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525:アルバートは月と競う

「とすると……デリル、東に兵を送れ。数は五百で捕縛が得意な魔法師を最低三十。防御を厚くし、長距離から叩ける構成で組め」

「それはよろしいが、若。どうしてそう思われます?」


 アルバートは「ふむ」と頷き、黄金の瞳で月を見る。もうすぐ山陰に隠れそうな赤き月は、アルバートの心をそのまま見せているようだ。


「一つめは先程言ったとおり、敵は予想外の行動を取る。二つ目は俺の感だ」

「感、と申しますと?」

「東の主将の出身はどこだ?」


 デリルはその言葉でハっとする。東の主将は有能だからこそ、その個人情報を熟知していた。だが敵との接点は無く、たしかに裏から来たからと言って東の主将の出身である村は通るが。


「たしかに裏から来るとなれば、あの村は通りはするでしょう。が、それだけで敵と接点を疑うには決めてが薄いかと」

「だから言っているだろう? 俺の感だとね」

「でしたな。若の感はよく当たる。承知しました、すぐに手配いたしましょう」

「頼む。リミットはそうだな……」


 アルバートは山の真上にまで迫る月を見つめ、目を細めながらデリルへと告げる。


「あの月が落ちるまでだ」

「それはまた……。門番長、聞いていたな? すぐにその通り手配をせよ!」

「ハッ!! 承知いたしました!!」


 門番長は慌ただしく階段を降りていくと、大声で指示をだす。その無茶とも言える時間の無さに、兵たちは四方八方へと散り伝令を伝えにゆく。

 それを見たアルバートは〝無駄なことを〟と呟くが、その思いをデリルが見透かす。


「……そんな顔をなさるとは、やはり無理ですか?」

「あぁ嫌だ嫌だ。デリルには隠し事が出来ないのかな?」

「若はわかりやすい故に」

「そんな事はあの男(・・・)にすら言われたことは無いんだがね」

「若、口を慎まれよ。陛下を〝あの男〟呼ばわりするとは言語道断」

「いやだね~ほんと、デリルは固くて。まぁ……デリルの言う通り無理だね。月が山にかかればあっという間に沈むだろう?」

「それを分かっていながら指示を出した……つまり」


 アルバートは左眉をあげ、右目を閉じながら優しげな笑みをうかべ、デリルへと向き直る。


「そうだね、やらないよりはマシってやつじゃないかな?」

「残念でしたな。婦女子ならいざ知らず、私めにそのようなタラシ・スマイルは無効ですぞ?」

「やれやれ。渾身のスマイルだと言うのに、先月はこれで兄上の許嫁も落としたんだがね?」

「ハァ~、やはりそうでしたか。マウトリス様がエラスミデア様を疑っておいででしたが、犯人はやはり若でございますか」

「さて、なんのことやら。よくないよデリル、他人を吊るし上げるには確たる証拠がないと、ね?」

「次から録音の魔具を用意するといたしましょう。さて冗談はさておき、若はどうするおつもりで?」


 右手の親指で軽快な音を響かせた後、そのまま人差し指をデリルへと向けアルバートは口を開く。


「じつにいい質問だね。今回の報告はまさに天啓と言えよう。俺は俺のやりたいようにするだけさ。で、お前は付いて来るんだろう?」

「貴方様の教育係になってからと言うもの、全ては貴方様へと捧げましたよ。ホント、苦労ばかりでそろそろ報われたいものですがね?」

「ハハハハ……王族に対する暴言、許せるものではないが?」

「そうですか? 王族たる行動を一つ見せていたけたら考えも改めましょう」

「厳しい教育係を持つと、胃に穴が空いてしまうね。ま、ちがい無いがね」


 そうアルバートは言うと、楽しげに笑い赤き月を見つめる。


「さぁ始めよう……俺が勝つか、それともこの国が生き残るか……それともトエトリーが全てをヒックリ返すかを、ね」


 デリルは静かに頭を下げ、最敬礼の姿勢をとる。そこに誰もいないはずだったが、周囲の壁から影がしみ出て来て人の形へと変わる。

 影はそのままアルバートの背後へと集まると、デリルと同じように最敬礼をし跪くのだった。

なんだ……残り数話で一時休載のはずが、その気配が無いぞ!!

どうした乱太郎の中の人!? Σ(゜д゜lll)

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