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502:向日葵はがんばる

(童子切のやつ動かねぇのか? ほとほと舐められたものだな……美琴たのむ)

(まかせて。天女ちゃんにも言っておくね)


 美琴と静かに話すと、流は力の制御を始める。元々の清浄(・・)な妖気に蒼い魔力を練り込み、それを全身に行き渡らせる。

 足元から吹き上がる妖魔力といってもいい、混合された力……。その特質とも言える二つの力が相反するも、混ざり合いお互いにせめぎ合う。


「くっ、ここまで反発するのものなのか」

「そらそうさねぇ。いいかい流、普通はそんな芸当は出来ないのさ。俺ですら今は(・・)神気だけだ。それが普通だしソレ以外は〝異常〟だねぇ」

「そう、かい!!」


 流は無理やり力で混ぜ合わせた妖気と魔力を全身にまとい、童子切へと斬りかかる。その移動速度はこれまでとは比べ物にならないほど早く、そしてパワーがあった。

 水の上で戦闘すると言う、これでも常人離れしている二人だったが、流が水面を蹴ると水面に〝ヒビ〟がはいってしまう。その後そこから爆散し、流の通った後は水が爆発し水柱が出来る。


 先程までの暴走状態とは違い、流は童子切への攻撃が鈍る。とはいえ、最初戦い始めたばかりの頃とは比べ物にならないほどに剣速・パワー・スピード・業のキレが増していたが。


『ふぇ~大殿様、もっと力を均等に分散しないとダメですょ~』

「向日葵!? 後でお仕置きだからな!!」

『セクハラですか、しかもセクハラを超えた実力行使のセクハラですね!? やさしく……してね?』

「うっさいわ!! それでどうすりゃいい!?」


 童子切の斬り返しをバク転で避け、そのまま拡散型の参式・七連斬を放ちながら水面を波立たせ童子切の接近を一時的に遮る。


『ふぇ~思い出してください。今とは違い、先程までは何種類もの力を使いこなしていたことを。その時どう力を引き出していましたか?』


 流は思い出す。先程までの荒ぶる力の中で自分がどうやって力を引き出し、それを使いこなしていたかを。

 だが問題はその力の数々が何かを流は知らない。だからそれが〝何か〟を知らないから、力が引き出せないのだ。

 例えるならネット上における情報の数々。特にコアなワードはピンポイントじゃなきゃ検索すら難しい。


 流は〝なんとなくこういうものだろう〟と漠然とソレが分かるが、その力が例えば精霊力だとは知らないから、力が引き出せない。

 だから今自分が認識している魔力を使っているが、それですら完全に制御できていないのだ。

 

「どうってお前、はっきり言おう。知らん!!」

『ふぇ~流石セクハラ王ですねぇ。いいですか大殿様、貴方様は〝新しい力〟に目覚めたのは間違いありません。が、それがなんだか分からない』

「そうだ――ッ!?」


 童子切は流が作った水の壁を十字に斬り裂き、その中央から肉食獣じみた表情で襲いかかってくる。それを悲恋で受け流し、流はまた水面へと参式・七連斬を放つ。


「くっそ、童子切め堪え性のない。ちょっとはエモノ(おれ)が美味しくなるまでまちやがれ!!」

『あのオッサンは十分待っていましたよ。まぁ早い話が、大殿様は常識に囚われすぎですょ~』

「常識だと? そりゃお前と違って俺は常識も良識のある大人だ」

『もしも~し、鏡を見てから発言しましょうねぇ? いいですか大殿様。貴方様の力の根源はどうやって習得した(・・・・・・・・・)んですか?』


 向日葵の言葉の意味を考える。そして気がつく、それは――。


「――そうか。俺は無意識に引き出していた……力という力。妖力だってそうだ、気がつけば前ちゃん夫婦(前鬼と後鬼)も俺の力に驚いていた」

『ですねぇ……で、わかりましたか?』

「あぁ分かった……お前のお仕置きがさらにグレードアップするって事だけはな!!」

『ふぇ~!? ひっどすぎぃ!? もぅ向日葵泣いちゃう』


 童子切の叩きつける斬撃を、両手で力を込めて悲恋で防ぎながら向日葵に問う。


「この戦いが終わったらいくらでも泣いていいぞ!」

『KITIKUって書いて大殿様って呼びますね。ですがもう分かったみたいじゃないですかぁ?」


 流は思い出す。前鬼と後鬼夫婦に仕込まれた妖力の使い方を。それは自分より遥かに大きい門番鬼である善吉の金棒を防ぎきり、さらには逆に攻撃し返した時につかんだもの。

 つまりは妖力のコントロールであるが、同時に流はもう一つ理解していた。


「あぁ、お前のおかげで思い出したよ。力の引き出し方ってやつをなぁ!!」


 流は思う。まったく知らないはずの妖力を見て、感じ、威力を実感し、その……力を〝元々知っていた〟ということを思い出すのだった。

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