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500:おしおき確定~ぷれみあむ

「チッ……俺としたことが、こんな事も見逃すとはねぇ。それにしても嬢ちゃん、どこから湧いて出て来たんだい?」

「ちょっと、失礼な事を言わないでください! 私は虫じゃないんですからね!」

「まぁ落ち着け。湧いて出てきたってのは言い得て妙だろう」

「全然ストレートで、言い得て妙の〝妙〟すらないんですけれど?」

「まぁそう言うな。俺もいつもそう思っているからな」


 美琴が「ひっどーい!」と抗議するが、流はそのまま話を続ける。童子切は刀を右肩に担ぎ聞きいる。


「コイツは美琴。この日本最強の妖刀の中に住んでいる、まぁ幽霊? と言うか、意味のわからない存在だ」

「酷くないですかその紹介?」

「ふむ、それでいくら意味のわからない存在とはいえ、どうやって死体と入れ替わった? まさかあの女じゃあるまいし、嬢ちゃんにそんな芸当が出来るとは思えないがねぇ」

「あの女? もしかしてパラダイスシフト使いか?」

「あぁ、そいつだ。どこかで今も生きているはずだがねぇ」


 イルミスが大昔から生きていると、敵の口から聞くとそれが本当なんだと変な感慨にふける。だが流も童子切が言うように、美琴が復活出来た理由が知りたかった。

 たとえ霊体とはいえ、悲恋で斬り殺したらただではすむはずがないし、まして真っ二つになったのだから。


「それで美琴、俺も知りたいんだが……どうやって復活できたんだよ?」

「あぁそれは向日葵(ひまわり)ちゃんの悪知恵なんだよ。流様がおかしくなった時、向日葵ちゃんから棒手裏剣が飛んできてね、『大殿様に叩き切られて死んじゃえ♪』って書いてあったんだよ。一言一句間違っていないんだよ? 酷くない? あ、私みんなにぞんざいに扱われている気がしてきたんだよ……」


 そう言うとショックだったようで、顔色を青くして死人のようになる。死んでいるが……。だがそこは美琴、フンスと妙なやる気をだして復活。


「向日葵め、なんつー事をさらりと言いやがる。おかげで元には戻れたが、その……またすまなかった」

「いいんだよ、だってその後にこう書いてあったの。『大殿様はマヌケだから、また暴走をするでしょう。童子切と言う男は多分そう仕向けるはずです。だからそれを利用して、姫は悲恋の内部より完全覚醒一歩手前まで待機。その後にいいタイミングで抜け出して、イチャイチャすりゃいいんですよ(わらい)』って書いてあったんだよ……」


 二人は思う。向日葵ちゃん、ナイス提案だと。だが、あとで絶対にお仕置きしてやると!!


「くっ、あの野郎……それでどうやって偽物と入れ替わったんだよ」

「一瞬私の体が光ったでしょ? あの時、向日葵ちゃんが術を発動させて私のダミーと入れ替わったんだよ」

「魔法より魔法みたいな事をする、非常識の塊なお前らが理解できん」

「やれやれだねぇ。まだ色々いるのかい、悲恋(ソイツ)の中には?」

「まあ色々とな。しかし美琴(おまえ)といい、向日葵の馬鹿といい、幽霊を超えた存在としか思えんよなぁ」

「幽霊を超えた霊体? いや……まさかな……」


 童子切は何かを知っているように、左眉を上げて思案する。だがそれも違うだろうと、軽く首を振り否定するように話す。


「俺の思いすごしかねぇ。それで流、まだ殺れそうかい?」

「――その答えの前に一つ聞きたい。さっきアンタはこう言った気がした。あの男……そう、俺の先祖である〝古廻千石〟のことだ」

「古廻千石ねぇ……よく分かったねぇあの状況で。まぁ教えてやらん事もない、が。まずはその力を味わいたいものだねぇ」

「是非もなし、か。美琴」

「うん、今度こそ勝とうね」

「勝てるねぇ……自惚れるなと言いたいが、その姿のまま正気を保ち戦えるなら、こりゃぁいけるかもしれないねぇ」


 童子切はそう言うと、大徳利のひもを掴み直し勢いよく呑む。それが周囲に聞こえるほどノドを鳴らすと、熱くたぎる息を吐く。


「プハアアアアアアッ!! これが今の流の限界だろう。さぁ……見せてみろ。この童子切との戦いにふさわしい力というものを!!」


 爆発する淀んだ神気。立っている水面が揺れに揺れ、しまいに水だと言うのにヒビが入る。

 ヒビはそのまま閉じることが出来ず、間に赤黒い神気が割り水をせき止めた。

 その様子が実に禍々しく、先程の流とは違う恐ろしい力を伝わる空気からすら感じることができた。


 しかも水辺の近くまで来ていた、流に魅了された男女まで童子切の神気に当てられて気絶するしまつ。

 恐ろしいまでの圧倒的な存在感に、流も冷や汗をこめかみより一筋落とす。


『大丈夫だよ、私はずっと一緒なんだよ』

「そうだったな……ああ、そうだ。俺たちは死ぬまで一緒だ」

「そうかい、ならそれも今日までだねぇ……」


 童子切はそういうと、ますます流へと赤黒い神気を叩きつける。それに負けじと、流も清浄な白い妖気(・・・・・・・)を濃密にまとい童子切へと対峙するのだった。

今回で本編が500話となりました。

プロローグを入れれば昨日で達成していたのですが、ここまで長く続けられてるのは応援してくれる、あなた様のおかげです。

本当にいつもありがとうございます❀(*´▽`*)❀

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