれるたぁ嬉しいね~。よっし、こうなれば秘伝の粉もサービスだ、これをかけて食べてみてくんな!」

「秘伝の粉? どれどれ……。なッ!? こ、これは!!」

「どうだいお客さん、得も言われぬ風味だろう? そいつはここらでは中々手に入らない高級品よ。他の大陸から細々と輸入されてるらしいんだが、たまたま手に入る伝手があってな。気に入った客にしか出さないんだよ」


 屋台のオヤジは快活に笑っているが、流の中では別の思いがあった。

 なにせこの秘伝の粉は、とても馴染み深い物だったのだから。


(これ、コショウじゃねーか!! しかも黒コショウだ。これもテンプレ扱いって訳かよ)


 その後たっぷりと串焼きを堪能し、腹も膨れた所で屋台のオヤジに礼を言ってから冒険者ギルドへと向かう。





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