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087:打ち上げられた深海魚

 突然、銀の何かが引っ込んだと思うと、自分が追いつめられた壁がパタリと背後に倒れ、そのまま壁と共にコロリと転がってしまう。

 そしてそこには、黒を基調とした身なりの良い黒髪の青年が、口元に指を当てて「静かに」と言っている事で冷静さを取り戻す。


「あ、貴方は……」

「うぅ~ん。やっぱりモロ見えだな。これはラッキースケベってやつだろうか?」

「ひゃぅ!?」


 裸に剥かれた娘は素に戻ると、自分の姿に思い至り胸を両手で隠す。

 逆にそれが強烈にアピールしている事を気が付かないのだが、本人は必死だった。


「俺は古廻流、ここの賊を討伐しに来た。奥のお前達も早くこっちへ来い。そっとだぞ?」


 一瞬何が起きているのか理解出来なかったが、それが助けだと分かると安堵の表情で即座に集まって来る。


「いいか、これから凄惨な事が起こるかもしれないが、悲鳴を上げずに行動しろよ? 見張りは倒しておいたから、そのまま逃げるといい。途中の茂みに紺碧色のラーマンが居るから、その辺りで待っていてくれ」

「わ、分かりました。あなた様は一体……」

「さっきその娘にも言ったが、おれは殺盗団を討伐しに来た古廻流と言う。だから安心してくれ」


 少女は泣き出しそうな声を押し殺し、ありがとうと言うと、隣の少女と抱き合うのだった。


「説明している時間が無い、入り口まで送るから後は言った通りにしてくれ」


 全員が無言で頷き、流の後を静かに追う。途中抵抗は全く無く、見張りの死体の傍を通ると、先程の少女が、見張りの股間を思いっきり蹴りつけているのを目撃するが、見ないふりをした。


 少し局部が〝ヒュン〟とした流は、人質十名を無事に逃がす事に成功する。


「さ~て美琴さんや、お仕事の時間だ。行こうか」


 見張りの居ない正面から堂々と侵入する流。あらためて見ると、この建物には窓が無い。

 正確には通気口のような小窓はあるが、脱走を防ぐためなのか、防御を高めるためなのかは不明だが、暑くは無いのだろうか? と疑問に思いながらも進む。

 正面の扉の前に来ると中から話し声が聞こえる。


「デニーの奴が今回の味見役だろ? っち、新しいのは羨ましいぜ」

「全くだな、次は俺の順番だといいなぁ」

「いや俺だろ? ずっとお古ばかりで飽きて来た」

「もう順番を気にする必要も無いから安心して地獄へ行け」

「「「は?」」」


 その言葉を最後に、ドアの前に居た賊はドアごと斬り捨てられる。


「あ~美琴が凄く汚れた気分で嫌になる……」

『…………』

「いや、汚れが綺麗になるのは分かるけど、そうは言ってもなぁ」

「壱:え、古廻はん。美こっちゃんと話せるんでっか?」

「お? そうなんだよ。少し前からな」

「壱:はぁ~そりゃあ凄い事でんなぁ。美こっちゃん良かったなぁ」

『…………』


 そんな話をしながら上下別れたドアを開けつつ、内部へと侵入する。

 どうやら先程の三人は、味見役の男が楽しんでいるのを盗み聞きするために居たらしい。

 内部は廊下があり、その片方に部屋が三つあるようで、その奥には広間があるようだった。


「手前の部屋が今助けた娘たちの部屋か、隣は?」


 隣の部屋には人の気配があり、話し声が聞こえる。


「しかしまいったな、アレハンドさんが追いつめられるとは」

「ああ、俺達七人もまた殺盗団に逆戻りだな」

「でも壊滅したんだろ? 殺盗団」

「だからオルドラで再起するって話だ。頭目の一人であったボルツ様は多分死んだようだし、外の実動隊だったもう一人の頭目は、守護騎士団に討たれたとの報告があった」

「あれだろ、巨滅の英雄にからんだ件で?」

「そうだ、全てはアイツに関わった事からこんな事になった……二度とあいつには関わらねえようにしないとな」

「ならその心配はもう無用だぜ?」


 流はそっとドアを開けると、中に居るアレハンドの部下に言い放つ。


「もうすぐ人生終るんだからな?」

「なッ!? きょ、巨滅の英雄……だと」

「クッソ!! お前らヤ――」

「遅い」


 流は美琴を逆刃に持つと、次々と打倒す。しかし部屋が狭い事もあり、椅子や家具が転げる音で、他の盗賊達も異常に気が付く。


「何があったあ!?」

「オイ! 入口に三人倒れているぞ!」

「侵入者か、お前ら出て来い!」


 部屋の外がバタバタと騒がしくなり、流は溜息と共に部屋を出る。


「やれやれだ。今死ぬのと、後から死ぬのとどっちがいい? オススメは後から他人の役に立って死ぬ事だがな?」

「なんだぁテメーは?」

「オイ! 奴の腕を見ろッ」

「巨滅の英雄章!? ってまさかテメーがッ!!」

「なんだ、巨滅の英雄章って意外と皆知ってるんだな。結構多いのか、巨滅の英雄って?」

「……んな訳があるかよ。それだけ有名な証ってこった」


 そう言うと、賊達は腰が引けたかのように奥の広間へと後退する。

 この隠れ家で一番の広さを誇るこの場所は、この場にそうぐわない奪ったであろう調度品や、無駄に豪華な敷物と家具等がある場所だった。


 逃げた賊を追うように進むと、広間の奥にある応接セットの椅子に目的の男が居た。

 顔を引き攣らせた小太りの小男は、丘に打ち上げられた魚のように、口をパクパクと開き酸素を欲する。


「あ~やっと見つけましたよ、アレハンドさん。まずはバーツさんからの伝言です。『次期ギルドマスターと期待したが残念だ』との事でした。それと、これは俺からですが……」


 途端、流の体に美琴の妖力が流れ込む。


「メリサが泣いていたぞ。それだけでお前は……万死に値する」


 静かに怒りを込める流。妖力自体は感じる事は出来ないが、異常な圧迫感を見て殺盗団の残党は悟った――もう逃げ場は無いのだと。

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