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089:女は会見を開き、解散理由を述べる

「おいおい、なんだこの堅さは!? 微妙な傷しかつかねーぞ!!」


 すると蛇娘の後ろで、何時の間に出て来たのかアレハンドが大声で喚く。


「馬鹿め!! そいつはただの魔物じゃない!! 将来、王の器になれる逸材だ。そんな細い剣ごときで傷つけられはせんぞ!! ハッハッハッハッハ」

「王の器? って、王滅級ってやつか!?」

「人間、私、そう呼ぶ。でも母はもっと、強い!」

「マジかよ!? じゃあ最低でもお前は巨滅級か?」

「知らない。それ、人間、決める事」

「クククッ。その通りだ、そいつは最低巨滅級はあるぞ! 食われてしまえ!!」


 アレハンドは大はしゃぎで蛇娘を応援する、流が敗北したら次は自分だと言うのを忘れて。


(チィッ! 防御特化で、さらにこの剣戟と尻尾は驚異すぎるだろ。だから弱点は一か所って訳かよ)


 流は美琴に妖力を込めつつ、蛇娘の剣を斬り飛ばそうとするが、蛇娘は魔法で剣を強化しているようで、一向に斬り飛ばせる感じがしない。


「おい、蛇っ子! お前強化魔法使ってるな?」

「当り。よく、分かったな」

「魔法めぇ……色々万能すぎだろ! ちぃッ。ならこれでも食らえ! 三連斬!!」


 通常の三連斬をノーモーションから叩き込む、美琴の妖力もあり、それなりに傷を付けるが即座に傷が塞がる。


「おい、蛇娘! お前回復の魔法も同時に使えるのか!?」

「当り。ワタシ、頑丈、丈夫、強い」

「これはますますヤバイって感じかねぇ」


 流は蛇娘の猛攻を何とか躱し、美琴で往なし、斬り付けるのは諦めて、目的の場所まで移動する事に専念しながら周囲を観察眼で見渡す――そして目的の娘達が脱出した「囲まれた岩場の入り口」まで来る。


「おい、蛇女! ここらで終幕にしようぜ?」

「終わり、お前。美味しくいただく」

「そりゃあ御免被りたいね」


 一瞬の間がお互いの間に訪れる。そして次の瞬間、両者共に動き出す!


「死ね! 人間!」


 蛇娘が横なぎの尾を右から繰り出し、左からは斬撃を同時に繰り出す。

 そしてその両方が流に着斬した刹那にそれは起こる。

 甲高い音と共に、氷盾が砕け散り蛇娘の攻撃が一瞬止まる。


「ジジイ流薙払術! 岩斬破砕!!」


 流は右側の大きな岩の塊目掛け、岩斬破砕を繰り出す。

 すると岩は木っ端みじんに砕け散り、大小さまざまな石礫となり蛇娘へと襲い掛かる。


「く。こんな、攻撃では、無駄! 死ね」


 相変わらず傷一つ付かない蛇娘は口を開け、先が分かれた赤黒い舌で〝チロリ〟と唇を舐めると、面前の流へと渾身の一撃で襲い掛かる――が。

 流を捉えたとばかりに迫る斬撃は、流へ届く数センチ前で空振る。

 

「何、だ!? 体、動かない!?」

「体が動かないって運動不足じゃないのか? 弛んだ体を見直すんだな」

「何ぃ!?」


 それは起き上がっている部分以外、蛇娘の体は岩の中に埋まっていた。

 強力な防御力で強化されている体は、岩石に押しつぶされてもダメージが無く、そこから動いて躱すと言う選択肢を喪失していた。

 その間に岩斬破砕の散弾のような余波は、対面の岩にも飛び火してその岩も崩落する。

 崩れた岩が積もり埋もれるまま、その場に居たために起こった事だった。


「くっ――クククッ。ハッハッハ。馬鹿な、人間。時間をかければ、抜け出る事、出来る。どうせ、お前の攻撃、ワタシに、効かない!」

「試して……みるかい?」


 流はスっと腰を落とす。そして蛇娘の一点に集中する。

 動きの不規則だった蛇娘は、今やいい標的と化している事でこの技が撃てる。


 刃を上に向けると、右側頭の奥へ美琴を限界まで引き絞る。

 中指と薬指の間だけをVの字に開き、そして狙いである「弱点」を蛇娘の一点を指の間に捉える。


「やれるものなら、やって、みろ!!」

「是非も無し……ジジイ流刺突術! 間欠穿!!」


 これまでの流との戦闘の経験から高を括る蛇娘。

 そして自分の弱点がある事など知る由も無かった。


 通常、観察眼で見ると弱点の場所は「ぼんやり」としか見えないものだった、が――。


 一番最初に流が蛇娘の鱗の美しさに魅了されかけた時に、偶然発見した場所だった。

 それは一つだけ「逆さまになっている鱗」があった事。


 つまりは『逆鱗』である。


 間欠穿は吸い込まれるように蛇娘の丹田の下にある逆鱗へと着斬し、一瞬の間が起こる。


「それ見た事か、お前の、攻撃なんて……は?」

「それ見た事か、お前の、攻撃なんて……は?」


「双方の体に『さようなら』を言う時間はあるからごゆっくり」


 見ると蛇娘は真っ二つなりながらも、蛇ゆえの生命力なのか、王の器たる素質を秘めた者だったからかは不明だが、未だ生命の息吹は残っており、半分になった事すら気が付いていなかった。


 だがそれに気が付いた時、別れたお互いの体から魂の叫びがあふれ出す。


「やめ、マッテ、行かないで、イヤアアアアアアアアア!!」

「ウソ、そんな、戻ってきて、ダメエエエエエエエエエ!!」


「最後は性格の不一致と、方向性の違いで解散ってかな……」


 お互いを離すまいと、左右の腕で体を繋ごうとする。が、それも無駄に終わり、地獄の間欠泉が左右の断裂面から盛大に吹き上がる。

 その衝撃でお互いの体がバックリと別れると、そのまま蛇娘は沈黙するのだった。


ブックマークと評価入れて頂きありがとうございます、お陰で様でまた増えました♪

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