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504/539

503:左右で別の道を征く

昨日は地震で更新出来ずにすみませんでした(´;ω;`)

 元々使える力。それをどう引き出すかと言う事を流は体で知っている(・・・・・・・)

 だが使える力である妖力は前鬼と後鬼の夫婦に教えてもらった時に、きっかけを掴んだ事で使えるようになった。

 それも破格の使い手として、ごく自然に使いこなす。それを見た前鬼と後鬼も首を傾げていたが、流本人ですらその意味は分かっていない。

 だがきっかけさえあれば(・・・・・・・・・)使える事は、今ほどの体験からよく理解できた。


(なるほど、妖気と魔力。コイツは元は一緒のはずだ。(ぜん)ちゃんが言っていた、星の力の一部だって。つまり――)


 流は妖気を左手にこめると同時に、魔力を同じ比率で右手にこめる。先程まで無理やり力で押さえつけ、捻じ曲げるようにお互いの力を混ぜていたが、今度は反発しないで体の中心から半分に妖気と魔力で満たされた。


「そいつぁ……やるねぇ。面白くなってきた。準備も整ったようだし……いくぜ?」


 童子切は流に満たされた力が本物と確認すると、左の口角を上げ流へと斬りかかってくる。それを静かに見守る流は、自分の体に起こった変化に戸惑いを感じながらも童子切の剣先をジッと見つめていた。


「呆けていると死ぬぜ?」


 そう言いながら童子切は右手に持った刀を、流の左肩から袈裟斬りに振り下ろす。その瞬間だった、流が斬られたと思える残像が出来たかと思えば、流は童子切の脇腹へと蹴りを放っていた。

 その動きは残像が攻撃したとしか思えないほどであり、朧気(おぼろげ)になった流が童子切の背後へと現れた事でその攻撃が当たったのだと確信する。


「な……なんだ今のは?」


 自分の蹴り技(したこと)に流は驚く。その攻撃をした相手の童子切が吹き飛び、桜が咲く浮島へと着地し土がえぐれる鈍い音がしたことで、流もそちらへと向く。


「痛ぅ~、やってくれるねぇ。まさかあの状態から蹴られるとは思いもしなかったねぇ」


 そう言うと童子切は水面を驚く速さで蹴り進み、流の直前へと来る。そのまま前かがみ気味になり、納刀すると抜刀術を放つ姿勢になった。

 その様子に驚く事もなく、流は童子切へと対峙する。次の瞬間、童子切は超速の抜刀術を放つ。


「――神刀流・無響羅刹!!」


 能楽堂の演奏が消え、周囲が色の消え失せたモノトーンになった刹那、銀色の剣閃のみが突如現れる。


 その銀――無数。


 どうやったのか、水面以外の全方位から囲む銀色で三日月型の斬撃群は、流を逃さんとばかりに覆いかぶさるように銀の三日月が襲ってきた。

 それを微動だにせず、視線を下に向けて流は動かない。すでに隙間なく襲ってくる斬撃の群れ。

 流は斜め後ろへ向けて突如斬撃を放つ。が、焼け石に水。他の斬撃が容赦なく流を包み込む。


「馬鹿が、そんな程度じゃ意味がないってなぜ分からないかねぇ?」


 童子切は残念そうにいいながらも、その斬撃からは逃れられないと確信。次の瞬間、斬撃同士がぶつかり合う硬質な金属音が響き、色のない世界に銀光だけが激しくぶつかり合う。


「やれやれ、おわっちまったかねぇ……」


 銀光が収まりやがて世界に色が戻る。だがこの無響羅刹のもう一つの特性である、探知能力がその違和感を察知。

 違和感の原因は、流が放った斬撃分の穴(・・・・・)から来るものだと思ったが。


「……いや、違う。こいつぁ――ッ!?」


 童子切は前方斜め下を凝視すると、そこには信じられないものがいた。白銀の長髪を水中になびかせ、童子切へと向けた獣の目が睨む。そのむき出しの闘志は、手に持った刀――悲恋美琴に全て集約され大業を放つ。


 水中より立ち昇る紫色の斬撃。それが異常と言っていい速さと、なめらかさで水中を加速し突き進む。

 その形、三叉の(もり)と形状が似ており、さらに水の壁など無いような動きでますます加速。

 童子切は見た。先端が(もり)のような〝レ〟のになったものが、水を〝ヌメェ〟と斬り裂き抵抗などまったくない動きで近づいて来るのを。


 歴戦の猛者だからこそ、童子切はその危険な挙動にゾクリと背筋が震えた。

 迫る水の三叉の銛と化した斬撃は、自分の業である無響羅刹よろしく、無音で水中を駆け昇る。

 そして紫色の光が水面から顔を出した瞬間、水面がバックリと割れ奥から銛を放った漢が現れる。


「ジジイ流・水斬術(すいざんじゅつ)! 水昇双牙(すいしょうそうが)【極】だバカヤロウ!!」


 迫る紫色の三叉の銛。その先端は高速で振動し、水面近くにいた小魚を斬ったのが見えた。が、その小魚は頭から尾まで真っ二つに斬られ、さらに斬られた事が分からないのか、そのまま不器用に泳ぐ。

 最後は左右の体が別々に泳ぎ、溺れる姿を見た童子切は視界に捉えその鋭利さに驚くのだった。

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