465:閉じる関所
イルミスはそっと流に耳打ちをすると、シーラの手裏剣のことを聞く。
「それはそうとナガレ、シーラが持つあの手裏剣は本物なんですの?」
「いや、あれは俺が飛竜牙を使うように持ち歩いていたものだ。今は妖気で飛ばすから使わないがな」
「そうですの。まぁ本人がそう思っているんなら、それもいいですわ」
今もシーラの手に握られている青い手裏剣を見る。それを力強く握りしめ、手裏剣に覚悟を決めたように語りかける。
「ボクは必ず成し遂げるんだゾ。だからボクが迷わないように見ていてほしいんだゾ」
シーラは刀身を真剣に見つめる。それに応えるように、キラリと光輝いたようにシーラには見えた。
思い込みなのか、手裏剣が応えてくれたようでシーラは嬉しくなり、それを掲げ持つ。
その向こうにはリッジとガランの祈りが最高潮を迎えており、エルヴィスは呆れてソレを見る。
「なんと言うか感動のシーンなのに、向こう側との温度差がひどいわね」
「そう言うなセリア。それで何も問題は無かったか?」
「ええ、ランエイも守ってくれていたし大丈夫だったわよ。おかげでゆっくりと休めたからありがたいわ。ただ……多分だけど、監視されていた気がするの」
「監視? 誰にだ?」
「それがわからないの。ルーセントが気配を感じ追ったのだけれど、見失ってしまってね」
流は「そうか」と一言もらし、バーバラと話していたルーセントを見る。そしてその存在に思い当たりセリアに話す。
「トエトリーを出る時にも監視されていたんだよ。多分アルマーク商会の手のものだろうが、ルーセント将軍ですら取り逃がす……か」
「ええ、しかもこの町はリッジさんの影が守っているでしょう? それが簡単に侵入を許すなんてね」
救出時と帰還後、流は町の様子をよく観察していた。それも鑑定眼をつかってだ。
だからこそ分かる。このアルマークと言う町が、リッジにより防衛力を強化されており、警備も万全だと。
しかしそこをやすやすと潜り抜けて来た斥候。かなりの手練か、人ならざるものか……。そんなことを考えながら美琴を見ていると、その視線に気がついたのか目の前にやってくる。
「大丈夫だよ。私がいつも一緒にいるからね?」
「なんだよそれは。まぁお前の探知力にはいつも助かっているけどな」
「でしょ? ふふん、美琴さんに任せておくのです」
「あぁ任せるさ」
そういうと二人は笑い合う。そんな流と美琴の信頼を超えた関係を感じたセリアは、ほほえましく見るも、自分もいつかあの中に入りたいと思うのだった。
◇◇◇
リッジとガラン師の祈り(?)も終わり、一同は落ち着ついて今後の話を始めた時だった。
音もなく入り口のドアが開き、そちらへと視線が集まる。だが入り口には誰もいなく、代わりに全員が注目していた逆側の壁のほうから声が聞こえた。
「先代様へのご報告がございます」
「おどかすな。してどうした?」
「は。王都側の関所に動きがございます。状況は知らされておりませぬが、何者かが関所の封鎖を命じたようです」
「なに? ワシに断りもなくか?」
「はい。リッジ様への使者もなく突然の封鎖とのことです」
「どういう事じゃ……」
流はその話を聞き、今ほど聞いた内容を思い出す。つまり――。
「――爺さん、それは俺のせいだろう。今セリアから聞いたのだが、この町に斥候が入り込んでいたらしい」
「なんだと? おい、お前たちは何をしておった」
「は。それにつきましては弁解の余地もなく。こちらでも把握し追跡したのですが、取り逃がしたとの報告があがっております。ただ侵入者ですが遊女のような身なりであり、黒髪の若い女だったとのことです。なお重要区画には侵入はされておりません」
「手練か……ナガレよ、王都側への道が閉ざされてしまった。ワシも手は打とう。だがワシに断りもなく関所を閉じたと言うことは、開門する見込みは薄い。どうする?」
流は右手を軽く上げ、首を傾けながら何事もないようにそれに応える。
「閉じられた? ならこじ開けるまでさ。さて時間も惜しい、俺はこのまま出立して王都へと向かおうか」
「大丈夫かいナガレ? 蜜熊や王滅級と殺りあったばかりだろう、無理は禁物だよ?」
「問題ないさ。意外とこの体は頑丈でな、嵐影の背中で休むさ。エルヴィスやセリアはどうだ、いけそうか?」
「ああ問題はない。おかげで十分休養がとれた」
「私やルーセントも問題ないわよ? いつでも発てるわ」
それに頷くと、流はシーラの元へと歩く。そして右手を肩に乗せると、真剣に話を始める。
「いいかシーラ、この道はお前が選んだものだ。つらく厳しいものとなるだろう。今日おまえが体験したことよりも恐ろしい目にあうかもしれない。だがお前はそれを選んだ――だから迷うな」
「うん! わかったんだゾ!」
「いい子だ。おまえはラースと共にトエトリーへと向かい、俺の屋敷へ行ってくれ。そこで今覚えている魔法を極めつくせ。魔法の師匠はいないが、お前ならできるはずだ」
「わたくしが行ければいいんですけれど、流と行かなくてはいけませんわ。でもシーラ、貴女なら大丈夫。今の気持ちを忘れずに修行なさい、きっとうまくいきますわ」
「うん!! ありがとうだゾ!」
流はガラン師より手紙一式をもらい、〆へ当てて一筆したためる。それをシーラへと渡すと、外へ出てワン太郎への元へと向かうのだった。
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