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509:古廻双牙

 その童子切の固まった様子を見て、流は最後の力を振りしぼる。ここまで妖力を使い続け、しかも水面での戦いという初の妖力の使用で疲弊。

 さらに暴走を二度もしたことで、残された妖力が限界に近くになる。さらに新たな力である魔力を実戦使用した事で、ますます肉体も精神力も限界であった。


 だが自分のために散った二人の娘と、その思いを抱き精神と肉体の限界を超えて〝青龍の召喚〟を果たす。

 予想外の事であったが、青龍の背に飛び乗りそのまま童子切へと最後の斬撃を放つ!!


「童子切りいいいいいいいいいい!! ご先祖様(双牙)流・連斬術――双牙七連翔!!」


 流は過去、先祖である古廻双牙より伝授された業である、〝同時に二度攻撃〟する業を放つ。

 それは双牙よりたくされた未完の業であり、一撃をタイムラグが全くない状態で文字通り二度同時に叩き込む業。二つの力が無いと完成しないと言われた技であり、もし完成すればその威力は計り知れない。

 双牙にそう言われた事を噛み締めながら、流は残された妖力と魔力で流オリジナルの七連斬に命を吹き込む。

 白と蒼の螺旋状になった力が、放たれようと力を暴走させ周囲を明るく染める。


「……ここまでか」


 童子切はそうつぶやくと、頭上より襲いかかる男をジット見つめて動かない。やがて蒼い魔力と白の妖気を悲恋美琴に込め、大上段の構えで斬りかかってくる。

 だから童子切は硬直して動けない――のではない。動く必要が無かったから動かなかった。ただそれだけのこと。


「魅せてもらったぜ古廻……いや、鍵鈴(けんれい) 流。おまえさんならコレ(・・)を披露するに十分な資格がある」


 瞬間、童子切の周りの空間が歪みだす。蜃気楼のように空気が歪に歪み、淀んだ神気をさらに淀ませ、赤黒い塊となって右手の刀へと集約する。

 高音なのに重苦しい音が童子切の刀から一瞬響いた刹那、赤黒い鬼の顔が半分と、右半身が刀身へと浮かび上がった。


「が、鍵鈴 流。てめぇはまだ俺の真名(・・)を名乗れるほどに強くはない――神刀流奥義・朱顛鬼神斬(しゅてんきじんざん)!!」


 右手に持った刀をまっすぐに振り下ろす。童子切がこれまで魅せなかった初の奥義を使ったと同時に、流も妖力と魔力を練り上げた七連斬を放つ。

 七連斬の型式は〝弐〟、つまり溜め込み型の一撃であり、連斬系では最強の威力。それをまっすぐ童子切へと振り下ろす!


 童子切もそれを静かに見つめながら、迫る七連斬へと奥義・朱顛鬼神斬を放った刹那、斬撃から赤い鬼が右上半身の半分が現れ、流の斬撃へと鬼の手をのばす。

 

「グオオオオオオオオオ!! 童子切いいいいいい!! 我をこのように使うなどと!?」


 右上半身のみの鬼が叫び、流の斬撃を握りつぶす。その驚くべき皮膚の厚さなのか、七連全てを右手の平のみで受けきった。


「ぐごおおおおおおおお!! 何という威力ッ――ガアアアアアア!!」


 受けきった刹那、同時に同じ衝撃が右手に走り右肩の付け根から吹き飛ぶ。


「いっけええええええええええええ!!」


 流は両手に持つ悲恋美琴でそのまま七連斬の後ろへとつき、童子切へと斬りかかる。


「だがまだまだだねぇッ!!」


 童子切は叫ぶ。そしてさらに刀へと神気を込めると、さらにもう半身が出現。鬼神は左手に持った童子切の斬撃そのものを握りしめると、流の七連斬を払いのける。

 前面の鉾たる七連斬。それは同時に盾にもなっていたが、それを新たに出現した鬼により払われてしまい、流の体が露出した刹那に蒼い影が鬼神の左側から襲いかかる。


『主よ、童子切のやつも本調子ではないのか? まぁよい、どのみち供物が足りぬ。どうやらここまでのようだ』


 青龍はそう言うと、鬼神の上半身を噛みちぎりそのまま二体とも消滅する。

 それに目もくれずに二人は斬りかかり、激しく剣戟を重ね合う。


「童子切いいいいいいいい!!」

「流ええええええええええ!!」


 妖力と魔力を全て出しきった流は、限界を超えて肉体と己の業のみで童子切へと斬りかかるのであった。

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