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508:蒼の召喚

 童子切は神気を体にまとい防御力を上げて、背後の柱へぶつかった衝撃を緩和しつつ、流への反撃体勢へとうつる。

 だが予想外にダメージが通ったらしく、童子切も即座に動くことは困難。

 背後へとさらに吹き飛びながら、何事もないように奥で演奏を続ける者たちを見て苦笑い。と同時に、前方の男がさらに大業を放つ準備をしているのに気がつくと、童子切も内心楽しくなる。


(くくくッ、これでこそ古廻だねぇ。呆れた男とはいえ、アレ(・・)を使うかどうか……魅せてもらおうじゃないか)


 三本の柱をへし折り四本目に差し掛かった瞬間、童子切は空中でくるりと体勢を変えて柱へと足を向けて蹴り飛ぶ。

 その威力で柱はへし折れ、能楽堂の屋根を支える柱が減った事で屋根が崩れだす。だが大崩壊まではいかず、手前の舞台側へと崩れかかると同時に二人は空中で相見(あいまみ)えた。

 その二人の姿、蒼と赤の光を引きながらお互いに納刀した日本刀の鞘へと右手を添える。やがて距離も縮まり残り七メートルになった瞬間、高速で鞘から同時に抜刀する。


「神刀流・無響羅刹!!」

「ジジイ流・抜刀術! 奥義・太刀魚【改】!!」


 一瞬童子切の抜刀術である〝無響羅刹〟の発動が早く、色が抜け落ちた無音の世界になる。と、同時に銀閃が前方から滝のように押しよせ、流を飲み込まんと包み込む。


「どうだい? (かわ)せるものならやってみなよ!」


 そう言うとさらに抜刀術を加速させ、童子切はさらに銀閃を生み出す。

 そこへ口だけ動かす流。いや、正確には話しているのだが、音が消えた世界ではそれが届かないだけだ。


(童子切、アンタは確かに凄かった。が、俺たち(・・・)には敵わない――美琴!!)

(うん! 使って流様!!)


 そう言うと流は童子切へと振り切った悲恋を、さらに高速納刀。先程は流の妖力のみを込めた太刀魚であったが、今度は美琴の妖力と流の妖力。それに魔力を練り合わせ、最強の威力で童子切へと一閃!!

 【改】によって高められた太刀魚は、囲い込む銀の刃群を薙ぎ払い突き進む。だが童子切の無響羅刹のデタラメな数の斬撃により、それも徐々に力を失ってしまう。


 だがしかし、そこへ流も負けじと抜刀術の二連目を放つ。妖力が完璧に回復はしていない状態での太刀魚は失敗を意味する。

 だが現在は魔力を使える事によって完全ではないが、妖力と魔力を練り合わせて失敗どころか、これまで以上の力にまで高めた。

 そこへ美琴の全力の妖力である。その三つが合わさり、雅と卵妙姫が稼いだ時間と経験。それら全てを込めて、流は最大最強の奥義――〝太刀魚【極】〟を解き放つ!!


「ぅッそだろッ!?」


 童子切は見た。特大の大きさの太刀魚が、背後から来た蒼龍に飲み込まれた刹那さらにバケモノになって襲いかかってくるのを。

 その姿、まるで昔に日ノ本で自分が戦った龍と酷似していた。鋭い顔つきに長いヒゲが左右に一本なびかせ、縦に割れた瞳孔を光らせる。

 鼻の上のシワが威圧感をさらに増し、凶暴な口元からは全てを噛み砕く牙が複数見える。

 体は長く、全身蒼い鱗におおわれた長い龍。つまりそれは――。


「――青龍!! どうしてキサマがそこにいる!!」

『なぜと問うか? 主の器を見定めに来たのよ。さぁ童子切、しのいで見せよ!!』


 音のない空間に亀裂が入り砕け散り色が戻る。それと同時に青龍と呼ばれた存在が、咆哮を上げて無響羅刹を喰い破る。

 砕け散る銀色の刃群。だが負けじと青龍へと突き刺さる刃だったが、それを気にもせず噛み砕き進む。

 

「聞いてないねぇ、こんな青龍(モノ)が召喚出来るとはねぇッ!!」

「俺も知らなかった、許せよ?」


 青龍の背中に乗ったまま、流は童子切へと斬りかかる。まさかの攻撃に童子切は息を呑み、思わず硬直するのだった。

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