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527:虎視眈々

「門番長さん、あんたと初めて会った。が、信頼できる人だと思う」

「ほぅ……口は何とでも言えるがね。もしかしたら俺は、裏で汚いことをしてるかもしれないぜ?」

「そんな男だったら、今ごろ俺たちは壁の向こうさ」

「はっはっは、違いない……で、何が言いたい?」


 流の意図を察した門番長は、目つきを鋭くし流を睨む。そしてゆっくりと流は口を開く。


「人がさらわれた。その娘を救出に来たんだ」

「娘が……そう、か。ここの中の奴らなら、それも十二分にありえるだろうな。だがダメだ、ここは兄貴が――」

「――入れてやれ」


 突如壁の一部に切れ込みが入り、そこから一人の男が二階ほどの高さから現れ、門番長へと告げる。


「兄貴……いや、セイジュ。いいのかい? セイジュの意思とは違ってしまうが」

「いいも悪いも無いだろう。どれ、兄さんからの手紙を見せてみろよ」


 そう言うとセイジュと呼ばれた、三十代前半ばほどの男は壁の中から飛び降りる。着地の瞬間魔法が発動したようで、一瞬減速すると危なげもなく着地。

 そういう事も出来るのだと流は関心していると、右手を上げながらセイジュと呼ばれた男がやってくる。


「ふむ……なるほどね、話は分かった。あの偏屈と頑固が服を着たような、困った兄さんが認めた男だ。ならばその信頼に応えるのも弟しての努めだろう?」

「それはそうだが……いいのかい? セイジュが一番嫌っている身内贔屓(みうちびいき)だが」

「さてね。今回は身内してではなく、一人の村長としての頼みを聞こうじゃないか。ま、臨機応変にいこう」

「わかったよセイジュ。黒髪の人、通用口を通すから少し待っていてくれ」


 そう言うと門番長は足早に警備室へと戻り、魔法で壁の向こうとやり取りをする。どうやらトエトリーと同じ仕組みのようで、魔法で壁を開くらしい。


「ありがとう助かったよ。俺は流と言う、あんたは誰だい?」

「ナガレ? 珍しい名前だな。ん、ナガレ……もしかしてコマワリか?」


 その言葉で流は悟る。この男は敵の可能性が高いと。だが流には確信があった、それはエルヴィスが眉一つ動かさず表情を変えずにいるのだから。だからこそ、こう告げる。


「……そうだ、古廻 流だ」

「ははは、普通は違うと言うべき状況だと思うが? ふふ、面白いやつだ。俺はここの主将をしているセイジュと言う。兄と村が世話になったようだな」

「俺を知っているという事は、その……敵という事かい?」

「真っ直ぐな奴だね。ま、そういう事になるのかな? あんたの事は色々噂で聞いているよ。それで娘がさらわれたんだって?」

「そうだ。トエトリーからアルマーク商会によってな」


 セイジュは「またアイツらか」と舌打ちをすると、隣りにいるエルヴィスを睨む。


「そのアルマーク商会の未来の会長が、ナガレとご一緒なのはどういう事かな?」

「それは私から説明しよう。久しぶりだねセイジュ、まさか君がここの主将になっていたとは思わなかったよ」

「いい加減アルマーク商会(おまえのところ)の不正を正すには、相応の力とポジションが無いと無理と悟ったのでね。そこで門を守る主将に降格させてもらったのさ」

「らしいと言えばらしいが、よくも近衛の隊長職を辞してまで門を守る気になったものだ」

「守るんじゃない、お前の家の不正を正すのが主な目的さ。しかしエルヴィス……お前が部下を引き連れないで戻るとは、よほどの事か?」

「ああ、実は――」


 エルヴィスはこれまであった事を、話していい部分だけをセイジュへと伝える。その部分だけでも驚きの連続だったが、王都の軍がトエトリーへと進軍するだろうと伝えると一気に顔が曇る。


「……そう、か。やはりそうなるか」

「なにが動きでも?」

「ああ。ここ一ヶ月ほどで、お前の家が兵糧をかき集めている。それと兵も同時に集めだしている。一応演習という事になってはいるが、どうも胡散臭いと思ってはいたところだ」

「一ヶ月前から? そんなに前から集めているのか。すると俺が行動を起こすまえからそんな事が……」

「だから道中言ったろう、ナガレ(お前)を口実にしただけだと。もしお前が居なかったら、違う難癖をつけてトエトリーへと攻め込んだだろう」


 トエトリーで商業ギルドのバーツや、ジェニファーたちに言われた事を思い出す。彼らも同じような事を言っていたと思い出すのだった。

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