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520:さらば、永楽ノ園

 流たちは足早に、永楽ノ園と呼ばれる無法地帯を進む。その先頭を走る黒麒の白ちゃんは、流へと話す。


「よぅ流、そんでこっからドコへ行きゃいいんだ?」

「そうだな……エルヴィス頼むよ」

「任せておけ。まずはもう少し行くと大きな宿に出る、黒い建物がそうだ。そこを右に曲がり、大通りを進むと門があるからそこへ行こう」

「あいよ、了解だぜ」


 白ちゃんは目を回している、背中の向日葵を器用に背負い直す。かなり雑にやったものだからか、その衝撃で向日葵は目覚めた。


「ふぇぇ一体何が……あ! そうだった、私は空を飛んで!?」

「目覚めたかよ向日葵。喚ばれたからには仕事はすっけどよ……テメェ、よく見りゃ死んでるのか?」

「まぁそんなところですね、えへん!」

「チッ、まさかマジで死んでいるとはな。馬鹿は死ななきゃ治らないつーが、向日葵(おまえ)は馬鹿は死んでも治らないほうだったかよ」

「ふぇ~失礼すぎなんですけどぉ? だいたいこんな超絶☆美麗美少女を背中に乗せる栄誉を誇っていいんですけど~? しかもナイス・ヴァ~ディゥ~な娘なんて、そうそう居ないんですけどぉ。ねぇ大殿?」


 大昔の娘にしては異様にむっちりな胸を、ことさら強調してみせる向日葵。流としても今まで見るきも無かったが、なぜか流に向けてアピールするので何となく向日葵に目が行く。

 

「……なんですかぁ、イラヤシイ」

「う~ん、よく見ると確かにデカイな。顔も意外と……いや、かなり美形だな。普段のマヌケな言動から想像も出来ないほど、可愛らしい顔だ」

「な、な、な!?」

「ナガレ、お前また……」

「おいおい流。こんな見た目は確かにいいが、クソが詰まった頭の女だぜ? やめとけやめとけ~」


 エルヴィスと白ちゃんに呆れられたが、この漢は流である。だから他意が無く、思った事を平然と言ってしまう。

 向日葵もそれは知っていたが、面と向かって言われると実に恥ずかしい。普段の不敵さは消え、思わず赤面し言葉に詰まる。


「顔が赤いぞ、幽霊なのに変な奴め。普通に思った事を言っただけなのに……っと、見えてきた、あの門を抜ければ永楽ノ園から出られるのか」


 流は美琴を左腕で抱きしめると、そのまま門へと向かう。ここまでは先程の騒ぎもまだ伝わっていないらしく、周囲は酔っ払いが平和的に喧嘩をしている程度だ。

 色とりどりの魔具で照らされた街並みは実に美しく、それゆえに現実感がうすい。そんな光景を見つめながら、まずはここを離れる事に意識を集中する。


「エルヴィスここはどうする?」

「まだ騒ぎも伝わっていないようだし、なにより永楽ノ園は基本、何があってもおかまいなし。だから問題は無いはずだ」

「なら頼むよ。向日葵。おい向日葵どうした?」

「……ふぇ? あ、ええっと。あぁ問題ないですよ」

「大丈夫かよ、しっかりしてくれよなもう。もうすぐ抜けるぞ、何か感じるか?」

「特にありませんね、このまま行きましょう~GOGO!」

「逆に心配になるが、まぁいい」


 二人のやり取りに苦笑いをうかべ、エルヴィスは門番の元へと向かう。すると入り口は違っているはずなのに、まったく同じように雑魚っぽいチンピラが道を塞ぐ。


「ハッハ~! 深夜に街を出るたぁ何かしたのかい? まぁいいさ、世の中コレでまるく解決するってもんだぜ?」


 チンピラは右人差し指と親指で円形をつくると、エルヴィスへとワイロを要求する。本来入る時しか金は取られないはずだが、どうやらこの門番は出るときも要求しているようだ。


「チ、ほら受け取れ。銀貨で三枚だ」

「ホホホ~こりゃ話が早くて助かるってもんでさぁ旦那ぁ。ささ、とっとと行っちまってくだせぇ。後から面倒が来られても困るってもんでさぁ」

「分かっている。さ、行こうかナガレ」


 満面の笑みで見送る門番を尻目に、流たちは門をくぐる。相変わらず門の上には女たちがいたが、入るときと違い無愛想に見送る。どうやら金にならない相手には冷たいようだ。

 しばらく進むと永楽ノ園から聞こえていた喧騒も消え、月に照らされている薄暗い夜道にもどる。

 先程までの喧騒や戦いが信じられないほど、周りは静寂で風の音しかしない。そんな状況になって、いきなり現実へと流の意識が引き戻されるのだった。

昨日は体調不良のため、一日お休みしました(´;ω;`)スマヌ

出来れば今日中にもう一話UPできたらいいなと思います。

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