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525/539

524:美丈夫は夜明けを睨む

「エルヴィス、そう祈っても仕方ないって。まぁ俺が原因だけどな」


 流はエルヴィスの気持ちが痛いほどよく分かる。これまで大抵の町で問題を起こしたのは自分だ。しかし別に自分から何かをしたことは……少しある。


「ふぇ~なんですぅ? 俺は被害者だって顔しちゃって。嫌ですねぇ」

「うっさいわ! それよりエルヴィス、東門まではどのくらいだ?」

「そうだな少し遠回りをしていこう。城壁沿いに行くと、余計な者に見つかるかもしれないからな」

「そうだな。それにしても巨大だな、それとあの顔はなんだ……」


 流は王都の巨大さに言葉を失う。それは近くに行けば行くほどよくわかり、城壁には等間隔で巨大な顔が出来上がっていた。



 ◇◇◇



「斥候からの報告はまだか?」

「はい、どのルートからも報告は上がってきていません」

「そうなると陸路ではないのか……水路はどうか?」

「そちらからも、まだ報告はありません」


 ここは王都正門。南の門番長と話す、他の者とは明らかに違う風体の、二十代半ばほどの美丈夫な男がいた。

 金髪の髪と、瞳。肌は白いが貧弱さはかけらもない。むしろ鋭い眼光がその男の存在力をしめす。

 エメラルドグリーンに金色の縁が施された金のかかった鎧を着用し、明らかに将官といった感じである。その男、〝アルバート〟は、夜が明けてきたとはいえ、まだまだ薄暗い先を見つめトエトリーの方角を睨む。

 

「そうか……。そう言えば、あのいけ好かない斥候の長の一人がいたな。たしか独断でアルマーク商会が管理する、天領へと行ったはずだが?」

「あぁ今回はそこから来ると一人予想をし、仲間内からも笑われながら向かったと聞きましたが」

「そう、ソイツだ。あの男は性格は最低だが、仕事には定評がある。ソイツが探索へ出たのだから、何か感じるものがあったのだろう」

「ですが非効率すぎます。トエトリーからあのルート側を経由すれば、短縮どころか遠回りになるのですから」

「そうだ……な。しかし――」


 アルバートが可能性の話をしようとした所で、部下の一人が駆け寄ってくる。

 見れば相当焦っているようで、良くない知らせを持ってきたのは明らかだった。

 それに内心小さく舌打ちをし、部下へと静かに問う。


「どうしたそんなに慌てて。嫁にでも逃げられたのか?」

「アルバート様じゃあるまいし、私は嫁一筋ですよ」


 部下――四十過ぎの男は呆れるようにそう言うと、アルバートの側まで来て耳打ちをする。


「実は斥候部隊の長の一人が、多分死んだとの報告があります」

「なに? どうして分かる?」

「は、それがどうやら彼らの間でのみ分かる魔法があるらしく、命が尽きれば最後の力を使い自分の象徴である玉を破壊するのだとか……」

「なんだそれは、初耳だが?」

「ええ、多分知っているのは国王陛下やアルマーク商会。あの方たちだけでしょうな」

「フン、〝あの方〟ねぇ……俺は好きじゃないね、どうも」


 アルバートの話にギョっとした顔で周囲を見回す部下。そしてアルバートへと苦言を呈する。


「若、そのような事を言うものではありませんぞ」

「っと失言。だがホントの事だ、仕方がないだろう?」

「若……くれぐれもお立場をお忘れませぬように」

「わかっているよデリル。話を戻そうか、そしてその男が死んだのは――天領だな?」

「やれやれ、若にはお見通しでしたか」

「なに、小耳に挟んだものでね。斥候部隊の長の一人が、単身アルマークが管理する天領へと向かったと聞いてね」

「はい、想像通りです。そこへ向かった者の最後を確認したとのことです」

「そうか……」


 アルバートは少し目を閉じると、状況を整理する。まず普通に考えれば、敵が来る確率が高いのは、ここ正門だろう。

 それは順路だろうが裏道を通ろうが、確実にここが一番近いのだから。だが敵はすでに予想外の場所から現れたらしい。

 となれば、さらに裏をかいて行動を起こしてもおかしくはない。そうアルバートは考えるとゆっくりと口を開くのだった。

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