437:掃討戦
437:掃討戦
――その頃、蜜熊の宴会場ではイルミスと流が蜜熊を討伐していた。ちなみにLは森長を蹴りつけ、「根性を見せてもう一度立ち上がれ!」とステキなお願いをしている。ヒドイ。
蜜熊の数も残り数十頭にまで減り、殲滅速度もますます上がってきた。
「流! そろそろ全滅してしまいますが、よろしくて?」
「ん~、別に殲滅が目的では無いが、こうも敵意むき出しに襲って来られたらなぁ」
蜜熊は森長の命令もあるが、本能的に流の恐ろしさを感じ襲ってきていた。
その森長はLの電撃により痺れている最中であり、蜜熊を止めるものはない。
「しかたねぇ。不本意だが殺るしかな――ッ、イルミス!!」
「ッ!? なんですの!?」
「「弱い熊いぢめはそこまでにするくま~!!」」
突如襲いかかる黒と白の影。白はイルミスへ、黒は流へと蹴りを放つ。流は妖気でガードし、イルミスは背後へ飛んで躱す。
「なんだお前達は?」
「お前か? 封印を解いた馬鹿なくま~は?」
「いや、くま~はお前だろう?」
「ハッ!? やるな、反論の余地もなし。クッ、弟者よ兄は負けた……撤退するッ!!」
「なん……だ、と? あ、兄者が負ける日が来るとは思わなかった……無念ッ!!」
そう言うと二人のクマーは撤退準備にはいる、が。
「待て、待て待て! ちょ~とまて! 何をしに来たんだおまえら?」
「「何をしにって……あ! お前達、弱いクマーをイヂメるのをやめるくま~!!」」
流は左手でこめかみを抑え数回頭をふると、白と黒の熊人間に話しかける。ジト目でジットリと。
その様子をあれほど猛っていた蜜熊たちは、恐れるように見つめると、地面に座り込み震えてしまう。
「いや、あのな? 俺たちは襲われたの。被害者なの。おわかり?」
「ん~? そうなのくま? なら封印は誰が壊したんくま~?」
「ちょ、ちょっと待て。いま封印が壊れたと言ったか?」
「言ったくまよ。俺と弟者はそのせいで目覚めた熊。けっして虎じゃないくま~」
「なんだ虎って? よく分からんが、とにかく封印が壊れたら爆発するのかここ!?」
クマーの兄弟は互いに顔を見合わせ、なぜか勝ち誇ったように笑う。
「「ハ~ハッハッハ! ほんと、どうしようくま~……」」
「おい! 余裕あるのかネーのかハッキリしろ!」
「まぁ、今すぐどうこうってワケじゃないくま。だから森神様に再封印してもらうくま」
「森神……あ、ヨルムのことか?」
「そう、その方こそが森神様くま~。森神様を知っているという事は、悪いヤツじゃないくまね」
「そうだ、俺はあっちにいる人間達を救いに来ただけだ。そして封印の事もヨルムから聞いた」
「そうくまか……なら一体誰が封印を壊したんくま?」
「それだがな――」
流はここまでの経緯を話す。それに納得したようで、その理由もわかる。どうやらワン太郎はいい仕事をしているようだ。
「そうか、ワン太郎はお前たちと会ったのか」
「そうくま~。恐ろしい犬だったけど、話せば分かる犬だったくま~。するとやはり今回も神の声が元凶くまか」
「神の声? ヨルムじゃなくてか?」
「そうくま~。森神様はむやみに力を振りまかないくま~。神の声は突然現れ、力をさずけ混乱におとしいれるくま~」
「……その、神の声は『理』と言わないか?」
「さぁ。そこまでは知らないけど、言いたい放題意味のわからない事を言うくま。それが消えると、力をさずかるくま。それも善悪問わず、突然そうなるくまよ」
流とイルミスは確信する。それは確実に『理』だと。二人は無言でうなずくと、今はこの森の状態を最優先で、なんとかしなくてはならないと口を開く。
「今は『理』の事は置いておこう。それでこれからどうする?」
「まずは可愛そうなくま~たちを開放するくま。死んだのはしかたないけど、もういぢめちゃだめくまよ?」
「ああ、それは約束しよう。おいL! いつまで蹴りをいれてる、槍を抜いてこっちへ来い!」
「あの娘、まだいたぶってましたの? こまった娘ですわ」
「ハイ! マイ・マスター! たっだいますぐに~! オイ、クマ! 命拾いしたな?」
そうLは吐き捨てると、宝槍・白を森長から抜き、最後に蹴りを入れてからやってくる。
クマーの兄弟はソレを見て「「ヒドイッくま!?」」と驚き、Lを恐ろしいものを見るような目で見つめる。
「見ろL。クマクマ兄弟がお前を怯えて見ているぞ?」
「心外ですマイ・マスター。そんな目で見られることは、このLの喜び……むしろもっと見てほしいです(ビクン)」
「ほんとブレないねぇお前は。もうクマさんをいぢめちゃダメだぞ?」
「お任せあれ!」
「それでどうするよクマックマ?」
「ま、まずは解放してくれた事に感謝を。お前達も二度とこの人達を襲うんじゃないくまよ?」
そういうと蜜熊たちは唸り声を一つあげると、そのまま森の中へと消えていった。
あとには森長が一頭だけおり、傷も回復したのかこちらへとゆっくりと歩いてくるのだった。




